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放置された薪炭生産林跡を見る

  • honchikojisitenji
  • 2024年8月5日
  • 読了時間: 3分

熱海市の広葉樹林を見学してきました。標高400~450mあたりまで登ったところです。網代の街が眺望できる場所でした。昔は、薪炭を生産していた森林とのことですが、燃料革命以降、所有者からも林業者からも見向きされない山だったようです。

燃料革命によって、全国的に薪炭生産が急速に衰微しました。薪炭は、当時の森林所有者や山村にとって、大きな現金収入源だったのですが、薪炭が売れなくなってその経営が行き詰ってしまいました。労働力、行政の補助金があったところは、拡大造林という広葉樹林を伐採し、スギやヒノキ、カラマツなどを中心とした針葉樹を一斉造林することが奨励されました。山林労働者にとって、労賃という現金収入が補助金としてもらえるのです。

しかし、たぶん、熱海では超有名な温泉観光地だったこともあって、労働力がそちらに流出したでしょうし、行政も金がかかるだけの造林を進める森林行政よりも、所得に直接つながる観光行政(インフラ整備を含む)に力点があったのだと思います。そのため、薪炭生産林は放置されたまま成長し、樹木は太く大きくなったものと思います。そして、広葉樹がびっしり密に成育し林床が真っ暗になってしまい、シカの食害も激しく、雨水による土壌の流失が危ぶまれる森林だったそうです。

写真は胸高直径30㎠ほどのコナラですが、ナラ枯れの被害にあっています。カシノナガキクイムシという昆虫によって伝播されるナラ菌によって枯れる害です。

ナラ枯れは、ここ数年、関東地域の都市公園や里山などで急速にまん延して、枯れ木の倒伏によって死者が出たり、枯れ木にカエンタケという猛毒のキノコが発生するということで危険性を増しています。しかし、この写真の状況では、たぶんもっと前、10年くらい前には枯れ始めて、カワラタケやキクラゲなどが発生しているのだと思います。この森林には、このようなコナラの枯れ木が沢山ありました。枯れていることもわからずに放置され続けてきたために、ナラ枯れが山から里へまん延してきたのだと納得しました。

この森林を再生するために、上木を伐採し、照度条件を改善し、埋土種子や飛散してくる種子からの実生、根株からの萌芽の個体を発生させ、多様な樹種からなる森林を再生しようとしている現場です。シカの食害を網を張って防いだので、藪のように森林が再生しています。このような森林を管理し続けるのはひと苦労です。そのため、企業からの寄付などにより実行しているのですが、経済的に続けるインセンティブを持たせることが課題となっています。生物多様性と言っても、話題になるような絶滅危惧種があるわけでもなく、珍しい鳥獣、昆虫も見当たらないと企業も寄付する動機がなかなか続かないのが課題ではないかと思います。

 
 
 

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