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[日本再生][地域創生] 泊食分離 人手不足に解 2024年11月11日 島根県の温泉 稼働率上げ客数増 「夕食は外」広がる

  • honchikojisitenji
  • 2024年11月12日
  • 読了時間: 9分

続木 碧(つづき あお)  2024年11月(研究報告№128)                                                                                                          

「巻頭の一言」

 訪日客の増加で宿泊施設の需給が厳しくなるなか、人手不足を独自の工夫でカバーする地域が増え始めています。島根県では宿泊と飲食の提供場所を分けて、必要な人手をカバーする地域が増え始めました。

島根県では、さらに「泊食分離」を本格導入する温泉地が登場し、新型コロナウイルス禍前より客室稼働率を上げています。ここでは、地域の飲食店との連携を深めたり、異業種で人手を融通したりと、新たな挑戦が広がってきています。2024年10月19日、朝刊、2面記事(高尾泰朗)を参照・引用して記述。

 

[日本再生][地域創生] 泊食分離 人手不足に解 島根県の温泉 稼働率上げ客数増 「夕食は外」広がる

 

 

「日本再生」「地域創生」 泊食分離 人手不足に解 島根県の温泉 稼働率上げ客数増 「夕食は外」広がる

 

 

ここでは、日本経済新聞の2024年10月19日、朝刊2面の記事を紹介します。

 

 

[はじめに]

 観光庁によりますと、2024年8月の延べ宿泊者数は6611万人で、コロナ前の2019年8月より4.5%増えました。35%増の1281万人増となった外国人が牽引しています。一方、宿泊施設の平均客室稼働率は2024年6月までの1年間で3.3ポイント低下しました。全国38都道府県で、1年前を下回りました。

 ニッセイ基礎研究所の保田拓斗研究員は「人手不足が稼働率低迷の大きな要因である」と指摘しています。2024年6月の宿泊業従事者は2019年6月より2%増えました。

延べ宿泊者は10%伸びましたが、清掃スタッフなどが足りず、客室の一部を眠らせている事業者は多いのです。2024年10月19日、朝刊、2面記事(高尾泰朗)を参照・引用して記述。

 

[島根県・江津市]

島根県は、2024年6月までの1年間の宿泊施設の平均稼働率が、コロナ前より1.1ポイント向上しました。人手不足は全国と同じですが、県西部の江津市にある有福温泉では「泊食分離」で苦境打破を目指しています。「宿は宿泊機能に特化しなければ成り立たなくなる」と、2021年にイタリア料理店「有福ビアンゴ(注1)」を開いたイベンストス(広島市)の川中英章代表は強調しています。江津市や地元金融機関の協力も得て開始した同店のコンセプトは、「温泉街のセントラルキッチン(注2)」でした。

一般的な温泉旅館は朝夕食付きが基本ですが、食事提供に人員を割くと客室のフル稼働が難しいのです。同温泉では、有福ビアンゴの開店後、夕食を同店に任せて、素泊まりや朝食プランで営業する宿が増えました。

 当初から泊食分離を採用する施設も誕生しました。同温泉全体の宿泊者は2023年に1万人を超えました。2019年より6割増えたのです。川中氏は「今後も新たな飲食店が開業する見通しで、食目当ての来訪者を増やして、稼働率をさらに高めたい」と話しています。

 

[兵庫県・豊岡市]

 兵庫県豊岡市の城崎温泉にある「赤石屋」は、2024年7月の改装開業を機に、夕食の提供をやめました。全14室の小規模旅館ですが、料理人の確保が難しいうえ、朝夕食の配膳を担う従業員も不足していたのです。朝食のみなら従来の3分の2程度の人員で運営できるのです。

 城崎温泉では素泊まりに特化した施設や新たな飲食店も増えています。城崎温泉観光協会は公式サイトで飲食店の空席状況などの公開を始めました。赤石屋を運営する今津一也氏は「夕食無しであれば客室の稼働を増やせる旅館は多いのです。飲食店にもチャンスとなり、地域全体の活性化にもつながるのです」と力を込めて語っています。

