top of page

[日本再生][地域創生]工業用水、老朽化に焦り 2025年1月20日  財源確保へ静岡県、官民で管理連携 半数が耐用年数超え

  • honchikojisitenji
  • 1月21日
  • 読了時間: 10分

 

続木 碧(つづき あお)  2025年1月(研究報告№135)

                                                                               

 

「巻頭の一言」

 地域経済を支える工業用水の老朽化対策に、力を入れる自治体が広がっています。法定耐用年数を超えた水道管は2023年度に、ほぼ半数になり、漏水で工場の創業に支障を来すケースも出てきています。改修費の捻出が大きな課題で、静岡県は官民連携を通じての運営効率化に乗り出しました。2024年12月21日、日経朝刊、2面記事(杉本耕太郎)を参照・引用して記述。

 

 

[日本再生][地域創生] 工業用水、老朽化に焦り 財源確保へ静岡県、官民で管理連携 半数が耐用年数超え

 

 

「日本再生」「地域創生」工業用水、老朽化に焦り 財源確保へ静岡県、官民で管理連携 半数が耐用年数超え

 

ここでは、日本経済新聞の2024年12月21日、朝刊2面の記事を紹介します。

 

 

「はじめに」

工場の操業に不可欠な工業」用水は、「産業の血液」と呼ばれています。飲用水ほど浄化の必要がないため、上水道より料金が安いのです。全国148事業者のうち146は自治体が運営しています。法定耐用年数の40年を超えた水道管の割合(老朽化率)は、2023年度に49.9%と上水道の約2倍で、経済産業省は30年後には70%以上になる可能性があるとみています。

水道管は実際には60年程度使用できるとされていますが、近年は経年劣化による漏水が各地でおきています。取水施設などの老朽化も深刻で、2022年に発生した愛知県内の漏水では、トヨタ自動車などの生産に影響がでました。一方で大量の水を使う半導体工場などの地方誘致が広がっており、設備の若返りと給水の安定が急務になっています。

 

[都道府県別老朽化率]

都道府県別に2023年度の老朽化率を5年前と比べると、石川県が5.6ポイント低下と最も改善しました。秋田県、神奈川県が、これに続いていいます。石川県能美市は8.9ポイント下げました。1970年代に整備したエリアを中心に改修し、老朽管ゼロにしました。北海道もラビダス(注1)の半導体工場向けに排水管を整備すると同時に、既存管の計画改修も進めて老朽化率を下げました。

 

[石川県能美市・鳥取県鳥取市]

老朽化対策の大きな課題は改修費の確保です。経産省は全国で必要な今後の改修費は年平均1000億円と試算しています。

工業用水は税金に頼らず水道料金収入で運営経費をまかなう独立採算を原則としています。石川県能美市は地方債を発行して改修資金を調達し、今後の料金収入で返済する計画です。

資金確保には、料金の引き上げも選択肢ですが、立地企業の負担増への配慮から8割の自治体が、将来の改修費を料金に反映していないのです。

財政難で維持が難しくなる自治体もあります。鳥取市は事業そのものを廃止しました。料金を抑えながら運営を維持するには、民間活力やデジタル技術(注2)の活用による効率化が欠かせないのです。

 

[静岡県富士市]

静岡県は単独の老朽化率が8.5ポイント上昇の68.7%と全国平均より高いのです。危機感は強く、2024年8月には、「管理・更新」の一体マネージメントを、工業用水で初めて採用しました。全国的には企業に経営権を渡す「コンセッション方式(注3)」を採用するケースもあるのです。でも、自治体の裁量権が小さいことなどへの懸念もあって広がりは乏しいのです。しかし、新方式は料金聴取など一定の権限が残り、比較的取組みやすい官民連携手法とされています。

静岡県富士市内で新ポンプ場の整備や浄水場運転管理を、大豊建設などの企業グループに、2030年までに包括委託します。施設の遠隔管理など民間の効率的な経営手法を導入し、県の財政負担は17%減る見込みです。県の担当者は「今後は莫大な更新費用も見込まれるだけに、経費の徹底削減が不可欠になるのです」と話し、その上で、「2030年度以降の本格改修もにらみ「連携の経験を積みたい」と言っています。

 

[茨城県]

茨城県は、水道量検針を自動化できるスマートメーター(注4)の活用を始めました。従来の手作業に比べて、県や企業が負担する経費は10~20年間で1億6000万~3億3000万円ほど削減できると推定しています。

 

[この項のまとめ]

青山学院大学の山口直也教授は、「老朽化の解決には、中長期での値上げは避けられそうにありません」と述べています。その上で「自治体も優先順位をつけた効率的な改修や水を使う工場の誘致、需要に対して設備が過大な場合の規模縮小などを進める必要があるのです」と強調しています。2024年12月21日、日経朝刊、2面記事(杉本耕太郎)を参照・引用して記述。

