[日本再生][地域創生] ふるさと納税 使い道 前面 2024年10月28日 新潟県燕市、冬の遊び場 クラウドファンディング型83%増 返礼品頼み脱却
- honchikojisitenji
- 2024年10月29日
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続木 碧(つづき あお) 2024年10月(研究報告№127)
「巻頭の一言」
寄付金の使い道を事前に示す、クラウドファンディング(CF)型ふるさと納税(注1)を、採用する自治体が広がっています。2023年度の実施自治体は374と2022年度より1割増えました。新潟県燕市は、雪でも屋内で子どもが遊べる施設の整備費用として、40億円を集めました。批判が多い過度な返礼品頼みから脱却するためにも、納税者の共感に訴えています。2024年10月5日、朝刊、2面記事(杉本耕太郎)を参照・引用して記述。
[日本再生][地域創生] ふるさと納税 使い道 前面 新潟県燕市、冬の遊び場 クラウドファンディング型83%増 返礼品頼み脱却
「日本再生」「地域創生」ふるさと納税 使い道 前面 新潟県燕市、冬の遊び場 クラウドファンディング型83%増 返礼品頼み脱却
ここでは、日本経済新聞の2024年10月5日、朝刊2面の記事を紹介します。
[はじめに]
ふるさと納税は、故郷などの自治体を応援する趣旨で、2008年に誕生しました。2023年度は過去最高となる1兆1000億円の寄付を集めました。寄付金の使い道は原則自由で、寄付金を集めてから活用方法を考えたり、使いきれず貯金にしたりするケースもあるのです。自治体間の返戻品競争も激しくなっています。自らの寄付が何に使われたかが分かりにくく、制度の趣旨から外れているという批判も出ています。
CF型ふるさと納税(注1)は、一般的なCFと同様に、具体的な活用方法と目標金額を示したうえで、期間を区切って寄付を募ります。総務省も「寄付の使い道を明確にすることが望ましい」として、2018年からCF型などの採用を呼びかけています。でも、通常と同じく一定の返礼品がある場合が多いのです。
日経新聞が、総務省の資料と独自取材で、CF型(注1)に取り組んでいる自治体を集計したところ、2023年度は2018年度より83%増えていました。募集案件も2022年度比21%増の946件でした。全国の寄付額は計167億円です。都道府県別にみますと、大阪府が52億円で最も多く、北海道の16億円、新潟県の12億円が続いていました。10億円超の市町も、この他に3つありました。
[新潟県,燕市]
新潟県燕市は「雪の多い冬に子どもたちが遊べる場所がない」という子育て世代の声を受け、屋内遊戯施設の建設を進めています。2022~2023年度に、計35億円を目標にCF型募金(注1)を実施し、39億円を集めました。2025年春の完成を目指しており、寄付金の超過分は維持費に充てます。
燕市は小中学校のエアコン整備など「市民のニーズは高いが自主財源だけでは実現が難しい」という事業で、CF型に取り組んでいます。片手鍋などの返礼品も用意していますが、寄付額に占める返礼品のコストは25.5%と一般的な30%より抑え、出来るだけ多くが事業に回るようにしています。
[山梨県富士吉田市]
山梨県富士吉田市は、2023年度に「ジビエ」の加工販売施設(注2)の建設費用を募りました。富士山麓の樹木を食い荒らすシカの駆除を進めるためで、目標の2倍の4億4000万円が集まり、今年7月に開業しました。富士吉田市は「景観保全と地域経済振興の両立を、ホームページ等でアピールできたことが、目標達成につながった」と見ています。
[石川県珠州市]
石川県珠州市は、2024年1月の能登半島地震と9月の豪雨災害の復旧・復興支援として、ふるさと納税を募りました。目標金額は定めていないのですが、2023年度の寄付金額、7億2000万円の大半が震災支援ということです。
[大阪府泉佐野市]
地域経済の振興に活用する自治体も増えています。大阪府泉佐野市は地場産品の開発などに取り組む事業者を、市内外から公募しています。審査に通った案件に、必要な費用をCF型で募り、集まった寄付の4割を補助金として交付する予定です。2023年度はタオルメカーの製品開発などで、全国最多の51億円を集めました。
