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「日本再生][地域創生]公共施設に民間の知恵 2024年4月22日 山形県米沢市の住宅、家賃滞納6割減 指定管理 全国3分の1で導入

  • honchikojisitenji
  • 2024年4月22日
  • 読了時間: 10分

続木 碧(つづき あお)  2024年4月(研究報告№105)


「巻頭の一言」

自治体が体育館や展示場などの公共施設の管理を、民間に委ねる指定管理者制度(注1)が全国で広がっています。民間のノウハウを生かすことで、住民サービス向上やコスト削減につなげる狙いがあり、2022年の全国の市区町村の導入率は3分の1まで高まりました。山形県米沢市は、民間の参加意欲を引き出す仕組みを通じて、全国一の導入率を達成しています。日本経済新聞2024年4月13日、朝刊、2面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。

 

[日本再生][地域創生]公共施設に民間の知恵 山形県米沢市の住宅、家賃滞納6割減 指定管理 全国3分の1で導入

「日本再生」「地域創生」公共施設に民間の知恵 山形県米沢市の住宅、家賃滞納6割減 指定管理 全国3分の1で導入

 

ここでは日本経済新聞の2024年4月13日2面の記事を紹介します。

 

[はじめに] 

自治体の財政状況は、今、とても厳しいのです。国は、2003年に、行政サービスの効率化や資質の向上に向けて、地方自治法(注2)を改正しました。これで民間企業などが公共施設を管理できるようにしたのです。自治体は公募などで決めた民間の指定管理者(注3)と複数年契約を結んで、委託料を払うケースが多いのです。なお、類似した仕組みに、公共施設を整備・運営するPFI(注4)がありますが、指定管理制度は、公共施設の管理委託が中心になります。

総務省は2015年に、指定管理者制度の活用の一段の活用などを求める大臣通知を出し、取組みの状況の報告を求めています。2022年には、1741市区町村の11万4855の対象施設のうち、3万9914施設で指定管理を採用しました。導入率は34.8%で、2015年の29.4%から、7年連続で高まりました。

施設の種類ごとに導入率をみますと、民間が安定した収益を確保しやすい宿泊保養施設(85%)や展示場施設(68%)などが、導入率が高いのです。逆に、サービスを無料や低価格で提供する必要のある図書館(21%)や公営住宅(22%)は低いのです。

 

 

[山形県米沢市]

米沢市は報告対象の58施設のうち57施設で導入していますが、2015年に初めて公営住宅で採用した際の,入札の応募者はゼロでした。受託メリットが相対的に小さいうえ、経費などを厳格に定めすぎたのです。そこで、人件費や運営費を厳格に定めすぎていた計算方法を変更し、民間の知恵を生かしやすくしました。

再入札では、5グループが応札し、地元の東北警備保障などによる共同企業体に決まりました。共同企業体(JV)は、家賃の支払いや入退去の相談などに、土曜日も対応しました。家賃滞納者とも頻繁に交渉しており、2カ月以上の滞納者は3分の1に減り、家賃の収納率も89%から98%に改善しました。

米沢上杉文化振興財団は市立の図書館と博物館を受託しました。両施設の資料や文化財を一体的に検索できるデータベースを整備して、展示や研究に役立てるなど、柔軟な運用でサービス向上につなげました。

全国的に光熱費や人件費のコスト上昇が、指定管理を担う民間の採算を圧迫しているのです。米沢市の近藤洋介市長は「民間が努力すれば利益が出る条件を提示する必要がある」と話しています。そのうえで、「単純な行政コストの削減は難しいかもしれないが、今後も条件緩和などで自由度を高め、常にカイゼンを続ける民間の力を行政の改善に生かしていきたい」と述べています。

 

[神奈川県大和市]

 導入率3位の神奈川県大和市は図書館や文化ホールといった複数の施設を1つのグループとしてまとめて入札にかけています。市民サービスの向上度を利用者数で毎年モニタリング(注5)し、コスト削減に偏らないよう指定管理者に要請しています。


[奈良県香芝市]

 4位の奈良県香芝市は「民間にできることは民間に」とうたい、いち早く全面的に指定管理者制度を導入しました。民間との連携で午後10時まで文化施設を開館するなど、サービスが向上したのです。



[この項のまとめ]