 

 

[まとめ]

この研究報告の執筆で参照・引用した、日本経済新聞、2024年12月21日の朝刊、2面記事(杉本耕太郎)には、図表が3枚記載されていました。①工業用水の老朽化率低下度。(注)2023年度の水道管老朽化率を5年前と比較。②施設規模が大きい自治体。(注)労働省資料から集計。➂老朽化率は上水道の2倍。(注)労働省資料から集計。

 

 

[図表1]

図表1(注5)は、2024年12月21日の日経新聞紙上に、日本列島の地図として

記載されていました。この図表は「工業用水の老朽化率低下度」と題した図表でした。この図表では、2023年の水道管の老朽化率を5年前と比較したものです。下記の5群に分けて、茶色系の色彩を中心に塗り分けて記述していました。

(1)  低下(黒色、第1群)。

(2)  変わらず(灰色、第2群)。

(3)  5ポイント未満の上昇(淡い茶色、第3群)。

(4)  5ポイント以上15ポイント未満の上昇(濃い茶色の斜線、第4群)。

(5)  15ポイントの上昇(濃い茶色、第5群)

(6)  工業用水なし(白色、第6群)。

 

ここで使用したデータは、総務省「地方公営企業決算状況調査」から、都道府県別に集計しています。山梨県、長野県、奈良県は「工業用水なし」です。

 

 

この第1群から第5群の地域の姿を示します。

 

第1群のデータは、2023年度の工業用水の老朽化率を、5年前と比較して低下している地域を、「低下」黒色(第1群)としました。全国で老朽化率の低下第1位の石川県、第2位の秋田県、第3位の神奈川県、これに続く、栃木県、和歌山県、鳥取県、熊本県の7カ所が第1群でした。

 

第2群は、工業用水の「老朽化率の低下」ではなく、「変わらず」と呼んでいる処です。これは青森県と岐阜県・長崎県の3県でした。

 

 第3群、第4群、第5群は、老朽率の減少ではなく、増加の状況に止まっている地域で、第3群は老朽化率の上昇としては、最も小さい(5ポイント未満の上昇)の地域でした。淡い茶色に塗っています。これは以下です。

北海道、福島県、茨城県、東京都、富山県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、宮崎県、沖縄県、愛媛県、香川県の16地域でした。

 

 第4群は、老朽率の上昇が二番目に小さい地域(5ポイント以上の15ポイント未満の上昇)で、この地域は以下です。

 群馬県、埼玉県、千葉県、静岡県、滋賀県、島根県、福岡県、徳島県、高知県の9地域でした。

 

 第5群は、老朽率の上昇が最も大きい地域(15ポイント以上の上昇)でした。これは以下です。

 岩手県、宮城県、山形県、新潟県、福井県、山口県、佐賀県、大分県、鹿児島県の9県でした。

 

 第6群は「工業用水なし」の地域でした。これは、山梨県、長野県、奈良県の3カ所(白色)でした。

 

この調査で工業用水施設の老朽化の実情がわかりました。この調査で減少しているのは、全国47都道府県の中で、7県(全体の14.9%)しかありませんでした。残りの85.1%は「変わらず」「増加(上昇)」「工業用水なし」です。

 

このプロジェクトで、今、先陣を切っているのは、第1群の石川県、秋田県、神奈川県、栃木県、和歌山県、鳥取県、熊本県ですが、これまでの諸プロジェクトとは、一味違うメンバーです。ここで2位にいる秋田県に、私は注目しています。これまで、人口減少日本一などで注目されてきた処ですから。

 

また、以下の2群を並べてみると気になります。

「北海道、福島県、茨城県、東京都、富山県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、宮崎県、沖縄県、愛媛県、香川県」がリーダーになりそうな連中。一方「群馬県、埼玉県、千葉県、静岡県、滋賀県、島根県、福岡県、徳島県、高知県」が立ち遅れた連中です。この二つをじっと見つめていますと、いつもの分かれ方と違う姿が見えてくる気がするのです。埼玉、千葉と福岡が立ち遅れていのるのが気になります。

 

 

[図表2]

図表2(注6)は、「施設規模が大きい自治体」と題した図表でした。日本経済新聞2024年12月21日の朝刊に掲載されていた図表です。これを以下に示します。

 

図表2「施設規模が大きい自治体」

 

 順位  自治体       水道管       老朽化率     図表1の群

 1   愛知県       821キロメートル 34.5%    第3群

 2   茨城県       704       19.5     第3群

 3   大阪広域水道企業団 518       76.6     第3群

 4   千葉県       410       61.8     第4群

 5   静岡県       386       68.7     第4群

 6   三重県       361       59.7     第3群

 7   山口県       316       47.3     第5群

 8   大阪市       291       78.6     第3群

 9   岡山県       228       71.7     第3群

10   埼玉県       195       93.0     第4群

(注)総務省資料から集計。

 