これは2020年に開始しました。12社の事業所誘致につなげました。千代松大耕泉佐野市町は「雇用も拡大するなど、まち作りにも良い影響を与えていると思います」と手応えを述べておられました。京都府京丹後市なとも,同市の手法を参考にしています。
[この項のまとめ]
自治体にとってCF型(注1)は、通常より手間がかかるうえ、財源の自由度も低下します。慶應大学の保田隆明教授は「国の規制強化で、返礼品だけでは、自治体間の違いを出しにくくなっています。でも、CF型は地域のファンづくりにもつながりやすいので、取り組む自治体は、今後、増えていくでしょう」と述べています。
日本経済新聞、2024年10月5日、朝刊、2面記事(杉本耕太郎)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照・引用した、日本経済新聞、2024年10月5日の朝刊、2面記事(杉本耕太郎)には、図表が2枚記載されていました。①CF型ふるさと納税の受け入れ額。(注)都道府県別の合計額。青森ゼロ。②受け入れ額の多い自治体と事業例。日本経済新聞、2024年10月5日、朝刊、2面記事(杉本耕太郎)を参照・引用して記述。
[図表1]
図表1(注4)について。新聞紙上に日本列島の地図が記載されていました。この図表では、CF型(注1)ふるさと納税の受け入れ額を緑色系の色彩で塗り分けて示していました。
ここではCF型ふるさと納税受け入れ額を6段階に分けて記載しています。それは以下です。①2023年度に、CF型ふるさと納税受け入れ額が10億円以上あった地域、第1群(黒緑色)。②同受け入れ額が3億円以上10億円未満で二番目に多かった地域、第2群(濃い黒緑色の斜線)。➂同受け入れ額が1億円以上3億円未満で三番目に多かった地域、第3群(濃い緑色)。④同受け入れ額が3000万円以上1億円未満で四番目に多かった地域、第4群(淡い緑色の斜線)。⑤同受け入れ額が3000万円以下で五番目に多かった地域、第5群(灰色)。⑥同受け入れ額が0円(白色)。
第1群は、2023年度に、CF型ふるさと納税受け入れ額が最も大きく10億円以上あった地域(黒色)です。それは全国第一位の大阪府、第二位の北海道、第三位の新潟県、第四位の山梨県の4カ所でした。
第2群は、受け入れ額が二番目に多かった3億円以上10億円未満の地域(濃い黒緑色の斜線)で、その数は9カ所ありました。この第2群を黒っぽい黒緑色の斜線で染めていたため、これを塗った地図は、どっしりと黒っぽく見えました。これを列記すると以下です。この第2群には、宮城県、東京都、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県、広島県、高知県の9カ所が入っていました。
第3群は、受け入れ額が三番目に多かった1億円以上3億円未満の地域(濃い黒緑色)で、その数は10カ所ありました。そのメンバーを列記しますと以下です。それは、岩手県、秋田県、群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、福井県、佐賀県、鹿児島県、愛媛県の10カ所です。
第4群は、受け入れ額が四番目に多かった3000万円以上1億円未満の地域(淡い黒緑の斜線)で、その数は14カ所ありました。そのメンバーを列記しますと以下です。それは福島県、千葉県、神奈川県、長野県、富山県、滋賀県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、山口県、福岡県、長崎県、徳島県です。
第5群は、受け入れ額が最少の3000万円未満の地域(灰色)で、その数は9カ所ありました。そのメンバーは以下です。それは山形県、静岡県、三重県、和歌山県、大分県、宮崎県、熊本県、沖縄県、香川県です。
第6群は受け入れ額が0円の地域(白色)で、青森県1県のみでした。
このプロジェクトは、まだ始まったばかりです。第3群と第4群で24カ所(全体の51.0%)あり、これから急速な活性化が進むはずの、これらの地域が、どのように進んでいくのか注目されます。今が、きわめて重要なときです。
[図表2]