 

[北海道札幌市・ニセコ地域]

 稼働率が5.4ポイント下がった北海道では、業界横断の対策が動き出しました。札幌市内のホテルでは、2023年~2024年の冬期に、冬期の婚礼関連企業から、延べ100人以上の従業員を受け入れ、フロントなどで働いてもらいました。冬期の札幌は婚礼需要が減るのに対して訪日客が増えるというギャップが増えますので、これを逆手に取ったのです。

 スノーリゾート地(注3)のニセコ地域では、今冬から道職員が副業として観光業に関わる取組みが本格的に始まります。「ベッドメーキングや朝食提供などの人手が不足している」という地元の要望に応えたのです。

 

[この項のまとめ]

 北海道大学の石黒侑輔准教授は「観光業の人手不足の解消は容易ではないのですが、稼動率が高まれば、給与など従業員の待遇向上につながる可能性もあるのです」と指摘しています。そのためには、「企業などの旅費規定の見直しや出張需要の取り込み、地域一帯の連泊促進などが重要になる」と話しています。2024年10月19日、朝刊、2面記事(高尾泰朗)を参照・引用して記述。

 

 

[まとめ]

この研究報告の執筆で、参照・引用した日本経済新聞、2024年10月19日の朝刊、2面記事(高尾泰朗)には、図表が3枚記載されていました。①客室稼動率が高まった自治体。(注)2023年7月~2024年6月の客室稼動率の平均を2018年~2019年同期と比較。出所は観光庁。②各地で人手不足対策が進む。➂人手不足が宿泊施設の重荷に。(注)1919年6月を100として、各年の同月の数値を数値化。出所は宿泊業従業者のデータが総務省。延べ宿泊者が観光庁。

 

 

[図表1]

図表1(注3)が、2024年10月19日の日本経済新聞朝刊紙上に、日本列島の地図として記載されていました。この図表は、「客室稼働率が高まった自治体」と題した図表でした。この図表では「客室稼働率が高まった自治体」について、その「増加」だけでなく、「低下」も含めて青色系ならびに黒色の色彩で塗り分けて示していました。

ここでは客室稼働率の増加と低下に関して、そのランキングを3段階に分けて記載しています。それを以下に記します。

2022年7月~2024年6月の客室稼働率の平均を、2018年7月~2019年6月と比較しました。データの出所は観光庁です。

 その現状の状況を、以下のように整理しています。そして、3ポイント以上増加した地域を、最も増加の大きかった地域として、①第1群(黒色)としました。②同増加が次に大きかった「3ポイント未満の増加だった地域」を第2群(濃い黒茶色の斜線)としました。➂全国47都道府県の残りの全て(47-[2+6]=39カ所)は「低下」としました。これが第3群です。

 

 

第1群には、2023年7月~2024年6月の客室稼働率の2018年7月~2019年6月と比較した増加率が、3ポイント以上増加していた地域を、客室稼動率の増加が最大だった地域(第1群、黒色)と設定しました。それは全国1位の滋賀県。第2位の富山県の2カ所でした。

 

第2群は、その増加率が全国第3位の栃木県とこれに続く新潟県、石川県、長野県、島根県、高知県の6カ所としました。

 

第3群。全国の47都道府県から、第1群~第2群の合計8カ所を除いた39カ所(全体の82.9%)を第3群としました。実は全体の8割以上の第3群が客室稼働の「低下」だったのです。すなわち、このプロジェクトで改革の手がついていない地域は、全国的に低下の状態ですので、全国の圧倒的な多数の自治体が低下組なのです。この日本地図は、数が最も多い第3群の地域を青色に染めていましたので、全体が、青一色の地図に見えたのです。

 

この活動を熱心に進めた島根県江津市の有福温泉では、温泉の宿泊者は2023年に1万人を超えました。2019年より6割も増えたのです。このような成功者が出たことは、日本の未来を考えるとき、素晴らしい成功ですが、全国的には、まだ、始まったばかりです。日本地図を概観してみますと、くの字に曲がった日本列島の曲がり角の日本海側に、