指定管理者制度に詳しい大和総研の鈴木文彦主任研究員は「コスト面を追い求めるだけでは指定管理者制度は有効に活用できません。民間の力を生かして住民サービスを向上させるという視点を、これまで以上に、強く明確にする必要があるのです」と厳しく指摘しています。日本経済新聞2024年4月13日、朝刊、2面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。


[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2024年4月13日の日本経済新聞の朝刊2面には、三つの図表が記載されていました。①市区町村の施設管理を民間に任せる比率(注)市区町村の公共施設における指定管理者制度の導入率を都道府県ごとに集計。2022年4月1日現在。総務省の資料から作成。②導入率が高い市区町村。(注)小数点第2位以下で順位付け。➂公営住宅や図書館の導入率が低い。


[図表1]

図表1(注6)には、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、これは2022年4月1日現在の「市区町村の施設管理を民間に任せる比率」と題した図表でした。ここでは、全国の市区町村の公共施設における指定管理者制度(注1)の導入率を、都道府県ごとに集計しています。この導入率を日本列島の地図上で、紫色の濃淡で塗り分けて区分して示していました。

各都道府県別の導入率について、その値の最も大きい処から小さい処へと5段階にわけ、日本列島の地図を色分けして示していました。

その色分けは以下です。①導入率の最も高い処55%以上(黒紫色)。②導入率40%以上50%未満(濃い紫の斜線)。➂導入率30%以上40未満(紫色)。④20%以上30%未満(淡い紫色の斜線)。⑤20%未満(淡い紫色)。

 

ここで各都道府県における市区町村で、指定管理者制度の導入率が最も高かったのは、黒紫色に、塗ってあった処でした。これに該当する地域は、第1位の神奈川県、第2位の大阪府、第3位の岩手県、それに広島県が続いていました。合計4カ所でした。ここが、民間のノウハウを生かして住民サービスやコスト削減を進める活動で、今、最も進んでいるのです。これが明確になったのが、今回の研究の一番大きな収穫でした。

 

指定管理者制度の導入率が、次に大きかった処(40%以上50%未満)は濃い紫色の斜線で示した処(第2群)で、青森県、山形県、栃木県、富山県、石川県、静岡県、滋賀県、兵庫県の8カ所でした。この集団が、先頭集団を、どんどん追ってくれるのが、当面、特に重要なのです。

 

さらに、その次に指定管理者制度の導入率が大きかった処(30%以上40%未満)は、紫色に塗った処(第3群)で、宮城県、新潟県、埼玉県、千葉県、東京都、長野県、岐阜県、愛知県、京都府、奈良県、岡山県、山口県、福岡県、佐賀県、大分県、宮崎県、熊本県、沖縄県の18カ所でした。この18カ所が、これから急速に伸びて先行の2集団(第1、2群)に続いてほしいのです。

 

ここまで、指定管理者制度の導入率が大きかった上位3群の合計は30カ所で、全国の65.2%でした。この65.2%を、民間が「指定管理者制度」を広く推進してくれる「先導者」であると、私は、考えて行きたいと思っています。

 

さらに、次の段階に進みますと、このグループは、指定管理者制度の導入率が最少だったグループの、一つ手前の第4群です。これは淡い紫色の斜線で記されていました。

この第4群に入っている自治体は以下です。これは北海道、秋田県、福島県、群馬県、茨城県、山梨県、福井県、鳥取県、三重県、長崎県、鹿児島県、香川県、愛媛県、高知県の14カ所でした。この4群は、この活動の底辺を底上げしていく人達です。

 

最後の第5群は、指定管理者制度の導入率が最少だったグループです。この活動で、一番遅れてしまったグルーブです。それは和歌山県、徳島県の2カ所でした。

 

 

この調査研究で引用活用した文献には、第3群に属する山形県米沢市の活動について、丁寧な解説を示してくれていました。でも、私が一番期待している第1群の4カ所、神奈川県、大阪府、岩手県、広島県についての解説が少なかったのが、ちょっと残念でした。続編の発信が続くことに、私は大きな期待をしています。

日本経済新聞2024年4月13日、朝刊、2面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。



[図表2]

図表2(注7)は「導入率が高い市区町村」と題した図表でした。

ここでは、各都道府県の指定管理者制度の導入率について、その導入率が高い市区町村を、それが高い順に第10位まで示していました。これを以下に記します。

 

