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[日本再生]農業の生産性各地で活性化(その2) 2022年10月28日  都内農業 地産地消で工夫絶大 個客が関心を持つ超多品種の農作物 日本の農業の未来を拓く大きな「種」が生れている

続木 碧(つづき あお) 2022年10月(研究報告№007)

☆巻頭の一言 

この報告には、難しい判断が求められました。結局、最後は「関東+山梨の1都7県のの農業改革は、各地みんな頑張っている。この地域の各地は日本の農業改革の先導者だ」と述べることになったのです。この経緯は、以下に順を追ってお話しします。


でも、私が、最も関心を持ったのは、東京・国分寺市の活動でした。個人顧客が強い興味をもつ、超トガッタ多品種の農作物を自ら作出して、流通を通さず直接販売しているのです。この地で、日本の農業の未来を拓く「重大な根っこ」が形成されていました。私は驚きました。凄く感服しましたので、この報告の標題には、これを記しました。


  

[都内農業 地産地消で工夫]

[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

 都内農業 地産地消で工夫絶大  巨大消費地は超巨大なため、生産には制約がある 個客が関心を持つ超多品種の農作物を作出し、流通を通さず直接販売している ここに、日本の農業の未来を拓く大きな「種」が生れている

ここでは日本経済新聞の2022年7月30日の39面記事を紹介します。


[はじめに]

この調査研究では、最初に見たデータに驚きました。

関東・山梨の1都7県では農地の稼ぐ力に差が広がっているのです。2020年の耕地1ヘクタールあたりの農業産出額は、2005年に比べて、北関東3県で2桁伸びました。

このことについては、前回の報告で述べていましたが、今日参照している紙面(参考資料1)を良くみると、南関東では、千葉県と埼玉県がマイナスとなり産出額が減少なのです。私は、千葉も埼玉も頑張っていると思っていましたので、なぜだろうと驚きました。私が驚き、記事を再熟読し、深く思考した過程を以下に記します。順に読み進んでください。


[関東・山梨 都道府県別の農業歳出額の順位]

この報告の執筆で参照・引用した、2022年7月30日の日本経済新聞(真鍋正巳、参考資料1)39面には、一つの図表が掲載さていました。①北関東や山梨県では農地の稼ぐ力が向上。(図表1、注1)。


 図表1には、8都県の都道府県別の自治体名。収益性増減率。1都7県での順位が列記されていました。以下に示します。


図表1、北関東や山梨県では農地の稼ぐ力が向上


1都7県7での順位    自治体名     収益性増減率(%)

(1)        群馬県        31.6

(2)        山梨県        29.0

(3)        茨城県 14.9

(4)        栃木県        11.8

(5)        東京都         1.9

(6)        神奈川県        0.1

(7)        千葉県        ▲0.1

(8)        埼玉県        ▲0.7

(注記)▲はマイナス。耕地1ヘクタールあたりの農業産出額を2005年と2020年で比較。


 私は、上記の結果から、収益性の増加の大きい地域。増加の小さい地域。収益性が減少している地域に分けて、各地の取り組みを記述してみました。


[収益性の増加が大きい地域]

[茨城県]

茨城県は、2020年の農業産出額が北海道、鹿児島県に次いで全国第3位です。 「耕地当たりの収益性」を高める牽引役の一つがサツマイモです。もともと加工品の干し芋が特産品でした。最近は、焼き芋人気があって需要は高いのです。

県内の農家からは、作付け面積を広げたいとの要望が強いのです。県は2019年度から、「茨城かんしょトップランナー産地拡大事業」として、荒廃農地をサツマイモ畑にする生産者に、補助金を出しています。農地の確保のため、もともと生産者が多かった鹿行(ろっこう)地区の農家を、県南地域の地主につなぎました。機械化などの生産効率化も支援しています。

茨城県では、果物については、梨の「恵水」やメロンの「イバラキング」などの、県が開発したオリジナル品種へと、転換を促しています。いずれも糖度が高く、実が大きいため贈答用としても映えるのです。これを高付加価値品種として、東京市場でのブランド力浸透に、力を入れています。


