「日本再生][地域創生] 消える書店 住民と守る 2024年8月12日 青森県八戸市「公営」交流の場に 10年で3割り減、存続への知恵
- honchikojisitenji
- 2024年8月15日
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続木 碧(つづき あお) 2024年8月(研究報告№119)
「巻頭の一言」
まちの書店の減少に歯止めを掛けようという動きが広がっています。雑誌や書籍の落ち込みやネット書店の台頭で、全国の書店数は10年間に3割減りました。地域の文化拠点を守ろうと、国や自治体も振興に知恵を絞ります。青森県八戸市は全国でも珍しい公営書店を運営して住民の交流に生かしています。日本経済新聞、2024年7月20日、朝刊、2面記事(荒木望)を参照・引用して記述。
[日本再生][地域創生]消える書店 住民と守る 青森県八戸市「公営」交流の場に 10年で3割り減、存続への知恵
「日本再生」「地域創生」消える書店 住民と守る 青森県八戸市「公営」交流の場に 10年で3割り減、存続への知恵
ここでは、日本経済新聞の2024年7月20日、朝刊2面の記事を紹介します。
[はじめに]
出版科学研究所によりますと、2023年の書籍の推定販売額は6194億円と、ピークの1996年に比べて43%減りました。雑誌は72%減となっており、専修大学の植村八潮教授は「雑誌の落ち込みが書店経営を大きく圧迫している」と話しています。
日本出版インフラセンターの統計では、2024年6月18日時点の全国の書店数は1万667店。2014年6月に比べて4607店(30.2%)減りました。増加した都道府県はなく、東京都も601店(34.2%)減らしました。書店が1軒もない「無書店自治体」も全体の約4分の1に達しています。
[青森県]
25%減となった青森県では、状況を変えようと自治体が動いていす。「本のまち」を掲げる八戸市は2016年に公営の書店「八戸ブックセンター」を開きました。民間との競合を抑えるために、漫画や雑誌の取り扱いを少なくし、文学作品や自然科学の入門書を約1万冊そろえました。扱いのない書籍は地元書店で注文してもらうほか、図書館を案内します。音喜多信嗣所長は「住民が本と出合う入り口としての役割を担っている」と強調しています。
八戸工業高等専門学校は、同センターで「ブックハンティング(注1)」を定期的に開きます。学生が図書館の蔵書を自由に選ぶことで、本と触れ合う機会を増やします。八戸市は住民による読書会が盛んで、2023度は20団体がセンター内で読書会を開きました。参加者は「本に詳しい店員から新刊などを案内してもらえる」と笑顔です。
市は小学生約1万人に地元の書店で利用できるクーボンを、一人当たり年2000円配布しています。楽しみにする児童は多く、利用率は9割を超えています。公営書店の課題は収益性です。2022年度は書店販売などで約2700万円の収入がありました。でも、運営コストは9700万円でした。7000万円の赤字は市が補填しています。2021年就任の熊谷雄一市長は、センターを「本によるまちづくりの拠点」と位置づけながらも、「赤字をさらに増やすわけにはいかない」と話しています。2023年末には市民の要望を受けて児童書や子育て関連の売り場を広げるなど、経営改善に知恵を絞っています。
[鳥取県・島根県]
若手層を中心に、ネット書店や電子書籍の活用が増え、まちの書店を訪れる機会が減っています。鳥取・島根両県で13店を運営する今井書店(松江市)は地元の飲食店や雑貨店などと連携して来店を促しています。2022年から月に1~2回、店舗の駐車場で開く「ほんやさんマルシェ(注2)」では、パンの店舗等が人気です。「20~30歳代が来店するきっかけになっている」と同社は言っています。
[和歌山県]
店舗数の減少を最も良く抑えた和歌山県では、食品スーパーのオークワの関連会社が2024年6月、和歌山市内の書店を夜間は店員を置かない24時間営業に切り換えました。人件費抑制と同時に、隣接する24時間営業のスーパーの来店者などに、気楽に立ち寄ってもらうのが狙いです。
[この項のまとめ]
