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早成樹種の造林

  • honchikojisitenji
  • 2024年1月22日
  • 読了時間: 4分

これは昨年12月の福井県福井市美山での中国桐の造林地です。

スギやヒノキ、カラマツなどの造林では、収穫期が40年や50年以上とするのが普通です。それは、建築材を収穫物として採ろうとしたときに、胸高直径で30㎝くらい、樹高で20mくらいあると、長さ3~4mの造材で丸太が3~4本取れ、うまく取れれば、3本目までは建築材(下から中目材、柱材、母屋材)にすることが見込めるからです。

しかし、途中の間伐で得られる木材を売ったとしても、そのように長い期間、造林投資の回収にはかかるため利回りが低く、また気象害や病虫獣害、山火事などのリスクもあるので、造林投資は割に合わないと考えられ、間伐を繰り返し再造林をしない森林施業を選択するか、再造林を放棄してしまうことを選択することになります。

間伐を繰り返して木を大きくすることには将来の可能性を感じがちですが、間伐の伐出コストが嵩むこと、前述の被害リスクの上に太くなった木が高く売れるかどうかわからないというリスクもあり、これも採算を取れるかどうかわからないのです。とりわけ、太い木は値段が高いと思われがちですが、これは太い木が天然木で希少価値があったからというのが最も大きい理由であると考えられ、これからは太い木と言っても、今ある造林木がみんな一緒に太くなったものであり希少価値は期待できません。また、太い木を必要とする寺社や城郭などの大規模建築の需要がどれくらい見込めるかは正直分かりません。ただし、枝打ちなどの施業をしていなくても、太ければ無節の材が取れる割合は高くなるかもしれません。ですから、どのような森林を維持するかは森林の経営者の判断次第です。

とは言え、このように先行きが不透明で、経営の後継者がちゃんといればまだしも、森林を経営し続けることはあまり利益にならない状況なので、短期間で投資を回収できる造林が考えられないかを考えることも必要になっています。早く大きくなる(材積が増加する)ということで二酸化炭素の吸収固定量を評価して金銭価値を見出すことができることも可能になってきました。

スギなどでも30年くらいで収穫できる太さになるエリートツリーを植えるということが一つですが、温帯性の早生樹種と言われる早く太くなる木を植えることも選択肢になるかもしれないということです。バイオマス燃料材として7年くらいの収穫期間で回すヤナギ類、コウヨウザン等の造林に取り組む地域も出てきています。家具用材や合板用材として10年~25年の収穫期間で考えられているセンダンやチャンチン、テーダマツ等の造林も行われ始めています。

写真に掲げた中国桐もその一つです。日本の桐も、地域によっては子どもが生まれたときに植えて結婚時(20年前後)に伐採収穫し、新世帯のための桐の家具などを作るといったことも行われていたと聞きます。この中国桐は、それ以上に早い成長をする木として期待されています。植栽後1年で大きいもので樹高5mになっています。バラツキが大きく、小さいものでは1mくらいです。定かな用途はまだないようですが、日本の桐と同等の材の性質を持つことから5~6年で内装材や家具用材などにすることが期待されています。以前は広葉樹は40㎝以上の太さを求められるのが普通でしたが、今は幅はぎなどの技術により使える材の太さの下限も小さくなっています。

写真のように梢端が折れている木がかなり目につきますので、風か落雪などの衝撃で折れやすいのは課題でしょう。苗木の値段も高いそうですが、値段よりも成長にバラツキが大きいのが気になります。育種がなされた苗でないと安定した成績が得られないからです。また、一般に早生樹と言われる樹種は養分要求が大きく、施肥に係るコストが嵩むことも考えなければなりません。ただし、コストについてはそれを賄うだけのリターンがあれば大きな問題ではありません。

先に掲げたもののほかにも色々解決しなければいけない課題はあるでしょう。しかし、このように速く回転させることを狙った造林は、人口減少・高齢化していく地域において、地域創造のために森林資源の利用を考えるに当たって取り組む価値のある問題だと思います。ぜひ、このような試みが取り組みやすくなるように行政や企業の支援があればと思います。

 
 
 

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