[栃木県]

安値が続く稲作の収益性改善も農地の稼ぐ力を強める条件となります。栃木県が県をあげて推進するのが、コメと他の高収益作物を組み合わせる「水田複合経営」です。県西南部の上都賀地域では水はけが悪くても育つサトイモを水田近くで栽培しています。北部那須地域では、水田で作ったネギを「那須の白美人ネギ」としてブランド化に成功しました。


[収益性の増加が小さい地域]

[東京都]

東京都国分寺市で1.2ヘクタールの農地を営む清水農園は、市場であまり流通していない葉付きニンジンや色付きダイコンなど、多い時は40種類の農作物を直売所で売っています。スタッフを配置し、近隣の住民に、おいしい食べ方などを伝えながら販売しています。同農園の清水雄一郎さんは「若い人も買い物に来てくれるようになった」と語っています。

東京の都市型農業では、周辺の宅地化もあって、農地を広げにくいなど制約が多いのです。耕作機の騒音や土ほこりなども、近隣住民との間で問題になりかねないのです。

この中で清水農園は、個人顧客が強い興味をもつ、超トガッタ多品種の農作物を自ら作出して、流通を通さず直接販売しているのです。それも、国内最大の消費地の「ど真ん中」で実施しているのですから「超地産地消」事業が実現する可能性は極めて高いのです。

粘り強く進めて行けば、この事業は、大化けする可能性が大いにあると私は考えています。


[神奈川県]

神奈川県西部では、キウイフルーツのブランド化を目指しています。県内生産量は2020年に1400トンと全国4位でした。この地域は、気候が温暖で江戸時代からミカン栽培が盛んだったのです。供給過剰による価格低下やオレンジの輸入の自由化といった逆風で転作が進みました。秦野市産の「丹沢レッド」は果肉の中心が赤く、酸味が少なくて甘みが強く好評です。


[収益性が減少している地域]

[千葉県]

 農業産出額が全国4位の千葉県では、先進技術を用いたスマート農業(注1)の普及で、生産性を高めようとする試みが相次いでいます。例年、皇室にも献上する特産品のビワの主産地である安房地域では、2020年度から、ドローン(小型無人機)で空中から農薬を散布し、害虫であるカメムシの被害を防ぐ効果を検証しています。

カメムシは、袋掛けをした上からも汁を吸い、発生数が多いと被害が大きくなります。ビワは山あいの傾斜地で栽培され、地上からの薬剤散布は難しいのです。生産者も高齢化しており、効率的な対策が課題となっています。導入コストなど費用対効果の検証は必要ですが,館山市の安房農業事務所の担当者は「ドローンの導入には期待が大きい」と期待しています。


[埼玉県]

埼玉県はサトイモの産出額で全国首位です。JAいるま野(川越市)は、2020年秋、狭山市に共同選果場を設けました。根切り機や形状選別機、等級判別機などを導入し、自動化を徹底しています。出荷時間を3分の1に縮めました。埼玉県は小松菜の産出額も全国首位、ネギも2位と野菜王国です。県の担当者は、「知名度の高い野菜のブランド化と多品種少量野菜の地産地消を同時に進めたい」と話しています。(参考資料1、2022年7月30日の日本経済新聞の39面(桜木浩巳、本田幸久、松永高幸、増渕稔)を参照引用して記述)


[まとめ]

この報告書を書き始めた時、私は、関東1都7県の収益性は、増加率が大きく増えた処と、減少しているところがあり、収益性獲得の状況は、地域により、大きく乖離しているのに気がついたのです。それは、私が図表1の収益性増減率の一覧表をみたからです。

すなわち、群馬県、山梨県、茨城県、栃木県の収益性の増加率は大きく好調です。一方で千葉県と埼玉県では、収益性は減少しており、両者の間には、多きな差異があるのです。

それで私は、新聞記事が、丁寧に書いてくれていた各都県の活動を、この3段階に分けて記述してみることにしたのです。


しかし、これを書き終えてみて、深く考えてみると、私の感想は、大きく変わることになりました。すなわち「関東8都県では、全ての地域で農業生産は、活性を呈しています。この地域全体の農業は、極めて有望です」と言うことなのです。なぜならば、記事の解説を丁寧に読んでみると、どの地域も凄い実践があり、有望だと思われるからです。