図表2(注5)は、「受け入れ額が多い自治体と事業例」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 「受け入れ額が多い自治体と事業例」
順位 自治体名 受け入れ額 件数 主な事業など
1 泉佐野市(大阪) 51.8億円 40件 企業の事業拡大の補助金に
2 別海町(北海道) 11.2 2 町の魅力を伝えるサイト構築
3 燕市(新潟) 10.1 1 子どもの屋内遊び場整備
4 珠州市(石川) 7.2 3 能登半島地震の復旧・復興
5 須崎市(高知) 5.4 1 カツオなどの加工場の設置
6 神石高原町(広島) 5.1 4 NPOの「殺処分ゼロ」活動支援
7 富士吉田市(山梨) 4.4 1 ジビエ加工販売所の建設
8 甲府市(山梨) 4.0 2 動物園の飼育動物の医療充実
9 気仙沼市(宮城) 4.0 4 東日本大震災遺構の保存
10芸西村(高知) 3.5 6 「土佐あかうし」加工場整備
「受け入れ額の多い自治体と事業例」のベスト10を通観してみますと、泉佐野市の「受け入れ額」と「件数」が、他を引き離して、群を抜いてトップにいました。自市内の企業の事業拡大のための補助金を、自分で高額の予算を準備して、これにより、その巨額投資を大きく超える収益を獲得していたのです。その予算準備は、泉佐野市の借入金をあてており、借り入れ先は国であり、補助金を申請していました。これは、まことに理にかなっています。泉佐野市は、これから、ごく短期間で、受け入れ額も件数も、急拡大できるだろうと、私は予感しました。
子どもの屋内遊び場の整備を燕市が、また、能登半島地震の普及・復興に石川県珠州市がCF型ふるさと納税を活用していました。さらに、富士吉田市はジビエ(注2)の加工にCF型ふるさと納税を使っていました。すごく多彩な活用が見られました。
泉佐野市のように受注拡大のために高額なCFの受け入れを実現する自治体が、日本各地に出現することになれば、日本の人口減少も、ようやく止まり、順調な経済成長が続く、明るい未来が見えてくるはずなのです。私は、いま大きな期待を寄せています。
(注1) クラウドファンディング(crowdfunding)は、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。多数の人による少額の資金が、他の人々や組織に、財源の提供や協力などを行うことを意味する。クラウドファンディング型ふるさと納税(CF) は、自治体または認められた個人・団体が、クラウドファンディングのプロジェクトのオーナーとなり、ふるさと納税の制度を利用して資金を募る活動である。この形式では、ふるさと納税の寄附金の使い道を具体的にプロジェクト化し、共感した人々から寄附を募るのである。
(注2) ジビエの加工販売施設。 衛生管理等の審査基準を満たしている施設を認証し、認証施設から出荷される肉には「国産ジビエ認証マーク」が貼られる。ジビエ(仏: gibier)とはフランス語であり、狩猟によって、食材として捕獲された狩猟対象の野生の鳥獣、またはその肉を指す。日本語では野生鳥獣肉と訳される。すなわち、これは畜産との対比として使われる狩猟肉のことである。
(注3) 土佐あかうしとは、日本の肉用牛である和牛4品種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種)のうち、高知県内でしか改良されていない褐毛和種・高知系の通称である。高知県内では土佐褐毛牛と呼ばれている。公益社団法人全国和牛登録協会が行う子牛登記ならびに血統登録事業によって一頭一頭が血統管理され、改良がすすめられている。牛肉流通においては高知県産褐毛和種として土佐和牛「土佐あかうし」が流通している。
(注4) 日本経済新聞2024年10月5日の日経朝刊には、以下の図表が掲載されている。図表1、①CF型ふるさと納税の受け入れ額、都道府県別の合計額、2023年度。総務省資料などから集計。青森はゼロ。
(注5) 日本経済新聞2024年10月5日の日経朝刊には、以下の図表が掲載されている。図表2、②受け入れ額が多い自治体と事業例。
(1)日本経済新聞、2024年10月5日 朝刊(2面)。
[付記]2024年10月28日:
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