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「日本再生][地域創生]コメ新ブランドで実り 2024年4月29日 秋田 減農薬で「サキホコレ」 産出額、市町村3割で増

続木 碧(つづき あお)  2024年4月(研究報告№106)


「巻頭の一言」

 全国の3割の市町村が、コメの産出額を増やしています。全国有数のコメ所である秋田県では、4分の3の市町村で2022年の産出額が2014年を上回りました。人口減や食の多様化などで日本の食卓でのコメの存在感が薄れるなか、新しいブランドや用途の開発、輸出強化といった農業者の地道な努力が、実りつつあります。

 

[日本再生][地域創生]コメ新ブランドで実り 秋田 減農薬で「サキホコレ」 産出額、市町村3割で増

 

「日本再生」「地域創生」コメ新ブランドで実り 秋田 減農薬で「サキホコレ」 産出額、市町村3割で増

 

ここでは日本経済新聞の2024年4月20日2面の記事を紹介します。

[はじめに] 

 農林水産省によりますと、2022年のコメの総産出額は1兆3946億円でした。市町村別の推計産出額の公表が始まった2014年に比べて3%減少しました。同省は今後も主食用米の国内需要は減少を続け、2040年には、現在よりも3割減ると予測しています。

一方、2022年の市町村のコメの推計産出額を2014年と比べてみますと、全1718市町村のうち457市町村で増加しました。増えた市町村数の割合を都道府県別にみますと、香川県が88%で最も高く、秋田県(76%)、鳥取県(74%)が続きました。

増加した自治体をみますと、中長期で需要が減少傾向の主食用米では、新ブランドの導入や農薬の使用削減などを進めて、付加価値を向上させています。今後も新用途の開発や輸出拡大もにらんで、加工用米の作付けも増やしたいとしています。

 

[秋田県大潟村、横手市]

 市町村別の増加額が、全国2位の秋田県大潟村は、今や国内の大規模農業の代表格として知られています。近年は主力の「あきたこまち」に加え、加工品向けの生産を増やしており、現在は全体の5割程度を占めています。米菓メーカーなどに原料として供給するほか、健康志向を背景に需要が増えるグルテンフリー(注1)のコメ粉バスタ(注2)なども生産しています。

 効率化による生産拡大にも前向きです。「乾田直播」という栽培手法に注目しています。畑状態の田にコメの種子をまき、苗となった段階で水を入れることで育苗の手間を省きます。労働時間が25%、生産コストも1割減るとされています。

 「あきたこまち」の産地で増加トップの秋田県横手市は新品種「サキホコレ」の普及にも力を入れています。農薬の使用を半分以下に抑える「特別栽培」を2023年に本格導入しました。生産履歴の開示なども通じて、安全な農産物としての「ブランド構築(注3)」に挑みます。市場の評価は高く、価格アップや契約量の拡大につながっています。2024年度は、同品種の作付け面積を県全体の5分の1に広げる計画です。

 

[宮城県登米市]

 5位の宮城県登米市は、海外市場に熱い視線を送ります。JAみやぎ登米はコメ輸出に力を入れる大手卸会社の神明と連携しました。2023年度の「ひとめぼれ」などの輸出量は同市産の6%にあたる3500トンに増えました。2024年度以降も4000トンを計画しています。

 

[香川県]

 「うどん県」として知られる香川県は、降雨量の少なさなどからコメの栽培に向かないとされてきました。県は挽回に向けて地域の気候に合った新品種「おいでまい」を開発しました。食味ランキング(注4)でも最高ランクを通算6回獲得しているのです。

 香川県などは、「おいでまい」の取引価格が県産コシヒカリと大きく変わらないうえ、育てやすいことなどを農業者らにアピールして、生産の拡大を目指しています。2022年の作付面積は1280ヘクタールと本格栽培が始まった2013年の2倍に広がりました。県は学校給食にも活用するなど「県内消費の拡大を通じて認知度やブランド力(注3)を高めたい」と意気込んでいます。


[この項のまとめ]

 農業関連のシンクタンク(注5)である農政調査委員会の吉田俊幸理事長は、「人口が減る以上、国内のコメ消費の長期的な減少は避けられない」と述べています。また、同氏は「産出額が増えている自治体は、加工品を含めた需要動向をしっかりと把握しているはずなのです。国や自治体も生産者とともに、輸出を含めた将来のコメの姿を見極めたうえで、支援策を充実させていくことが、結局きわめて重要なのです」と強く指摘しています。日本経済新聞2024年4月20日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。


[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2024年4月20日の日本経済新聞の朝刊2面には、三つの図表が記載されていました。①コメ産出額が増えた市町村の割合(2022年、2014年比)。(出所)農林水産省「市町村別農業生産額(推計)。」②増えた市町村のランキング。➂農家数は50年で6分の1に。


[図表1]

図表1(注6)には、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、これは2022年の「コメ産出額が増えた市町村の割合(2022年、2014年比)」と題した図表でした。ここでは、2022年においてコメ産出額の増えた市町村の2014年と比べた割合(%)を、都道府県ごとに集計しています。この増加率を日本列島の地図上で、黒と黄緑色と灰色で塗り分けて示していました。

