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[日本再生]伝統工芸 枠(わく)を脱し「粋(いき)」を磨く (その1) 2022年11月3日  伝統工芸業界 ブランドコラボレーションや同業との連携 甲州印伝 若手を呼ぶ

 

続木 碧(つづき あお) 2022年11月(研究報告№008)

☆巻頭の一言 

長らく衰退が続いていた日本の伝統工芸品ですが、一部で活発な動きが生れてきました。伝統工芸ならでの古くて新しい商品が開発されるようになり、人気が沸騰し、若い伝統工芸士も誕生し始めています。ここでは、再生が始まった日本の伝統工芸について述べます。

  

[伝統工芸 枠(わく)を脱し「粋(いき)」を磨く]

[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

 伝統工芸業界 ブランドコラボレーションや同業との連携 甲州印伝 若手を呼ぶ

ここでは日本経済新聞の2022年8月6日の2面記事を紹介します。

[はじめに]

地域の産業・文化を紡いできた伝統工芸が、従来の「枠(わく)」を脱却し、有名ブランドとのコラボレーション(注1)を図るなど、魅力の再発信に取り組み始めました。全国の生産額や従業者数は、一貫して減少傾向が続きますが、山梨県の甲州印伝や福井県の越前打刃物などは、新市場の開拓を進めた結果、売り上げが増え、次代を担う職人も育ってきました。


[伝統的工芸品は減少]

経済産業省が指定する「伝統的工芸品」は、西陣織や九谷焼など全国に237品目あります。伝統的工芸品産業振興協会によりますと、全体の生産額は1983年度の5405憶円をピークに減少傾向が続いています。直近の2017年は、927億円と、1983年度17%の水準まで落ち込みました。


[伝統工芸士が増加した品目は50]

「山梨県]

一方、伝統工芸士が増加した品目は50ありました。鹿革に漆で小桜などの模様をつける山梨県の甲州印伝は、職人が増えています。30代や40代を含む職人が続々と誕生した印傳屋上原勇七(甲州市)の上原重樹社長は「情報発信や独自の商品開発に取り組んできた成果」と話しています。

同社は「時代に合った技法を生かし、伝統工芸ならではの古くて新しい商品を提案する」として、毎年複数の新作を自社開発しています。2014年にグッチ、2017年にアスプレイなどのブランドとのコラボレーション(注1)にも、積極的に取り組んできました。

2021年のキース・ヘリングとのコラボ商品は、東京・青山や大阪・心斎橋の直営店で扱いました。20~30代女性に人気を得て、今年6月に第3弾を発売しました。商品開発は、売り上げ増に寄与するだけでなく、職人には伝統にはない形状の漆の載せ方など新しい技術の習得にもつながっています。


[福井県]

福井県の越前打刃物は、同業他社との連携で職人を育成し、伝統工芸士も36%増えました。1993年、10社が共同工房「タケフナイフビレッジ」(越前市)を開設しました。職人の世界は「先輩の技を目で見て盗む」イメージが強いのですが「職人同士で教え合い、若手が技術を吸収しやすい」場となったことで、さらに若手を呼び込み、2020年には工房を増設しました。

越前打刃物は、1986年に米国の展示会に出展するなど、早くから海外に展開してきました。2005年から2019年までドイツの国際見本市に出展してバイヤーの関心を呼び、2021年度は、生産額も2017年比65%増えました。


[愛知県]

 名古屋市は、江戸時代に下級武士の内職などから発展した尾張仏具や名古屋桐簞笥などの工房で、2021年度、泊まりがけの後継者育成インターシップ(注3)を実施しました。これは関係者の間で、強い関心が沸き起こり、これを切っ掛けに、伝統工芸士を目指して就職する若手が出始めています。


[岩手県]

 岩手県では、最先端技術と伝統的技術の融合を目指すプロジェクトも開始されています。南部鉄器を製造・販売するタヤマスタジオ(盛岡市)では、熟練職人のノウハウを登載した人工知能(AI、注2)を茨城県つくば市のスタートアップと共同開発しています。ここでは次世代を目指す最先端技術と伝統的技術の融合の新展開が始まっています。(参考資料1、日本経済新聞、2022年8月6日(杉本耕太郎、鈴木卓郎、青木志成)を参照引用して記述)


[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した、2022年8月6日の日本経済新聞の記事には、伝統工芸・伝統工芸士の増減の様子が図示されていました。


図表1は、この新聞紙上の日本列島の地図に伝統工芸士の増減が示されていました。伝統工芸の増加の地域は9カ所でした。北海道、宮城県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、和歌山県、岡山県、大分県が増加地域です。このほかは横這いまたは減少でした。


 図表2には、1974年度から2017年度までの間の伝統工芸の生産額を棒グラフで示してありました。これを一目で見ますと、1983年度の5400憶円をピークに減少が続いています。


 伝統工芸の分野は、従業員数も伝統工芸士の数も、これまで減少の一途でした(図表3) 。でも、永い間の努力がようやく実り、最近、古くて新しい魅力のある工芸品が生れるようになりました。若手の伝統工芸士への参入も進み始めました。

 伝統工芸は、ポストコロナにおいて、再び前進をはじめた、大変期待される分野です。伝統工芸士たちは、次世代の地域創生の牽引者として、大変に注目されています。


(注1) コラボレーション(collaboration):「共に働く」「協力する」の意味で、「共演」・「合作」・「共同作業」・「利的協力」を指す語である。日本語ではコラボと略されることが多い。

(注2) 人工知能=AI(artificial intelligence):「計算(computation)」という概念と「コンピューター(computer)」という道具を用いて「知能」を研究する計算機科学(computer science)の一分野」を指す語。言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術。計算機(コンピュータ)による知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野。

(注3) インターンシップ(internship):特定の職の経験を積むために、企業や組織において労働に従事している期間のこと。 商人・職人のための徒弟制度と似ているが 、標準化や監査などはされていないため、指すところの内容は様々である 。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2022年8月6日(2面)。


[付記]2022年11月3日。

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