図表2 「導入率が高い市区町村」

順位     市区町村(都道府県・グループ・群)      導入率

1      米沢市(山形県、第2群)           98.3%

2      港区(東京都、第3群)            96.1

3      大和市(神奈川県、第1群)          95.1

4      香芝市(奈良県、第3群)           94.6

5      横浜市(神奈川県、第1群)          94.6

6       仙台市(宮城県、第3群)           93.8

7      刈羽村(新潟県、第3群)           92.3

8      神戸市(兵庫県、第2群)           91.8

9      大阪市(大阪府、第1群)           89.4

10     豊橋市(愛知県、第3群)           88.6

 

(注)小数点第2位以下で順位付け。  群:各都道府県の指定管理者制度の導入率

  の大きい順に区分したグループ(群)。

 

 この図表2を概略に見てみますと、以下のことがわかりました。この「指定管理者制度の導入率について、導入率の高い市区町村」として、ベスト10に入った都市は、その属する都道府県は、導入率の大きさ別に区分したグルーブ(群)からみますと、その値の最も高い処(50%以上)の地域である第1群から、これに続く第2群、第3群に属している処ばかりでした。すなわち、30%未満の地域(第4群、第5群)には居なかったのです。結局、市区町村単位でみてベスト10に入る地域は、都道府県単位でも、導入率の高い地域にしかいなかったのです。

日本経済新聞2024年4月13日、朝刊、2面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。



[図表3]

図表3(注8)は「公営住宅や図書館の導入率が低い」と題した図表でした。この図表の上部には、0~80%の導入率(%)が記してありました。そして、その下に、宿泊施設、展示場施設、公営住宅、図書館などの施設別の導入率が、横線棒グラフで記してありました。ここでは、その内容を、分かりやすい、別の表として示します。

 

 

図表3 「施設区分別の指定管理者制度の導入率」

 

施設区分別           指定管理者制度の導入率

宿泊施設                82%

展示場施設               63

野球場など               50

博物館                 30

公民館                 28

斎場など                25

公営住宅                23

図書館                 22

 

 公共施設の管理を民間に委ねる指定管理者制度が全国で広がってきました。民間のノウハウを生かすことで、住民サービス向上やコスト削減につなげる狙いがあり、2022年の全国の市区町村の導入率は3分の1まで高まったのです。

でも、この導入率を施設の種類ごとにみますと、民間が安定した収益を確保しやすい宿泊施設や展示場施設などでは、導入率が高いのですが、サービスを無料や低価格で提供する必要のある図書館や公営住宅では低いのです。

図表3を見れば、これが良くわかります。図表の上部にある宿泊施設(82%)や展示場施設(63%)と、図表下部にある公営住宅(23%)、図書館(22%)を比べれば一目瞭然なのです。日本経済新聞2024年4月13日、朝刊、2面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。


(注1) 指定管理者制度とは、民間企業やNPOなどの団体が、自治体に代わって公共施設の管理運営を行う仕組みである。この制度が導入されるまでは、自治体が、公共施設の管理運営を委ねることが出来るのは、公共団体や自治体が出資した法人に限られていた。2003年の地方自治法改正で管理運営主体の制限がなくなり、自治体が指定する民間企業などの「指定管理者」が、公共施設の管理を引き受けることができるようになった。この新たに導入された制度が指定管理者制度である。


 


(注4)PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法である。PFIの導入により、国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指す。我が国では、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が1999年7月に制定され、2000年3月にPFIの理念とその実現のための方法を示す「基本方針」が、民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)の議を経て、内閣総理大臣によって策定され、PFI事業の枠組みが設けられた。

 

(注5) モニタリングとは「観察する」ことを意味する言葉である。もともと英語圏で使われていた「monitoring」を日本でも用いるようになった。monitoringの「monitor」とは、監視する、様子をうかがうことを意味している。これに、現在進行形の「ing」をつけて名詞化したのがmonitoringである。


(注6)日本経済新聞2024年4月13日の朝刊2面に掲載された図表1、①市区町村の施設管理を民間に任せる比率。(注) 市区町村の公共施設における指定管理者制度の導入率を、都道府県ごとに集計。2022年4月1日現在。総務省資料から作成。


(注7)日本経済新聞2024年4月13日の朝刊2面に掲載された図表2、②導入率が高い市区町村(注)少数点第2位以下で順位付け。


(注8)日本経済新聞2024年4月13日の朝刊2面に掲載された図表3、➂公営住宅や図書館の導入率が低い。



(1)日本経済新聞、2024年4月13日(2面)。

[付記]2024年4月22日:

 
 
 

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