各都道府県別の増加率について、その値の最も大きい処から小さい処へと5段階にわけ、日本列島の地図を色分けして示していました。

その色分けは以下です。①増加率の最も高い処60%以上(黒色)。②増加率40%以上60%未満(黒色の斜線)。➂増加率20%以上40未満(黄緑色)。④20%未満(淡い黄緑色の斜線)。⑤0%(灰色)。

 

ここで各都道府県において、(2014年比)コメ産出額の増えた市町村の割合が最も高かった処(60%以上)は、黒色に塗ってあった処でした。これに該当する地域は、第1位の香川県、第2位の秋田県、第3位の鳥取県、それに福島県、富山県、群馬県、山梨県が続いていました。合計7カ所でした。ここがコメ産出額増加市町村の割合が最も高い地域です。これが明確になったのが、この分析の一番大きな収穫でした。

 

コメ産出額増加市町村の割合が、次ぎに高かった処(40%以上60%未満)は、黒色の斜線で示した処(第2群)でした。宮城県、山形県、新潟県、石川県、三重県、兵庫県、島根県、広島県、佐賀県、愛媛県の10カ所でした。この集団が、先頭集団を、どんどん追ってくれるのが、とりあえず特に重要なのです。

 

さらに、その次に高かった処(30%以上40%未満)は、茶色ぽい黄緑色に塗った処(第3群)でした。それは北海道、青森県、岩手県、栃木県、長野県、静岡県、愛知県、滋賀県、京都府、岡山県、奈良県、福岡県、徳島県、高知県で、14カ所でした。この14カ所が、これから急速に伸びて先行の2集団(第1、2群)に続いてほしいのです。

 

ここまで、コメ産出額の増えた市町村の割合が高かった上位3群の合計は、31カ所で、全国の67.4%でした。この67.4%がコメ産出額の増大を進めている「先導者」であると、私は、考えています。

 

さらに、次の段階に進みますと、このグループは、コメ産出額の増大を進めている人達の中で、増加率が最少だったグループ(第4群)です。これは黄緑色の斜線で記されていました。

この第4群に入っている自治体は以下です。これは岐阜県、福井県、山口県、鹿児島県、沖縄県で、5カ所でした。

 

最後の第5群は、コメ産出額増大活動がまだ始まっていない地域です。増加率0%です。増加率0%の地域は、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、和歌山県、大分県、長崎県、宮崎県、熊本県の11カ所でした。首都圏と大阪・九州でコメ産出額の増大活動の出発が遅れていました。

 

 

この各群を眺めていて感じたのは、以下のことです。

まず、この結果を一瞥して驚いたのは、首都圏の4都県(東京、埼玉、千葉、神奈川)と大阪が、揃って「ゼロ」であることでした。でも、これが当然であることは、すぐ解りました。これらの区域は、コメの主要な生産地ではないのです。

でも、今まさに最重要な改革テーマになっている「日本のコメ作り技術の改革や品種改良」などの推進の多くは、首都圏各地の人達が担っているのです。日本各地のコメ作り関係者は、この人たちの活動に、もっと光を当て、その背を押さねばなりません。

 

一方、九州の不調には、私は、とても心配しています。九州では大分、長崎、宮崎、熊本の4県が、そろって「ゼロ」なのです。これには、私は驚きました。

 

でも、香川は大奮闘でした。新品種「おいでまい」を先頭にたてて、その生産量の拡大に、大きな成果をあげていました。その作付け面積は2013年の2倍に拡大しました。食味のランキングでも、日本最高ランクを6回も獲得しているのです。西南日本にも、次世代を担う先導者がいたのです。今「ゼロ」の4県も負けずに頑張ってください。日本各地のみなさん、この立ち遅れた地域を、みんなで力を合わせて応援しましょう。

日本経済新聞2024年4月20日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。

 

 

[図表2]

図表2(注7)は「増えた市町村のランキング」と題した図表でした。

ここでは、各都道府県のコメの産出額の増大について、その増大率が高い市区町村を、それが高い順に第10位まで記していました。これを以下に書きます。

 

          図表2 「増えた市町村のランキング」

 順位 市区町村(都道府県・群)  2022年      2014年からの増加額

  1  横手市(秋田県、第1群)  119.5(億円)    24.2(億円)

 2  大潟村(秋田県、第1群)  100.7        15.1

 3  鶴岡市(山形県、第2群)  121.0        12.0

 4  名寄市(北海道、第3群)   45.3         8.2

 5  登米市(宮城県、第2群)  107.0         8.1

 6  大仙市(秋田県、第1群)  123.1         8.0

 7  南相馬村(福島県、第1群)   8.6         7.9

 8  上越市(新潟県、第2群)  127.8         7.8

9  栃木市(栃木県、第3群)   42.9         7.5

10  郡山市(福島県、第1群)   71.7         7.4

 

 私は、長い間、日本の社会と経済の改革についての研究報告を書いてきました。その中で秋田県は、いつも、人口減少が最も著しい地域として、多くの人々が、最も心配していた地域でした。

