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「日本再生]「地域創生」個人所得 バブル超え3割 2023年10月23日 494市区町村 東北目立つ 高速道整備 工場進出 農産物も競争力

続木 碧(つづき あお) 2023年10月(研究報告№085)

「巻頭の一言」

 個人所得が増えています。2022年度の個人住民税の課税対象所得は、9年連続で増加し、全国の約3割にあたる494市区町村がバブル期を上回りました。賃金上昇に加えて株式や不動産の売却益も寄与しました。都道府県で上昇率トップの山形県は、道路網の整備などで、工場進出や特産の農産物の高付加価値化が進み、住民の所得を押し上げました。日本経済新聞2023年9月30日、朝刊、1面記事(桜井祐介、増渕稔)を参照・引用して記述。


「地域創生」個人所得 バブル超え3割 494市区町村 東北目立つ 高速道整備 工場進出 農産物も競争力

 

「地域創生」個人所得 バブル超え3割 494市区町村 東北目立つ 高速道整備 工場進出 農産物も競争力

ここでは日本経済新聞の2023年9月30日朝刊の1面の記事を紹介します。


[はじめに]

 総務省が公表している個人住民税(所得割、注1)の課税対象所得を納税義務者数で割って一人あたりの所得を算出しました。直近の2022年度と過去最高だった1992年度を比較しました。個人住民税は前年1~12月の所得に課税するため、2022年度の課税対象所得は、2021年の収入を示しています。

 全国平均の個人所得は前年度より10万円多い361万円と、1992年度より5%少ない水準まで回復しました。東北や九州など地方圏の回復が先行し、バブル期に土地高騰などで所得が大幅に上がった大都市圏が遅れています。30年前を上回ったのは8都県でした。


[山形県]

都道府県別で伸び率トップの山形県は、全体の8割の28市町村でバブル期を上回りました。県内陸部を縦断する東北自動車道が順次開通します。港湾などの充実もあって、企業立地や特産品の高付加価値化が進みました。果実などの農産物をより鮮度が高い状態で消費地に届けることで、販売量や単価の上昇につながるケースも多いのです。山形県の2021年の果実算出額は694億円と30年で22%増えました。

 沿線の山形県尾花沢市は所得がバブル期を15%上回りました。夏場のスイカの生産量は日本一で、「尾花沢すいか」としてブランド化にも成功しました。地元農産物を扱う「道の駅尾花沢」の利用者は30万人を超えています。寒河江市でも「関東圏から特産のサクランボを目当てに訪れる人が増えているとJAさがえ西村山は言っています。

 工場進出も進みます。山形県などによりますと、東北中央道の沿線市町村における工場新増設数は2011年から2021年までで110件、設備投資は累計621億円に達しました。


[秋田県]

 2位の秋田県も製造業の進出が広がっています。所得が4.7%増えた横手市では自動車関連企業などの立地が進んでいます。同県では道路網の整備もあって、宮城県などの生産拠点に部品を供給するメーカーも増えつつあるのです。さらに道路整備などが進めば、自動車関連の工場立地が一層進む」と県産業集積課は期待しています。


[東京都]

 2022年度の都道府県別の課税所得が全国一だった東京都も、バブル期を0.9%上回りました。港区は全国トップの1471万円で、バブル期より60.6%増加しました。千代田区は11.0%、渋谷区も38.3%増えました。課税対象となる株式や不動産の譲渡所得などの増加も影響しているとみられます。


[北海道]

 一方、市区町村別の伸び率の上位には北海道の自治体が多く並びました。51.6%増の枝幸町、51.5%増の猿払村は特産のホタテなど漁業関連の収入拡大が牽引しました。ただ、足元では、中国の輸入規制の影響を受けていますが、今、強力にその対応を進めています。


[この項のまとめ]

 多くの自治体で個人所得はバブル期に近づいています。一方、物価の上昇も続きます。経済産業研究所の近藤恵介上席研究員は、「所得の上昇は当面は続く」とした上で、「自治体には住民の所得引き上げだけではなく、広い意味での住み心地を充実させるなど『実質所得』を拡大する工夫が重要になるだろう」と話しています。日本経済新聞2023年9月30日、朝刊、1面記事(桜井祐介、増渕稔)を参照・引用して記述。

 

[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2023年9月30日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、三つの図表が記載されていました。①個人所得は8都県でバブル期超え。(注)2020年度の一人当たり課税所得の1992年度比増減率。出所は総務省。②地方圏の上昇が目立つ。➂所得は上昇するも物価には追いつかず。(注)課税対象所得と消費者物価指数を100とした水準。出所は総務省。


[図表1]

図表1(注2)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、2022年度の一人あたり課税対象所得の1992年度比増減率を「茶色および青色の濃淡」で塗り分けて示してありました。これによりますと、2022年度の一人当たりの課税所得の増加した地域は僅かであり、殆どの地域は、減少地域でした。その「増加の地域」は、目立つように茶色に色付けされていました。これが実現できていたのは、1位山形県、2位秋田県、3位島根県以下、岩手県、福島県、東京都、熊本県、宮崎県の1都7県のみでした。

