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[日本再生]「地域創生」M字カーブ改善 島根首位 2023年4月24日 出産後も正規雇用多く 出雲のIT 有休30分単位 育児と両立

続木 碧(つづき あお) 2023年4月(研究報告№062)

「巻頭の一言」

 女性の就業が、30歳代で落ち込む「M字カーブ」の度合いについて、全国で差が生じ始めています。日本列島の地図に、都道府県別の女性の労働力率(生産年齢人口に対する労働力人口の比率)の落差の大きさを、緑色の濃淡で塗り分けて図示してみました。すると、北は青森県から南は島根県に至る日本海側の諸県が、濃い緑色に染まりました。裏日本側で女性の働き方改革が急進展しているのです。

 この改革は、東京・大阪など、人口が多い大都市では重荷になっているのですが、東京は独自の改革を進めており、今、急展開しています。


「地域創生」M字カーブ改善 島根首位 出産後も正規雇用多く 出雲のIT 有休30分単位 育児と両立


[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

「地域創生」M字カーブ改善 島根首位 出産後も正規雇用多く 出雲のIT 有休30分単位 育児と両立

ここでは日本経済新聞の2023年4月1日2面の記事を紹介します。


[はじめに]

 女性の就業が主に30歳代で落ち込む「M字カーブ(注1を参照のこと)」の度合いに、都道府県で差が生じはじめています。20代後半と30代で女性の労働力率(生産人口に対する労働人口の比率、注3)の差を比べると、島根県は2.2ポイントでM字の谷(注1)の落差が最も小さかったのです。この差が小さい地域は女性の正規雇用率も高いのです。  すなわち、人口減の中で働き手を確保するには、仕事を続けやすい環境づくりが極めて重要なのです。(2023年4月1日の日本経済新聞の2面(桜木浩巳、鉄村和之、富田龍一、磯貝守也)を参照引用して記述)。


[島根県・高知県・秋田県、M字カーブの落差(注1)が小さい]

 2020年の国勢調査をもとに算出すると、M字カーブ(注1)のM字の落差は島根県と高知県が2.2ポイントで最も小さく、秋田県が2.6ポイントでこれに続いていました。

一方、この落差が最も大きい処は、神奈川県で、13.7ポイントでした。次いで埼玉県の11.8ポイント、千葉県の11.6ポイント、東京都の11.5ポイントが続いていました。ここでは大都市圏は、地方より「女性の働きやすい職場づくり」では、かなり遅れているのです。

 

M字の谷の落差が最も小さい島根県、高知県、秋田県は、30代後半の正規社員の正規雇用率は全国よりも5~7ポイント高いのです。この3県は正社員の座を維持しやすい、凄く良い環境にあるのです。

 

[島根県出雲市 ソフト開発会社 30分単位の有給取得]

 島根県出雲市のソフト開発のシーエスエーは、30分単位で有給休暇を取得できる制度を2019年に導入しました。この会社は、社員44人の4割が女性で、育児などを理由に短い時間で有給を取りたいとの社員の声に応えました。


シーエスエーは、育児や介護向けの時差・時短勤務を充実させました。それで、女性の働きやすい企業として、近年、強く認識されるようになったのです。求人を出すと平均20倍の応募があると言うことです。今や、大人気です。まさに「入社に行列が並ぶ会社」の感を呈しています。

 

[高知県 企業は女性社員の視点を商品開発に生かす 家の女性しごと応援室]

 高知県の企業は女性社員の視点を商品開発に生かしています。これは「土佐和紙」の伝統の技を用いた生活用品を企画する三彩(土佐市)です。不織布を使った調理ペーパーでは「一度使っただけで捨てるのはもったいない」とサイズを小さく厚手に変更しました。強度を増し、洗って何度も使えるようにしました。


