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[日本再生]「地域創生」観光資源の登録続々 2023年1月23日 観光資源 「点」から「面」に 海運「北前船」16道府県で発信、誘客

 

続木 碧(つづき あお) 2023年1月(研究報告№037)

「巻頭の一言」

日本各地に存在する文化財を、これを地元の宝として、永い間守り通してきた人々と、地域の神社・仏閣の関係者が、古くから残されてきた古文書や文献などを集め、あらためて整理して、「日本遺産」の認定につなげる活動が、ここにきて、俄かに活発になってきました。コロナウイルス禍の影響の終息が期待されるなかで、日本の観光の建て直しのため、これが今、重要な柱の一つになっています。

「地域創生」観光資源の登録続々 観光資源 「点」から「面」に 海運「北前船」16道府県で発信、誘客


[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

「地域創生」観光資源の登録続々 観光資源 「点」から「面」に 海運「北前船」16道府県で発信、誘客

ここでは日本経済新聞の2022年11月19日2面の記事を紹介します。

[はじめに]

各地に点在する文化財を活用狙う「日本遺産」の取り組みが広がってきました。文化庁が2015年、24府県18件の認定でスタートさせ、8年で全47都道府県104件に拡大させました。

見過ごされてきた文化に、ストーリーを持たせ「面」としてつなげることで、継承します。環境整備の促進につなげ、新たな観光需要を産み出すことを狙います。(参考資料1、2022年11月19日の日本経済新聞の2面(瀬口蔵弘、篠崎瑠架)を参照引用して記述)


[日本遺産の取り組み]

 日本遺産は地域の歴史的な魅力や特色を通じて、文化や伝統を語るストーリーを認定する仕組みです。有形、無形の様々な文化財群を、地域が主体となって整備・活用するのです。認定後は国がガイド育成から多言語ホームページ作成まで財政を支援します。

 文化資源活用に関する補助金は上限5000万円で、人材育成などは全額補助し、2022年度は、全体で6億9000万円を交付しました。

   

[都道府県別で多い地域]

 都道府県別で最も多いのは兵庫県です。9遺産が認定されました。以下、大阪府(8遺産)奈良県、和歌山県、島根県、岡山県(各7遺産)と続きます。


[兵庫県]

 兵庫県では2015年に全国の第1陣として、篠山市(現・丹波篠山市)の「丹波篠山のデカンョ節」が登録されました。江戸時代の民謡を起源とするデカンショ節は、時代ごとの風土や人情、名所などが歌い継がれ、歌詞は今や300番に上るとされています。

 登録を機に市は、2016年、デカンショ節などを紹介する「丹波デカンショ館」をオープンしました。拡張現実(AR、注3)を活用して毎年8月の「デカンショ祭り」の雰囲気を、通年で体験できます。

 時代が描かれた歌詞を聴くことで、ふるさとの記憶をたどり、デカンショ館からストーリーを追って市内各地へと足を運ぶきっかけとしました。外国語でも発信力を強化し、2019年には外国人訪問数か1万人を超え、2015年時から倍増しました。

 併せて「丹波」のブランド力の向上にも努め、酒井隆明市長の下、2017年には日本六古窯の一つとして「丹波焼」も日本遺産の認定をうけました。さらに、2019年には市名を「丹波篠山市」へと変換しました。


[北前船にまつわる文化]

 江戸、明治期の海運を担った「北前船」にまつわる文化財は、各地域内でのストーリーに止まらず、日本列島を大きな面で捉えました。山形県酒田市を中心に、大阪市や島根県浜田市、岡山県倉敷市など16道府県49市町が連携し、寂れつつある寄港地の再活性化を目的に情報を発信します。

 酒田市と秋田市は、山居倉庫(注4)など北前船ゆかりの遺産群を巡るカードラリー(注5)を、2022年7月から11月まで実施しました。石川県加賀市と北海道小樽市は小学校同士が連携し、夏休みにお互いの寄港地を訪れます。外国人旅行者の誘客や特産物の販路拡大を狙います。2022年10月にはパリで自治体や企業関係者ら270人が参加し、「第31回北前船寄港地フォーラム」を開催しました。


[評価制度の導入]

 しかし、この取り組みは新しい取り組みだけに、有効に活用できていない地域もあるのです。国は水準を維持するため、2021年に評価制度を導入しました。

 初年度は、俳優の木村拓哉さんが織田信長にふんして「ぎふ信長まつり」に参加したことで話題を呼んだ岐阜市の「信長公のおもてなし」など4件が、「民間を巻き込んだ仕組み作りなどが足りない」として再審査になりました。いずれも、改善計画を提出したことで、条件付きで継続が認められ2024年度に再び審査されます。

 2022年も、神奈川県鎌倉の「いざ鎌倉」など3件が「再審査」の対象となりました。市担当者は「従来の観光計画と渾然一体となっていた」として、行政と社寺など関係者の連携を一層強化します。(参考資料1、2022年11月19日の日本経済新聞の2面(瀬口蔵弘、篠崎瑠架)を参照引用して記述)