 この図表では、施設規模の大きい自治体について、自治体ごとの水道管の老朽化率を規模の大きい順に並べて示しています。ここでは、図表1で整理した「工業用水の老朽化率低下度」の第1群~第6群を、この図表にも付記してみました。

 これを眺めてみますと、全国47都道府県中で最大勢力(16カ所、34%)を占める、第3群が5カ所で、最多でした。なお、ここで二番目に多かったのは第4群(9カ所)ですが、この第3群と第4群は、次のように、異なる姿として位置づけられます。第3群は「今後プロジェクトを牽引していくようになる」集団。第4群は「立ち遅れた」集団です。

 

 

[図表3]

図表3(注7)は、「老朽化率は水道水の2倍」と題した図表でした。図表の左欄には、10、20、30、40、50%と、工業用水ならびに上水道の老朽化率の数値が記してありました。また下欄には、2027年度,2019、2021、2023年度と「年度」が記されていました。この縦横を用いて、各年度における「工業用水」と「上水道」の老朽化率が記入してあり、これを繋いで折れ線グラフが書かれていました。

 

この「老朽化率」の折れ線グラフは、2017年度から2023年度にむかって、時間経過とともに、数値は増大しています。この2本の折れ線グラフのうち、「工業用水」のグラフは40~50パーセントのところに記されており、2017年度は40%でしたが2023年度には50%に達していました。一方「上水道」のグラフは15%~30%のところに記されており、2017年度は15%でしたが、2023年度には25%でした。すなわち、工業用水の老朽化は上水道の2倍以上で進行していました。

工業用水は「産業の血液」とよばれ、各地の自治体は力を入れて運営していますが、飲用水ほどの浄化の必要はないため、コスト低減の方に、さらに一層の力を入れています。そのため工業用水のほうが、「老朽化率」は高い値で進行しているのです。その点、合理的なバランスになっていると言えるのです。

 

 

(注1) ラビダス(Rapidus)株式会社は、2022年に設立された半導体製造企業である。 日本の開発力・モノづくり力を結集し、世界最先端のロジック半導体の開発・製造を目指している。 最先端の半導体製造技術を取り入れることで、ハイパフォーマンスなチップを生産する。 最終的には、国際市場において競争力のある製品を国産化することを目指す。

 

(注2)デジタル技術とはDX(デジタル・トランスフォーメーション)に関する技術のことである。デジタルトランスフォーメーションとは、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルを根本的に変革し、新たな価値を創造することを指す。単なるデジタル化やシステム導入にとどまらず、組織、プロセス、企業文化にまで踏み込んだ包括的な変革を意味する。

 

(注3) コンセッション方式(Concession)とは、ある特定の地理的範囲や事業範囲において、事業者が免許や契約によって独占的な営業権を与えられたうえで行われる事業の方式を指す。例えば、野球場やサッカー場などのスポーツ施設や、映画館などにおいて、施設の運営会社とは異なる会社が飲食店の売店などの営業許可を得たうえで、飲食物の販売を行っていることがある。こうしたケースでは、当該飲食店はコンセッションと呼ばれる。同様に、百貨店にテナントが入居して服飾などの販売を行なっているケースもコンセッションと呼べる。水道事業のような公共サービスについても、コンセッションの形態を取ることが可能である。

 

(注4)スマートメーター(smart meter)は電力デジタル計測通信機能を併せ持つ、電子式電力量計である。従来のアナログ式誘導型電力量計は、内部に配置した電流コイルと電圧コイルが円盤を駆動して回転力を発生させてメーターを更新しでいた。電子式電力量計は、電子回路電圧を電流レベルに変換する入力変換部、乗算回路、電力に比例したパルスを発生する積分回路、パルスをカウントして表示する表示部から構成されている。電圧と電流の乗算に乗算器を用い、これはアナログ乗算方式とデジタル乗算方式に区別される。電子式はネットワーク化してスマートメーターになった。

 

(注5)日本経済新聞2024年12月21日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。

図表1①「工業用水の老朽化率低下度。(注)総務省、「地方公営企業決算状況調査」などから都道府県別に集計。

 

(注6)日本経済新聞2024年12月21日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。

図表2②「施設規模が大きい自治体」。(注)総務省資料から集計。

 

(注7)日本経済新聞2024年12月21日の日経朝刊2面には、三つの図表が掲載されている。

    図表3➂「老朽化率は上水道の2倍。」(注)総務省の資料から集計。

 

 

(1)日本経済新聞、2024年12月21日 朝刊(2面)。

[付記]2025年1月20日:

 

 

 
 
 

Comments


持続的な地域の創造

©2022 持続的な地域の創造。Wix.com で作成されました。

bottom of page