行政も働きたい女性を手厚く後押しします。県が2014年に設けた「高知、家の女性仕事応援室」は、仕事の紹介に止まるわけではないのです。求職者が子育て中で終日働けなければ、求人企業側に勤務条件の変更を促します。フルタイムで1人での求人を、時間を二つに分けて、2人の雇用を生むような事例も多出しているのです。年間で1500件以上の相談に応じ、130人の就職につなげました。


[秋田県 潟上市 事業所自ら保育環境整備]

 事業所自ら保育環境を整える動きもあります。秋田県潟上市の社会福祉法人の正和会

は2007年、グループ職員の事業所内託児所「テンプス」を開設しました。医療施設は年中無休なうえ、成和会は800人いる職員の7割が女性なのです。そこで子どもが生れても働きつづけられる体制が、何よりも必要だと判断しました。

 託児所を設けてから、同グループの離職率は大きく減少しました。「子どもを面倒みる」ことを理由に離職する人は、いなくなったのです。潟上市では、市の要請で2017年に、事業所託児所は、近隣の人も使える認可保育園となりました。これで潟上市では、地域住民全体が働きやすい地域となったのです。(2023年4月1日の日本経済新聞の2面(桜木浩巳、鉄村和之、富田龍一、磯貝守也)を参照引用して記述)。


[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2023年4月1日の日本経済新聞2面の記事には、三つの図表が記載されていました。「①島根や高知は20代後半から30代にかけて女性労働力率の落差が小さい」図表1、注6。(労働力差の落差は2022年)、(注)2020年の国勢調査から作成。不詳補完値による。「②島根県などでは30代の女性の労働力率がほぼ横ばい」図表2、注7。(注)2015年と2020年の国勢調査から作成。不詳補完値による。➂「女性の正規雇用率は島根県などで減少幅が緩やか」図表3、注8」(注)2020年国勢調査から作成。原数値による。


[図表1]

図表1(注6)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、都道府県別の女性労働力率(生産年齢人口に対する労働力人口の比率、注3)の落差を、緑色の濃淡で塗り分けて示していました。ここで、女性の労働力率の落差の最も小さい地域は、2022年の時点で2.9ポイント以下の処で、最も濃い黒緑色で示してありました。この女性労働力率の落差の最も小さいランク1の処は、島根県、高知県、秋田県、宮崎県の4県でした。


次いで女性労働力率落差の小さいランク2の処は、落差が4.9ポイント~3.0ポイントの処で、青森県、岩手県、山形県、新潟県、富山県、石川県、福井県、鳥取県、徳島県、佐賀県、熊本県の11県でした。結局、女性労働力率の落差の小さい、女性が働きすいランク1~2の地域は合計15県でした。


女性労働力率の落差が最も大きい(10ポイント以上)の処は、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、奈良県、大阪府、兵庫県の1都1府6県の8カ所でした。


結局、女性の働きやすい職場づくりは人口の多い大都市ほど、荷が重いのです。東京とこれを囲む、神奈川・千葉・埼玉。大阪・兵庫・奈良。愛知が女性労働力の落差が多く残っている地域でした。でも、各地は,これを自覚して鋭意改革を進めています。特に東京都は独自の改革を積極的に展開しており、大きな成果が生れ始めています。(2023年4月1日の日本経済新聞の2面(桜木浩巳、鉄村和之、富田龍一、磯貝守也)を参照引用して記述)。


[図表2]

 図表2(注7)は「島根県などでは30代の女性の労働力率がほぼ横ばい」と題した折れ線グラフでした。この図表の左側縦欄には、労働力率(生産年齢人口に対する労働力人口の比率、0~100%)がとってありました。また、下欄の横欄には、年齢が、15~19歳、25~29歳、35~39歳、45~49歳、55~59歳、65~69歳がとってありました。

ここに①島根県・高知県、②全国(2020年)➂全国(2015年)の3本のM字カーブが書かれていました。

 

その一番上に、島根県・高知県で労働力率のM字カーブが書かれていました。この2県のカーブは80%強の処にあり、ほとんど直線で、M字のくぼみは殆どありません。

その下には、全国(2020年)、さらに、その下に全国(2015年)が書かれています。全国のカーブでは35~39歳にかけて、M字のくぼみが見られます。

全国の2015年と2020年は平行して走っていますが、この5年間に5%位の改善がみられます。


[図表3]

