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[日本再生][地域創生] 博物館 生涯学習の場に 2024年9月2日 長野県松本市「市民学芸員」養成に力 施設数20年で2割増

 

続木 碧(つづき あお)  2024年9月(研究報告№122)                                                                                                   

「巻頭の一言」

 地域の博物館が生涯学習の拠点として存在感を発揮しています。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ入館者は回復に向っており、幅広い年齢層が親しみやすい参加型のイベントなどを充実させています。長野県松本市は市全体を「まるごと博物館」とする構想に基づき、地域の文化や歴史を発進する「市民学芸員(注1)」の養成に力を入れています。日本経済新聞、2024年8月10日、朝刊、2面記事(藤井太郎)を参照・引用して記述。

 

[日本再生][地域創生] 博物館 生涯学習の場に 長野県松本市「市民学芸員」養成に力 施設数20年で2割増

 

 

「日本再生」「地域創生」 博物館 生涯学習の場に 長野県松本市「市民学芸員」養成に力 施設数20年で2割増

 

 

ここでは、日本経済新聞の2024年8月10日、朝刊2面の記事を紹介します。

 

 

[はじめに]

博物館法では歴史や科学関連の博物館のほか、美術館や動物園も「博物館」に含みます。法律の規定を満たした「登録美術館」と、これに準じる「指定施設」は計1400あり20年間で2割増えました。法的な位置付けを持たない「博物館類似施設」も4000以上あります。

文化庁の「博物館総合サイト」に2024年8月1日時点で掲載されている登録と指定施設数の合計を都道府県別に集計しました。人口10万人あたりの施設数が最も多いのは長野県(4.1)で、島根県(3.8)、富山県(3.6)が続きました。

 

[長野県松本市]

長野県松本市が2000年に打ち出した「まるごと博物館構想」は、市立博物館を中核に市内全域の文化や自然などを資料と見立てて市民が支える活動です。その中心的な活動のひとつが市民学芸員(注1)の養成で、これまでに地域の地理・歴史などの講座や野外学習に参加したものも含めて、150を認定しました。

一期生の村上さよ子さん(77)は「地元に住んでいても受講するまでは、松本の歴史をよく知らなかった」と振り返ります。現在は市内に残る昔の紙芝居を子どもたちに読み聞かせる活動などを続けています。

松本市は2023年10月、90億円をかけて市立博物館を移転新築しました。伊佐治裕子教育長は「歴史や文化を大切にする市民の意識が、都市間競争でも松本の強みになっている」と強調しています。ただ、若い世代の理解が足りてないとも感じており、「新たな博物館を気楽に訪れてもらって、地元の魅力に触れてもらいたい。」と話しています。

文部科学省によりますと、博物館の入館者は2017年度に1億4000万人になりました。文化庁は「コロナ禍前の水準に近づいている」と言っています。


[島根県浜田市]

島根県浜田市の世界子ども美術館では、「ミュージアムスクール」や「ホリデー創作活動」などを通じて、子どもの感性を養うことに力を入れています。

石本一夫美術館館長は、「来館者はシニア層まで幅広く、子どもと一緒に創作活動に取り組むことで、新たな刺激を受ける大人も多いのです」と言っています。

 

[神奈川県平塚市]

神奈川県の平塚市博物館も来館者と学芸員が一緒に研究する16種類のプログラムを提供しています。小学生からシニアまで300人以上が「古代生活実験室」に参加しています。これに参加している井上裕次さん(94)は、「古代火起こし器」の制作に取り組んでいます。正確な設計図がない状態で試行錯誤しており、「いまでは、これが生き甲斐になっている」と笑顔で言っていました。川端清倫館長代理は「資料展示以外にも、さらに幅広い活動を、市民にアピールしていきたい」と話しています。

 

[この項のまとめ]

 自治体の財政が逼迫するなか、公立博物館の運営も厳しさを増しています。日本博物館協会のアンケート調査でも、「財政面が厳しい」「職員不足」といった解答が7割を超えました。