経済産業省は2024年3月、省内に書店振興のプロジェクトチームを設置しました。課題を抽出し、近く対策をまとめる予定です。齋藤健経産相は「ネット書店の台頭に加え、キャッシュレス決済の手数料や人件費の負担など、店経営には中小企業共通の課題がある」と分析しています。そのうえで「国もコンテンツ産業の振興施策などを活用して何ができるかを検討します。自治体や住民と一体となって盛り上げたい」と話しています。日本経済新聞、2024年7月20日、朝刊、2面記事(荒木望)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2024年7月20日、朝刊、2面記事(荒木望)には三つの図表が記載されていました。それを引用します。これを以下の①、②,➂に記します。①書店の減少を抑えている都道府県。(注)2024年6月時点の店舗数を2014年同期と比べた減少率。いずれもマイナス。日本出版インフラセンターの資料から作成。②書店の減少数の多い都道府県。(注)(2024年6月時点と2014年同時期を比べた減少数、カッコ内は減少率、▲は減)。➂出版物の推定販売金額。(注)出版科学研究所の資料から作成。
[図表1]
図表1(注3)には、新聞紙上に日本列島の地図が記載されていました。これは書店の減少を抑えている都道府県について、その減少率を最も小さく抑えられた処(0%~20%未満減)から、最も抑えられなかった処(30%以内~)へと4段階に分けて色分けして示してありました。
この4段階は、以下です。①書店の減少率を、最も小さい値(0%~20%未満)に抑えられた地域(第1群、黒色)。②同、減少率を2番目に小さい値(20%以上~25%未満)に抑えられた地域(第2群、濃い黒緑色の斜線)。➂同、減少率を3番目に小さい値(25%以上~30%未満)に抑えられた地域(第3群、濃い緑色)。④同、減少率を小さく抑えることが、最もできなかった地域(第4群,淡い緑色)。
まず、第1群は、書店の減少率を最も小さい値(0%~20%未満)に抑えることができた地域で、1位和歌山県、2位奈良県、3位秋田県の3県が、このグループに属していました。
次の第2群は、書店の減少率を最も小さい値の次の値(20%~25%未満)に抑えることができた地域で、このグループには、福島県、群馬県、長野県、三重県、島根県の5県が入っていました。
その次の第3群(25%以上30%未満、濃い緑色)は、この研究プロジェクトにおいては、大事なグループです。ここで、第1群、第2群は、この「書店の減少率を、出来るだけ小さい値で抑える活動の推進者グループとして、とても頼りになるグループですが、なにしろ、2群の合計でも13カ所しかないのです。数がとても少ないのです。
数が多い第3群がたよりになる人達にならないと、このプロジェクト全体の円滑な運営はとても難しいのです。そのことから,この第3群は重要です。
第3群のメンバーは以下です。北海道、青森県、宮城県、山形県、新潟県、茨城県、石川県、千葉県、岐阜県、愛知県、兵庫県、鳥取県、広島県、山口県、愛媛県、福岡県、大分県、佐賀県、沖縄県。すなわち、第3群は、19カ所でした。この第1~3群(27カ所)が、日本の社会・経済・産業の成長の未来にとって、とても大事な活動である「書店減少を抑える活動」にとって、凄く重要なのです。
最後の第4群(減少率30%以上、減少率が最大のグループ、淡い緑色)は、以下のメンバーです。岩手県、富山県、栃木県、埼玉県、東京都、神奈川県、福井県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、岡山県、鳥取県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、香川県、徳島県、高知県。
すなわち、第4群は、この20県です。この各地の人々は、これまで述べてきた様々な産業改革で、孤軍奮戦頑張ってきた人達です。この人達は、これからも大いに頑張って、第1~3群と一体となって、このプロジェクトを推進してくれるものと、私は大いに期待しています。
[図表2]
図表2(注4)は「書店の減少数の多い都道府県」と題した図表でした。これを以下に記述します。
図表2「書店の減少数の多い都道府県」
順位 都道府県 書店の減少数