 図表3(注8)は「女性の正規雇用率は島根県などで減少幅が穏やか」題した折れ線グラフでした。この図表の左側縦欄には、正規雇用率労働力率(注3~4を参照、10~80%)がとってあり、下欄の横欄には、図表2と同様の年齢がとってあります。

ここに①高知県、秋田県、島根県、②全国の2本の折れ線カーブが書かれていました。

 

この図の高知・秋田・島根の線は、殆ど同一です。女性の正規雇用率は25~29歳でピーク(75%弱)に達し、55~59歳の55%に向けて、なだらかに下降し、ここから急降下しています。

この下に全国の線があり、ほぼ同じピークから55~59歳の45%へ向けて、かなり急に下降し、この時点から急降下します。


この図を見ますと、25~29歳から55~59歳までの正規雇用率の減少において、改革が先行する、高知・秋田・島根の3県は全国平均と比べてかなり緩やかなことが良くわかります。この3県が進めている改革を全国で実施すれば,全国の正規労働力率を10%位向上させることができることが、良くわかりました。


(注1)M字カーブ: 労働分野において、女性の年齢階級別の労働力率(注2)を示す指標を表す語である。グラフ化した時のその形がアルファベットの「M」の字の形に似た曲線を描くことから、こう名付けられた。女性の年齢階級別の労働力率(15歳以上の人口に占める働く人の割合)をグラフで表すと学校卒業後の20歳代でピークに達し、その後30歳代の出産育児期に落ち込み、子育てが一段落した40歳代で再上昇する。これをグラフに表すと、アルファベットの「M」に似た曲線を描く傾向が見られる。このことから,この曲線を「M字カーブ」と呼ぶ。このグラフは女性の就業状況の特徴を表している。このM字カーブと呼ばれる現象は、日本のほか、韓国において、そのM字の底が深い特徴的な現象を示しているが、欧米諸国では見られない。

(注2)労働力: サービスという生産物を作るために投入される人間の能力。肉体的なもののみならず、知的なものも含む。

(注3)労働力率: 生産年齢人口に対する労働力人口の比率をさす。労働力率は,生産年齢に達している人口のうち,労働力として経済活動に参加しているの比率である。先進国ほど低く,家計や地域別にみると所得の高い層ほど低い。長期的にみると,進学率上昇により若年者の労働力率は低下し,主婦を中心とする中年女性の労働力率は上昇傾向にある。労働力率は就業者数と完全失業者数とを合わせた労働力人口が、15歳以上の人口に占める割合である。労働力人口÷15歳以上の人口(生産年齢人口)×100の数値で示す。

(注4)正規雇用=正社員:フルタイム勤務で雇用期間に期限がない無期雇用の働き方のこと。勤務先の企業に直接雇用され、転職をしない限りは定年まで働くことができる。ただし、企業が制度として認めれば1日6時間などの柔軟な働き方もできる。例えば「改正育児・介護休業法」により、3歳に満たない子供を育てている場合はどの企業でも1日原則6時間の時短勤務(短時間勤務)が認められる。

(注5)労働力落差:20代後半のピーク時代の「労働力」から、底となる30代の労働力をマイナスしたものを指す。

(注6)日本経済新聞2023年4月1日2面)に掲載された図表1「島根や高知は20代後半から30代にかけて女性労働力率の落差が小さい」図表1、注6。

(注7)日本経済新聞2023年4月1日2面)に掲載された図表2、「島根県などでは30代の女性の労働力率がほぼ横ばい」図表2、注7。

(注8)日本経済新聞2023年4月1日2面)に掲載された図表3、「女性の正規雇用率は島根県などで減少幅が緩やか」図表3、注8。」


[参考資料]

(1)日本経済新聞、2023年4月1日(2面)。

[付記]2023年4月24日。

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