生き延びているコウヤマキ
- honchikojisitenji
- 2024年2月18日
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昨年秋、島根県吉賀町のコウヤマキの天然林を見学してきました。
コウヤマキは中生代三畳紀、ジュラ紀から存在しており、その仲間は、花の咲く植物が生まれた白亜紀には世界に広く分布していたことが知られています。しかし、この仲間は世界中で絶滅していき、今やこの種だけが生き残っており、分類上は1科1属1種となっています。コウヤマキは生きている化石とも言われています。
コウヤマキはその名の通り高野山とかかわりが深く、高野山の金剛峯寺をはじめとするこの地域の真言宗のお寺では、供花の代わりにコウヤマキの枝葉を仏様にお供えしています。高野山には、天然林に高齢のコウヤマキもありますが、このお供えのために広く人工林を育て枝葉を取っています。
吉賀町のコウヤマキ林は、太くて大きな木がかたまって生えているような原生的な天然林ではありません。風倒などの被害を受けた後に、更新を繰り返してきたと思われるどちらかと言えば若い天然林です。点在する古い木でも太さ50~60cmくらい、せいぜい150~200年くらいでしょうか。しかし、このような純林状のコウヤマキを見たのは初めてでした。
乾燥した尾根上の立地と硬い岩盤の上の薄い土という他の植物にはあまり適さない場所で、コウヤマキは強く生き延びているのでしょう。風や雪の被害を受けつつ、子孫を残し続けています。後継樹がたくさん生えているので、まだまだ、この森林は維持されていくのだろうと思います。
地元の方は、このコウヤマキの森林を誇りに思っていらっしゃいます。このコウヤマキ林を活かした地域の創造を考えておられました。
コウヤマキの材は腐りにくく、建築材として長持ちします。特に耐水性があり、船や建築の外装などでも使われてきましたが、このコウヤマキ林は保護されているので、通常、伐採利用することはできません。
コウヤマキの枝葉の樹液のエタノール抽出物には抗菌作用が認められていて、その作用を元に歯磨きジェルなどの商品が巷では売られています。そのような生物資材としての利用を考えておられたり、生きている化石としてのコウヤマキの価値に触れるために訪れてくれる方を増やそうとされています。
実際にお金になる、ならないよりも、このようなコウヤマキを誇りに思っている心が地域の創造にはとても大事なことだと思います。農業やアユ釣り、観光などほかの産物、地物をPRする中でもコウヤマキの里としてでも知ってもらえることも素晴らしいことだと思います。
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