この黒っぽく染まった地域が偏在していました。これから国を上げ、国民の総力を結集して、この活動を強力に進めなければなりません。

 

 

[図表2]

  図表2(注4)は「各地で人手不足対策が進む」と題した図表でした。これを以下に記します。

 

図表2 「各地で人手不足対策が進む」」

 

地域                 取組み

島根県江津市、山形県鶴岡市等  温泉街で旅館の代わりに食事提供を担う飲食店を整備

 

滋賀県彦根市、栃木県日光市等  客室を減らしつつ、高付加価値化で、収益力を向上

 

札幌市             大型ホテルが他業種がら短期出向者を受け入れ

 

北海道ニセコ地区        道職員による宿泊施設での客室清掃等の副業を解禁

 

 

 ここでは各地が地域の特性に合わせて工夫して、人口減少の壁に対処しています。なお、山形県鶴岡市、滋賀県彦根市、栃木県日光市については、ここで引用した文献では、細かい説明はありませんでしたが、私は今後、各所の資料を良く調べて、これを整理しておきたいと思っています。

 

 

[図表3]

 図表3(注5)は、「人手不足が宿泊施設の重荷に」と題した図表でした。この図表の左欄は、20~120と、宿泊業従事者数ならびに延べ宿泊者数の「人数」が列記されていました。また、下欄には2019年から2024年までの6年間の「年」が記してありました。この縦横を用いて、各年の同時期における宿泊業従事者数ならびに延べ宿泊者数の「実人数」を、黄褐色の折れ線グラフで記してありました。なお、このデータの出所は、宿泊事業の従業者数は総務省、延べ宿泊者数は観光庁でした。

 

このうち、延べ宿泊者数(観光庁データ)は、2019年の100から、2020年への1年間で、38へと急落しました。そして2021年への1年間では42へと僅かに上昇し、ここから2023年までの2年間で102へと急回復しています。すなわち、延べ宿泊者数は、2019年から2023年までの間に急落し急回復しているのです。そして、2024年には、さらに、110になっています。

 一方、宿泊業従事者数(総務省データ)は、2019年から2020年にかけて100から90に下落し、ここから2024年に向けて徐々に上昇し、2024年には102に回復しています。

 

 この2本の折れ線グラフは、総務省のデータをみても、観光庁のデータを見ても、2024年の時点では回復基調にあり、今後も人手不足の重荷を克服して好転していくと期待されているのです。でも今後の確かな予測は、現状では、まだ良く判りません。宿泊施設が人手不足の重荷を乗り越えて行けるかどうかは、日本のこれからの未来にとって、極めて重要なことですから、日本国も企業も日本人も、注意深い観察力を合わせて、頑張って行かねばならないのです。

 

 

(注1) イタリア料理「ビアンゴの語」。イタリア料理ではトマトを使った赤いソースがよく登場しますが、「ロッソ」は赤いトマトソースを使ったピザやパスタ料理の形容詞に用いられます。一方、「ビアンゴ」の語は、白いソースのときに使われますが、クリームソースなど、それ以外の無色のパスタソースもビアンゴと称されるソースです。

 

(注2)セントラルキッチン(central kitchen、集中調理施設)とは、複数のレストラン学校病院などの大量に料理を提供する必要のある外食産業施設調理を、一手に引き受ける施設である。

 

(注3)日本経済新聞2024年10月19日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。

図表1①客室稼動率が高まった自治体。2023年7月~2024年6月の客室稼働率の平均を2018年~20019年同期と比較した。出所は観光庁。

 

(注4)日本経済新聞2024年10月19日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。

図表2 ②各地で人手不足対策が進む。

 

(注5)日本経済新聞2024年10月19日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。

図表3 ➂人手不足が宿泊施設の重荷に。(注)2019年6月100として、各年同月の数値を指数化。出所は宿泊事業者数が総務省。延べ宿泊者数が観光庁。

 

 

 

 

(1)日本経済新聞、2024年10月19日 朝刊(2面)。

[付記]2024年11月11日:

 

 
 
 

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