本文執筆で参照引用した文章の急所を再度引用して記してみると、以下の通りになりました。

茨城県は、2020年の農業産出額が全国第3位です。「耕地当たりの収益性」を高める牽引役の一つがサツマイモです。茨城県では、果物については、梨の「恵水」やメロンの「イバラキング」などオリジナル品種へ転換しています。これを高付加価値品種として、東京市場でのブランド力獲得を進めています。

栃木県が県をあげて推進するのが、コメと他の高収益作物を組み合わせる「水田複合経営」です。県西南部では水はけが悪くても育つサトイモを水田近くで栽培しています。北部那須地域では、水田で作ったネギを「那須の白美人ネギ」としてブランド化しました。

東京都国分寺市の清水農園は、40種類の農作物を直売所で扱っています。スタッフを配置し、おいしい食べ方などを伝えながら販売しています。「若い人も買い物に来てくれるようになった」と言っています。

神奈川県西部では、キウイフルーツのブランド化を目指しています。キウイの県内生産量は全国4位でした。秦野市産の「丹沢レッド」は果肉の中心が赤く、酸味が少なくて甘みが強く凄く好評です。

 千葉県は農業産出額が全国4位です。千葉県では、先進技術を用いたスマート農業(注1)の普及で、生産性を高めています。例年、皇室にも献上する特産品のビワの主産地である安房地域では、2020年度から、ドローン(小型無人機)で空中から農薬を散布し、防除が難しいカメムシの駆逐に成功しています

埼玉県はサトイモの産出額で全国首位です。共同選果場を設けました。選別機、等級判別機などを導入し、自動化を徹底しています。出荷時間を3分の1に縮めました。埼玉県は小松菜の産出額も全国首位、ネギも2位と野菜王国です。知名度の高い野菜のブランド化と多品種少量野菜の地産地消を同時に進めています。

こうして、再度読み直してみると、関東8都県は、どこも凄いのです。


私は、人口が最も多く需要最大の東京都で、始まっている動きに最も注目しています。私はこのような、市場に流通していない、葉付きニンジンや色付きダイコンなどを40種類以上も作る農場の数を、全国的に拡大して、10倍~100倍にも増やし、これをインターネット上で、直接広告・販売して、「家庭で食べる個人」と「生産農家個人」が、インターネット上で、直接売買する全国的な直販システムを形成すれば良いと考えています。これが実現すれば、巨大都市東京都自身が、全国の農業の未来を牽引するリーダーになれるはずなのです。東京にいるAI・IoTなどの最先端技術を持つ人達を、どんどん、農業改革にも動員できます。日本全国の農業の地域創生が、これを中心にして大きく前進するはずなのです。新しい調査研究の10月版は、凄い結論で幕切れとなりました。


(注1)スマート農業:ロボット技術やICT(注2)等の先端技術の活用による新たな農業である。

(注2)ICT(information and communications technology)=情報通信技術:情報技術(IT)を拡張した用語である。電話線やワイヤレス信号による通信とコンピュータ、そして主要な企業のアプリケーションや視聴覚システムなどを統合し、ユーザーが情報をアクセス、保存、送信、操作できるようにする技術である 。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2022年7月30日(39面)。

(2) 日本経済新聞、2022年7月30日(1面)。


[付記]2022年10月28日。


[追記]

私は、以下に疑問を感じていますが、どのように考えたら良いでしょうか。


(1) 千葉県は、2005年と2022年の比較で▲0.1%で、農業産出額は、ほとんど同じです。千葉県は、2005年に既に、2020年の全国4位にあたる農業産出額があったと言うことでしょうか。

(2) 埼玉県は、農業産出額が全体で、2005年と2020の比較で0.7%減少しています。その減少下でサトイモ、小松菜は全国1位で、ネギは2位です。他の品目で全体に影響が出るほど順位を落としているものがあるのでしょうか。

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