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[日本再生]伝統工芸 枠(わく)を脱し「粋(いき)」を磨く (その2) 2022年11月4日 8都県の伝統工芸ワザを次世代へ 栃木県宇都宮市お化け屋敷開催 職人最多の東京都は職人を5年間で1割増やした

続木 碧 2022年11月(研究報告№009)

☆巻頭の一言 

この研究報告は「再生が始まった日本の伝統工芸」についての第2偏です。

  

[伝統工芸 枠(わく)を脱し「粋(いき)」を磨く]

[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

 8都県の伝統工芸 ワザを次世代へ

ここでは日本経済新聞の2022年8月6日の35面記事を紹介します。

[はじめに]

地域産業の「生き字引」ともいえる伝統工芸が、生き残りをかけて奮闘しています。特色ある工芸が根付く関東8都県も、生産額や職人数の減少で、存続が危ぶまれているものも少なくないのですが、ワザを次代につなぐ試みが広がり始めました。デザイナーとの新商品開発や販路開拓などで、技術・伝統を守りつつ時代の変化をうまく取り込めるかが存続のカギを握ります。


[栃木県]

[新型コロナで3年ぶりの開催 お化け屋敷人気]

栃木県宇都宮市の商店街で2022年7月、お化け屋敷が始まりました。新型コロナで3年ぶりの開催とあって大人気です。この企画・運営に協力する丸山工芸社(栃木県佐野市)は「佐野の生き人形」として栃木県から伝統工芸品、伝統工芸士に認定されるワザを生かし、東京・浅草の花やしきなど全国のお化け屋敷を手掛けてきた、伝統工芸の名人企業です。

3年前の火災で貴重な人形や衣装を失ったのですが、ファンの支援で再建を決意しました。県も2021年度から伝統工芸を手掛ける企業や個人に、地元で活躍するデザイナーの青柳徹氏を派遣し、商品開発や販路開拓の支援を始めました。丸山工芸は、その第1号に選ばれたのです。

青柳氏は高尚なイメージの「妖師(あやかし)」と幅広い年代向けの「うらめしや」の2ブランドを提案しました。新たなお化けの物語を考案しTシャツなどを商品化しました。県は、この成果を確認し「伝統工芸を盛り上げたい」と、2022年度も事業を継続しました。今、新たな商品開発に取り組んでいます。


[東京都]

[職人の人数1割増加]

伝統的工芸の課題では、職人ワザの伝承が第一に重要なのです。東京都は職人のワザの伝承に注力してきました。この結果、高齢化で職人数が減るなか、2022年までの5年間で1割職人数を増やせました。葛飾区は2017年度~2019年度間で「伝統工芸職人弟子入り支援事業」を実施しました。この結果44人が応募し、江戸衣裳着人形などの伝統工芸士に、新たな弟子入りがありました。希望者の適性や親方との相性を見極めてマッチングしています。

墨田区は若手の職人育成を目指し、伝統工芸士ら35人以上を「すみだマイスター(注1)」に認定しました。2021年度末に加わった親子は、親子2代での認定です。ここでは積極的に市場開拓をするなど、若手に熱心に指導する先輩職人が多いことも、若手が育つ要因になっています。区もデザイナーと職人をマッチングする事業を実施しています。商品開発も活発です。オンラインショップなどで技術が光る逸品も紹介されています。


[神奈川県]

[箱根町の美しい寄木細工]

神奈川県箱根町の寄木細工は、1984年に伝統工芸品に指定されました。木を寄せ集めてつくる工芸品で、樹木が持つ自然の色を生かした精緻な幾何学模様が特徴です。江戸時代後期、箱根町畑宿地区で「お盆」や「箱」を作ったのが始まりといいます。小田原箱根伝統寄木協同組合に所属する職人は20人、うち7人が伝統工芸士です。職人になるには10年かかるとされています。そこで組合は、研修会を熱心に開催しています。

箱根町は、寄木細工を紹介するホームページと製作工程動画を作成しています。動画はユーチューブで公開しています。町内では、体験教室も開かれ、本間寄木美術館(同町湯本)ではコースター(注2)を製作できます。コロナ禍前は、多くの外国人が訪れました。ポストコロナでは、その復活が大いに期待されています。

ここでは、強固な徒弟制度で引き継がれてきた職人の世界に、若者や女性の斬新で柔軟な発想が、新たな風を巻き起こしています。


[埼玉県]

埼玉県春日部市の桐簞笥も、職人不足が深刻です。春日部桐たんす組合によりますと、組合は県・国の補助金を活用して10年前から後継者の育成のための講座を開催しています。参加費と道具一式を用意すれば講座で使う材料は組合が提供してくれます。

同組合の金子篤会長は、「育成講座は毎年開催しています。その参加者層は、若い女性から定年を迎えた男性まで幅広いのです。最近、若い職人が育ちはじめています」と述べています。


[山梨県]

山梨県の伝統工芸、甲州印伝の製造販売は3社が実施しています。その1社、印伝の山元(甲州市)は、鹿皮を水色や黄色などポップな色に染めた商品を開発しています。黒や茶色など落ち着いた色が大半の印伝の中で「異色」です。現在は35色もそろえています。華やかで美しく、若い女性などに、とても人気です。


[まとめ]

「印伝の山元」の3代目社長の山元裕輔さんは、2018年に伝統工芸士に認定されました。ゲームやアニメなどのコラボ商品を積極的に生み出し、若い顧客の開拓に力を入れています。財布や名刺入れにイニシャルを入れるのなど1個単位の注文も受けており、若者に人気です。

 甲州印伝の鹿革は、これまではすべて輸入品でしたが、害獣として駆除したニホンジカを使った製品開発も始めました。「猟師と連携し、鹿害対策の支援につなげたい」と言っています。伝統工芸が、社会課題の解決にも挑戦していくのです。

伝統工芸は、日本の古い文化継承の担い手でした。でも、今は、次世代の地域社会を広く開いていく、牽引者にもなっているのです。伝統工芸を担う人達は、日本の地域再生の重要な牽引者なのです。(参考資料1、2022年8月6日、日本経済新聞(刈谷直政)を参照引用して記述)


(注1) マイスター(ドイツ語: Meister) 制度:ドイツ語圏の高等職業能力資格認定制度である。ドイツにおいてマイスター資格は、ファッハシューレ(Fachschulen)修了者に付与される資格であり、入学には1年以上の実務経験が必要である 。修了年数はフルタイムで2年間、パートタイムで3~4年間である 。

(注2) コースター:レールに沿って走る遊具。しばしば遊園地に設置される、 ジェットコースターとも言われる。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2022年8月6日(35面)。


[付記]2022年11月4日。

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