 博物館学が専門の桜美林大学の浜田弘明教授は「厳しい運営環境だからこそ、市民から信頼を得る事が欠かせない。1人でも多く利用してもらうために、入場を無料にするのも一つの手段だと思う。ここでは、親しみやすい展示や参加型事業の充実を通じて、地域での存在感を、一層、発揮してほしい」と述べています。日本経済新聞、2024年8月10日、朝刊、2面記事(藤井太郎)を参照・引用して記述。

 

 

[まとめ]

この研究報告の執筆で参照引用した、日本経済新聞、2024年8月10日、朝刊、2面記事(藤井太郎)には、三つの図表が記載されていました。それを引用します。これを以下の①、②,➂に記します。①人口当たりの博物館数。(出所)文化庁「博物館総合リスト」。人口10万人あたりの登録博物館・指定施設の合計数。②博物館には様々な種類がある。(出所)文部科学省「社会教育調査」(2020)。➂コロナで減った入館者数は回復に向う見通し。

 

 

[図表1]

図表1(注3)には、新聞紙上に日本列島の地図が記載されていました。これは人口10万人当たりの博物館数を示す図表です。出所は、文化庁「博物館総合サイト」です。10万人あたりの登録博物館・指定施設の合計数を基にしています。

 

それは以下です。①登録博物館数4以上の地域(第1群、黒色)。②博物館数が2番目に多い値(3以上~4未満)を維持することができた地域(第2群、濃い青緑色の斜線)。➂博物館数が3番目に大きい値(2以上3未満)を維持できた地域(第3群、濃い青緑色)。④博物館数が4番目に多い値(1以上2未満)を維持できた地域(第4群、淡い青緑色の斜線)。⑤博物館数が1未満に止まった地域(第5群、灰色)。

 

まず、第1群は、博物館数を、4以上で維持出来た地域です。この第1群に入れたのは、博物館数、全国第1位の長野県(黒色で表示)の1所だけでした。

 

続く第2群には、登録博物館全国第2位の島根県・3位の富山県と、これに続く山梨県の3県(濃い青緑色の斜線)が入っていました。

 

次の第3群は、博物館数が2以上~3未満のグループ(濃い青緑色)です。このグルーブは三番目に多いグループです。このグループに入っていたのは石川県、福井県、京都府、高知県の4府県でした。

 

第4群は、このプロジェクトのグループの中で、一番大きいグループです。ここに入っている地域は以下でした。

北海道、秋田県、山形県、岩手県,宮城県、福島県,新潟県、群馬県、栃木県、静岡県、岐阜県、滋賀県、三重県、奈良県、和歌山県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、鹿児島県、沖縄県、香川県、徳島県、愛媛県。第4群は28道県でした。

 

次の第5群は、人口10万人当たりの博物館数が1未満のグルーブ(淡い青緑色)で、この人達は、この活動に立ち遅れてしまった人達です。

この第5群に入っているのは以下の地域でした。青森県、宮城県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県、宮崎県。第5群は11都府県でした。

 

 

日本各地が、今、世界の産業・社会の改革において、遅れ始めていると私は危惧しています。その中で、長野県が、県内の博物館が生涯学習の拠点として存在感を発揮するべく、様々な対策を講じて特に頑張っています。中心都市松本市の全体を「まるごと博物館」とすることを構想し、地域の文化や歴史を発進する「市民学芸員(注1)」の養成に力を入れていますが、これは誠に素晴らしい活動です。

 

長野県は、この活動ではダントツトップで、2位以下を引き離しています。2位以下の諸地域、島根県、富山県、山梨県、石川県、福井県、京都府、高知県が、トップ長野県を必死で急追していますが、これは、余程の対策を講じなければ、容易には追いつけないと、私は感じています。

ここは、急追する各地の改革の障壁をなくすために、必要な支援を徹底的につくし、先行する長野県と急追する7地区が、互いに助け合い競い合って、改革をずんずん進めていく姿を、一日も早く実現しなければなりません。

 

一方、東京、大阪、愛知など、高度化が進展している大都市では、このブロジェクトを迅速にすすめるのは、とても難しいようです。大都市であるが故の障壁が、様々あると思われます。国として地域として、この壁を打破する強力な対策が、なんとしても必要です。                                                                

 

また、神奈川県平塚市は、博物館への来館者と学芸員が一緒に研究する16種類のプログラムを提供しています。平塚市は立派な活動をしているのです。しかし、神奈川県は県全体としては、この活動に立ち遅れた第5群に入っています。そのギャップは大きいのです。結局、県内での情報交流は、あまり、順調ではないのかもしれません。