1 東京都 ▲601店 (▲34.2%)
2 大阪府 ▲399 (▲36.1)
3 愛知県 ▲267 (▲29.3)
4 埼玉県 ▲248 (▲33.8)
5 神奈川県 ▲232 (▲31.6)
6 兵庫県 ▲222 (▲31.6)
7 千葉県 ▲191 (▲29.8)
8 北海道 ▲190 (▲26.9)
9 静岡県 ▲160 (▲33.4)
10 福岡県 ▲154 (▲28.7)
(注)2024年6月時点と2014年の同時期を比べた減少率、▲は減。
この図表は、書店の減少数の多い都道府県を、その多い順に第1位から第10位まで、列記しています。参考文献として日本出版インフラセンターの資料を用いています。
減少数がダントツに多いのが東京都で、大阪府がこれに続いており、トヨタ自動車がある愛知県がさらに追従しています。それに続いて東京近接県の埼玉県・神奈川県・千葉県が4、5、7位に入っており、結局、東京とその周辺で、商店数の減少が特に顕著なのです。
ここで、書店の減少数が多いのは、悪いことばかりではないのです。各都道府県で、書店総数が多い地域では、時代の要請を考えれば、書店数が減るのは必然なのです。書店の経営状態の悪い処は改善し、必要とする良い書籍の出版は減らさないようにすることが、なんとしても重要なのです。
[図表3]
図表3(注8)は「出版物の推定販売金額」と題した図表でした。この図表の左欄には、0兆円~2.5兆円の「出版物の推定販売金額」が列記されており、下欄には1994年から2023年までの「年」が記してありました。この「販売金額」と「年」を用いて、1994年から2023年の「出版物の推定販売金額」の棒線グラフが書いてありました。1994年から2023年にかけての書籍、雑誌、電子出版の推定販売額は、一貫して減少する棒グラフとして記されていました。これは、出版科学研究所の資料から作成しています。日本経済新聞、2024年7月20日、朝刊、2面記事(荒木望)を参照・引用して記述。
棒グラフは下段に「書籍」、中段に「雑誌」、上段に「電子出版」が色を変えて記してあり、「黒色」、「緑色」「黒緑色」の色彩で,それぞれの棒線グラフを三段積みで積み上げてありました。「書籍」は1994年1.0兆円から2023年の0.7兆円へと減少しており、棒グラフの柱の列は、なだらかな「黒い」一貫した減少状態を描いていました。中段の「雑誌」は、「緑色」の棒線グラフの列で記してあり、1994年の1.7兆円から2023年の1.2兆円へと、「書籍」より急速な減少を示していました。上段の「電子出版」は、「黒緑色」に塗ってあり、2013年の0兆円から始まり、2023年には、0.5兆円に達していました。「書籍」「雑誌」の一貫した減少に対し、「電子出版」が2013年から販売が開始され、全体の減少を補っていました。
(注1) ブックハンティングとは、学修に役立つ専門書や多くの学生が興味を持ちそうな書籍など、図書館に所蔵して欲しい図書を、学生目線で選んでもらうイベントである。
(注2) マルシェとは、「市場」という意味のフランス語である。朝市もマルシェに含まれ、フランスでは盛んに行われている。マルシェで売られているものは、実に多様である。新鮮な野菜・果物・肉・魚・パン・乳製品といった食べ物のほか、花・雑貨・衣料品など本当にさまざまものが販売されている。「ほんやさんのマルシュ」は、書籍を販売する市場である。
(注3) 日本経済新聞2024年7月20日朝刊2面に記載された図表1、①書店の減少を抑えている都道府県。(注)2024年6月時点の店舗数を2014年同期と比べた減少率。いずれもマイナス。日本出版インフラセンターの資料から作成。
(注4) 日本経済新聞2024年7月20日朝刊2面に記載された図表2、②書店の減少数の多い都道府県。(注)2024年6月時点と2014年同時期を比べた減少数。カッコ内は減少率、▲は減。
(注5) 日本経済新聞2024年7月20日朝刊2面に記載された図表3、➂出版物の推定販売金額。(注)出版科学研究所の資料から作成。
(1)日本経済新聞、2024年7月20日 朝刊(2面)。
[付記]2024年8月12日:.
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