[まとめ]

この研究報告の執筆で参考引用した2022年11月19日の日本経済新聞2面の記事には二つの図表が記載されていました。①日本遺産 都道府県別登録数 (図表1、注1)。②広域で取り組む主な自治体。日本遺産になりうる主な候補地。再審査中の自治体(図表2、注2)。


図表1(注1)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、日本遺産の都道府県別登録数が茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。都道府県別にみて登録数が最も多い処は「登録数8」以上の処で、最も濃い茶色(黒茶色)で示してありました。このランク1の処は、兵庫県と大阪府の2府県でした。次に登録が多いランク2の処は、「登録数6~7」の処で、奈良県、和歌山県、島根県、岡山県(7遺産),滋賀県、京都府(6遺産)の1府5県でした。続いてランク3は、4~5の処で、北海道、山形県、栃木県、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、福井県、広島県、長崎県の1道9県でした。

結局、日本遺産の登録が多い道府県は、合計で1道2府9県で、15自治体でした。全国に広く分布していますが、西高東低の感があります。東京・埼玉・千葉・群馬がない のが意外です。


 

図表2 人口に占める観客数が増えた地域・日本遺産になりうる候補地域・再審査中の自治体


(1)人口に占める観客数が増えた地域

代表自治体  テーマ         認定自治体数     登録年

高知県    四国遍路        4県58市町村    2015年

山形県酒田市 北前船寄港地・船主集落 16道府県49町村  2017年

   大津市    西国三十三所観音巡礼   7府県24市町村   2019年

   和歌山県   葛城修験         3府県20市町村  2020年 


(2)日本遺産になりうる候補地域

   北海道小樽市       北海道の「心臓」と呼ばれたまち・小樽

   千葉県富津市、鋸南町   天空の岩山が生んだ信仰と産業

   京都市          おもてなし文化、受け継がれてゆく京の花街


(3)再審査中の自治体 

   神奈川県鎌倉市      いざ、鎌倉

   新潟市など5市1町    信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化

   奈良県吉野町など2町6村 美林連なる造林発祥の地「吉野」


この内、(1)は、複数の都道府県をまたがって存在している日本遺産で、大阪府を出発して瀬戸内海を西進し、下関・門司の間を通り、日本海側へ出て、裏日本の海岸線を北上し北海道に至る長い船旅をする「北前船の旅」が、「広域日本遺産」の代表例です。その他、高知県の四国遍路、大津市の西国三十三所観音巡礼などが、広域日本遺産として認定されています。

 次の(2)は、日本遺産になりうる地域として検討されている処です。北海道小樽市、千葉県富津市、京都市などで、認定が検討されています。

 (3)は、一旦認定を受けていますが、もう少し詳しく調べて修正した方が良いと判定されたところで、再審査が予定されています。これは今回、日本遺産として新たに認定された部分と従来の観光が、渾然一体となっているという指摘が主な内容です。


日本遺産の登録済み数の分布図(図表1)を見ますと、東高西低の感が顕著です。東京、埼玉、千葉での実績が著しく少ないのです。結局、日本遺産登録競争は、関西勢が先行し関東、北日本勢が立ち遅れたようです。こちらにも、立派な日本遺産は沢山あるはずです。地元の宝を守ってこられた方々や神社・仏閣の関係者で、チームを組み直して、鋭意、再出発していただきたいと思います。(参考資料1、2022年11月19日の日本経済新聞の2面(瀬口蔵弘、篠崎瑠架)を参照引用して記述)


(注1)日本経済新聞2022年11月19日(2面)に掲載された図表「①日本遺産 都道府県別登録数 (図表1、注1)」。

(注2)日本経済新聞2022年11月19日(2面)に掲載された図表「②広域で取り組む主な自治体。日本遺産になりうる主な候補地。再審査中の自治体(図表2、注2)」。

(注3)拡張現実(AR:Augmented Reality): 「現実世界に仮想世界を重ね合わせて表示する技術」を指す言葉。エクステンデッド・リアリティ(XR)と呼ばれる先端技術の一つ。現実の風景の中にCGでつくられた3D映像やキャラクターなどのデジタルコンテンツデータを重ねて表示することで現実世界を拡張する。専用のヘッドマウントディスプレイを用いる方法、あるいはスマートフォンカメラディスプレイを使って重ね合わせる方法などがある。

(注4)山居倉庫(さんきょそうこ):山形県酒田市にある米穀倉庫。二重屋根で倉の内部は湿気防止構造、欅並木と自然を利用した低温管理倉庫である。2021年3月に国の史跡に指定されている。

(注5)カードラリー=クレジットカードを用いたラリー。ラリー (Rally) :法規上公道走行が可能な車両でタイムアタックをする 自動車競技 。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2022年11月19日(2面)。

[付記]2023年1月23日。  

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