トップランナーを追う7地区にも、同様の問題点が存在すると思われます。このような「解決が必要な課題」はかなり存在すると思います。それを具体的に、一つ一つ潰して行かねばなりません。

 

 

[図表2]

図表2(注5)は「博物館には様々な種類がある」と題した以下の図表でした。

 

図表2 「博物館には様々な種類がある」

  種類           施設         入館者数

  総合博物館       151         273万人

  科学博物館        99         608

  歴史博物館       457         957

  美術博物館       442        1703

  動物園          36        1119

  水族館          43        1255

(出所)文部科学省「社会教育調査」(2020年)

 

この図表では、博物館の主な種類とその施設数・入館者数を列記しています。ここでは、日本が博物館の急拡大を目指している中で、今、実施しようとしている対策などについて、私の視点で検討してみましょう。

 

博物館を拡充させる対策について、私は以下のように考えています。

 

(1)総合博物館、科学博物館、美術博物館などを、東京・大阪などの主要都市に、計画的に予算を付けて、力を入れさせたらどうでしょうか。これらの主要都市には、人口があり、国民力があり、技術・知識のある国民が多数集積しているからです。

(2)また、総合博物館は、何を総合化するのでしょうか。様々な視点からの総合が必要です。その総合の姿が、次世代の日本の姿なのです。

(3)科学には、多彩な分野があります。その全ての分野に、日本の発展の道があるのです。この全てを明確にしていかねばなりません。

(4)そして、この次世代の世界を牽引していくには、その全て領域で専門家が必要であり、その全てで強力な国民が必要です。この全てを国をあげて育てていかねばなりません。各地のこの博物館群は、それらをまとめていく、母胎なのです。

(5)歴史博物館は、各地、それぞれの歴史を持つ「各地」に予算をつけて、力をつけさせ、競い合わせるのが良いと思います。各地がコロナ禍前に回復しただけでは不十分です。消極的です。日本の未来の成長を目指し、その中核組織を育てあげねばなりません。その人達に次世代日本の建設の牽引者になってもらわねばならないのです。

 

 

[図表3]

図表3(注6)は「コロナで減った入館者数は回復に向う見通し」と題した図表でした。

この図表の左欄には、0~1.4億人の「億人」が列記されており、下欄には2001年度から2020年度までの「年度」が記してありました。この「億人」と「年度」を用いて、2001年度から2020年度の「入館者数」の実績を記す濃い青緑色の棒グラフが書いてありました。

この「入館者数」は、2001年度の1.2億人弱から、2017年度の1.4億人へと、年々確実に増加していましたが、2020年度には、コロナウイルス禍の影響で、0.7億円に急落しました。これが棒グラフで明瞭に示されていました。

この図表では、その後の回復については記されていませんが、その後順調に回復していったことを読み取ることができます。すなわち「回復に向う見通し」が示されています。

 

 

(注1) 市民学芸員とは、地域の博物館や文化施設で活動する市民ポランティアのことである。この人たちは、地域の歴史や文化に関する知識を深め、博物館の展示やイベントの企画・運用に協力する。市民学芸員は、地域の文化資源を活用し、地域社会に貢献することを目的としている。

 例えば、袖ケ浦市では、市民学芸員養成講座を受講し、認定を受けた市民がイベントの主催や協力、展示の企画を行っている。岡山市でも、岡山シティミュージアムで市民学芸員が展示や活動に参加している。

 

(注2)日本経済新聞2024年8月3日朝刊2面に記載された図表1、①開業融資件数の増減率ランキング(2023年度)。(注)2019年度比。出所は日本政策金融公庫。

 

(注3) 日本経済新聞2024年8月3日朝刊2面に記載された図表2、②東京は件数は多いものの、伸びは鈍い。

 

(注4) 日本経済新聞2024年8月3日朝刊2面に記載された図表3、➂融資件数は増えた一方、規模は小さく。(注)平均融資額は沖縄県除く。

 

 

(1)日本経済新聞、2024年8月10日 朝刊(2面)。

[付記]2024年9月2日:

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