一方、課税所得減少地域の中で、最も減少幅が小さい地域は濃い青色の斜線で記してありました。これは北海道、青森県、宮城県、新潟県、石川県、福井県、鳥取県、岡山県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県の1道13県(14道県)でした。


この図表1を、良く観察してみますと、以下のことが判りました。2020年度の一人あたり課税所得の1992年比で「増加している処」に、「減少を最少(5%以下)に止めた処」を加えた地域の分布は、北海道から、東北、日本海沿岸、九州・四国が多いのです。一方、減少しているのは、東京都を除く首都圏(神奈川・埼玉・千葉・茨城)と関西圏の南部(奈良・和歌山)です。全国で最多の減少(15%以上の減少)は千葉県と奈良県でした。日本経済新聞2023年9月30日、朝刊、1面記事(桜井祐介、増渕稔)を参照・引用して記述。


[図表2]

図表2(注3)は「地方圏の上昇が目立つ」と題した図表でした。これを以下に記します。


図表2 地方圏の上昇が目立つ

順位  自治体名       金額(万円)  1992年度比

     1   周防大島町(山口県) 1177    4.1倍

     2   安平町(北海道)    578    63.7%増

     3   港区(東京都)    1471    60.6

     4   枝幸町(北海道)    463    51.6

     5   猿払村(北海道)    732    51.5

     6   湧別町(北海道)    407    45.9

     7   雄武町(北海道)    434    45.0

     8   興部町(北海道)    404    42.6

     9   忍野村(山梨県)    528    38.6

    10   渋谷区(東京都)   1000    38.3

         全国平均        361     5.3%減

     

 この図表には、2022年度の一人あたり課税対象所得(金額・万円)と、その1992年度比の増加および減少率が記してありました。これを(2位以下は)減少率の増加(%)の大きい順に記して10位まで示してあります。


 これをみて驚いたのは、このベスト10に入った自治体として、北海道が凄く多いことです。ベスト10の中で実に6カ所を占めていました。

 

 もう一つ、この順位でトップになった周防大島町(山口県)の課税対象所得(金額・万円)の減少額の増加率(%)がダントツに2位を引き離している凄さです。すなわち、この一位は、2022年度の課税対象所得額増加の減少率が1992年度の4.1倍で、2位の安平町(北海道)は、1.637倍です。そして3~10位は、1.606~1.383倍なのです。この1位と2位の差は巨大で、驚くばかりです。


 この北海道と山口県は、先の図表1の分析で、課税所得の減少が、この30年で最少であった地域(「5%未満の減少」の地域)に属していました。すなわち、この人たちは、頑張って、やっと30年前の水準に追いつく寸前にきていた人達なのです。この人達には、何か凄いことが出来る力がついて来ているように思いました。日本の未来を大改革出来る人達の集団なのかもしれません。私は凄く期待しています。



[図表3]

 図表3は、「所得は上昇するが物価高には追いつかず」と題した図表でした。この図表の左側縦欄には60~110のポイントを示す目盛が記してあり、これは課税対象所得と消費者物価指数の1992年度を100とした水準を示したもので、その上昇幅として110まで、下落幅として60までを示してありました。

 また、下欄には1985年度から2022年度までの「年度」が記してありました。この縦横軸を用いて、各年度の消費者物価指数と課税対象所得をプロットし、両者の推移を示す折れ線グラフが書いてありました。この折れ線グラフでは、消費者物価指数は1985年度の90ポイントから1992年度の100ポイントに到り、2022年度の110ポイントを目指して、上下動を繰り返して進んでいます。

 一方、課税対象所得の折れ線グラフの方は、1985年度の70ポイント弱から1992年度の100ボイントに急上昇し、ここを頂点として急下降して2012年度の85ポイントに至り、ここから2022年度の95ポイントへ向けて急上昇します。でも100ボイントには戻っておらず、この後上昇できるかどうか不明です。すなわち、課税対象所得も上昇していますが、消費者物価指数に追いつけるかどうかは不明です。このことが、ここに示した2本の折れ線グラフで明確にわかりました。日本経済新聞2023年9月30日、朝刊1面記事(桜井祐介、増渕稔)を参照・引用して記述。


(注1)個人住民税(所得割)とは、地方公共団体の住民であるということで課税される税金である。自治体の運営に必要な経費を住民が負担するもので、自治体を運営するうえでの財源となっている。法律上「住民税」という用語はなく、一般的には都道府県民税・市町村民税を合わせたものを「住民税」と呼んでいる。住民税は、所得税と同じように「所得」をもとに税額を計算して納める税金であるが、所得税は「国税」であり、住民税は「地方税」であると言う点で異なる。


(注2)日本経済新聞2023年9月30日の朝刊1面に掲載された図表1、①個人所得は8都県でバブル期超え。(注)2022年度の一人あたり課税対象額の1922年度比増減率。出所は総務省。


(注3)日本経済新聞2023年9月30日の朝刊1面に掲載された図表2、②地方の上位が目立つ。


(注4)日本経済新聞2023年9月30日の朝刊1面に掲載された図表3、➂所得は上昇するも物価高には追いつかず。(注)課税対象所得と消費物価指数の1992年度を100とした水準。出所は総務省。


(1)日本経済新聞、2023年9月30日(1面)。

[付記]2023年10月23日:

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