 ですから、秋田県の企業及び地域の人々は、この苦境から脱却しようと、大変な努力を重ねていたのです。この秋田県が、とうとう、未来に向けて社会や経済を改革する活動において、先導者になったのです。

 

 市町村別の増加額が、全国2位の秋田県大潟村は、今や、国内の大規模農業の体表格として知られています。近年は主力の「あきたこまち」に加え、加工品向けの生産を増やしており、現在は全体の5割程度を占めています。米菓メーカーなどに原料として供給するほか、健康志向を背景に需要が増えるグルテンフリー(注1)のコメ粉バスタ(注2)なども生産しています。

効率化による生産拡大にも前向きです。「乾田直播」という栽培手法に注目しています。畑状態の田にコメの種子をまき、苗となった段階で水を入れることで育苗の手間を省きます。労働時間が25%、生産コストも1割減るのです。

 「あきたこまち」の産地で増加トップの秋田県横手市は、新品種「サキホコレ」の普及に力を入れています。農薬の使用を半分以下に抑える「特別栽培」を2023年に本格導入しました。生産履歴の開示なども通じて、安全な農産物としての「ブランド構築(注3)」に挑みます。市場の評価は高く、価格アップや契約量の拡大につながっています。2024年度は、同品種の作付け面積を県全体の5分の1に広げる計画です。日本経済新聞2024年4月20日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。



[図表3]

図表3(注8)は「農家数は50年で6分の1に」と題した図表でした。この図表には、 上段と下段に二つの図表が書いてありました。上段は折れ線グラフで下段は棒グラフです。

 

上段は「1965年から2022年にかけでのコメの産出額の折れ線グラフでした。そのグラフのために右側縦欄には、産出額(1~4兆円)の「産出額(兆円)」が記してありました。また、下欄には「1965年から2023年まで」の(年)が記してありました。この縦横軸を用いて「2022年にかけてのコメの産出額」を示す折れ線グラフが記されていました。

この産出額の推移では、1965年に1.8兆円だった産出額は1985年までには4兆円にまで急上昇し、ここから下降に転じ、2022年の1.5兆円にまで減少しています。なお、産出額の折れ線グラフは、途中まで右肩上がりで、その後減少に転ずる「山型」をなしています。

 

また、下段は、1965年から2022年までの「水稲作付け農家数(全国)」を示した棒グラフでした。そのグラフのための左側縦欄には、「0~500万戸」と農家数(万戸)が記されていました。また、下欄は、上段と共通で「1965年~2022年」の(年)でした。この縦横を用いて「水稲作付け農家数(全国)」の棒グラフが書かれていました。

農家数は1965年の500万戸から2022年の80万戸への右肩下がりの減少でした。黄緑色の棒グラフが、右肩さがりに綺麗に並んで記されていました。日本経済新聞2024年4月20日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。



 

(注2)「コメ粉バスタ」は、コメ粉を使ったパスタのことを指す。コメ粉パスタは、小麦粉のパスタとは異なる特徴を持っている。以下の特徴とメリットがある。(1)グルテンフリ:コメ粉パスタは、小麦粉を使用しないため、グルテンアレルギーを持つ人にも適している。(2)もちもちとした食感: コメ粉パスタは、小麦粉のパスタとは異なる食感を楽しめる。(3)ヘルシー: コメ粉には食物繊維やミネラルが豊富に含まれており、健康的な選択である。(4)風味: コメ粉自体に独特の風味があり、和風ソースやトマトソースとの相性が良い。パスタは、マカロニ、ペンネ、スパゲッティ、ラザニアなどの、イタリア語での麺食品の総称である。

 

(注3)ブランド構築ブランドとは、生活者にとって「独自の役割」を持ち「感情移入」が伴ったモノやサービスである。ブランド構築とは「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」独自性と感情移入を形創っていく取り組みを指す。その成果は「衝動買い頼み」を越えた「指名買い」である。ブランド力とは、ブランドの力。


(注4)食味ランキングは、おいしいおコメを見極める手段である。これは一般社団法人日本穀物検定協会が、年に1回発表するもので、炊いた白米を実食して、特A(とくにすぐれている)~B'まで、5段階に分けて評価するものである。

 

(注5) シンクタンクとは、さまざまな領域の専門家を集めた研究機関である。社会開発や政策決定などの問題や経営戦略などについて,調査・分析を行い,問題解決や将来予測などの提言を行う。

 

(注6)日本経済新聞2024年4月20日の朝刊2面に掲載された図表1、①コメ産出額が増えた市町村の割合(2022年、2014年比)。(出所)農林水産省「市町村別農業生産額(推計)。」


(注7)日本経済新聞2024年4月20日の朝刊2面に掲載された図表2、②増えた市町村のランキング。


(注8)日本経済新聞2024年4月13日の朝刊2面に掲載された図表3、➂農家数は50年で6分の1に。


 

(1)日本経済新聞、2024年4月20日(2面)。

[付記]2024年4月29日:.

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