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「日本再生]「地域創生」賃上げ 群馬・大分 先駆け 2024年2月12日 物価高を超す伸び実現 高崎市 中小に奨励金150万円

  • honchikojisitenji
  • 2024年2月12日
  • 読了時間: 11分

 

続木 碧(つづき あお2024年2月(研究報告№099)

「巻頭の一言」

物価上昇を上回る賃上げが、いち早く一部の地域で実現しています。2023年10月まで1年間の都道府県ごとの賃金増減率と物価変動(いずれも前年同期比)を比べたところ、群馬県と大分県で賃金の伸びが物価上昇を上回り、実質賃金(注1)が増加となりました。自治体は各地の企業が、この状態になることを目指し、中小企業の賃上げに.奨励金を出すなど、賃金の底上げを後押ししています。

日本経済新聞2023年1月27日、朝刊、1面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。

 

「日本再生]「地域創生」賃上げ 群馬・大分 先駆け 物価高を超す伸び実現  高崎市 中小に奨励金150万円

  

「日本再生]「地域創生」賃上げ 群馬・大分 先駆け 物価高を超す伸び実現  高崎市 中小に奨励金150万円

 

ここでは日本経済新聞の2024年1月27日1面の記事を紹介します。

 

[はじめに] 

厚生労働省の毎月勤労統計調査によりますと、常用労働者5人以上の事業所の一人当たりの賃金は、全国で2023年11月まで23カ月連続で増えましたが、増加率は20カ月連続で物価上昇率を下回りました。物価変動を考慮した正味の購買力を表す実質賃金は低迷し、岸田文雄首相は年初から記者会見などで賃上げの要請を繰り返しています。

 

[群馬県前橋市・高崎市]

しかし、様相が異なる地域もあります。群馬県は2023年10月まで1年間で、賃金が前年同期比5.0%増え物価上昇率の4.4%を上回りました。しかし、全国の現状は1.8%の賃金増に対して物価上昇率は4.1%の状況なのです。賃上げが物価上昇率を超えた姿を観察して、群馬県の調査担当者は、「中小企業に賃上げの裾野が広がっている」と見ているのです。

群馬銀行系シンクタンクの群馬経済研究所(前橋市)によりますと、2023年度に県内企業の78%が「賃上げするか実施予定」でした。群馬県内は高崎市が中小企業の賃上げ率に応じて奨励金を、最大150万円支給する制度を2023年7月に始めました。申請は見込みの2倍の150件に及び、3億円だった予算を2億円積み上げしました。実施年のみの補助などですが富岡賢治市長は「賃上げの原資にしてもらえる」と力を込めています。

同市内の荒瀬印刷は、制度を使って社員平均で2310円という過去最高額のベースアップに踏み切っています。定期昇給を含めた賃上げ率は4.7%で物価上昇率を上回っています。内藤賢治社長は「印刷協会が縮小するなかで生き残るには社員の提案力が問われています。賃上げでやる気を引き出したい」と本音を明かしています。

 

[大分県]

大分県は物価上昇率3.3%に対して賃金増加率が4.0%と過去最高でした。集計した95組合の3分の2の62組合でベースアップが実現しました。

農産物を栽培・加工する豊後大野クラスター(大分県豊後大野市)は、2023年6月、従業員の時給を5%を引き上げて905円にしました。大分県の時給は、結果、2023年10月から引き上げられて899円になりましたが、結局、その先駆けとなったのです。この実績は大きいのです。

大分県は、最低賃金に近い水準で従業員を雇う中小企業の賃上げに、奨励金を出す制度を2021年度に導入しました。企業が、国の助成を生かして時給を90円以上高めれば最大10万円支給するのです。県の担当者は「最近では他の自治体でも類似の制度が見られるのですが本県は先行組です」強調しています。

 

[山形県]

 山形県は、物価の上昇を反映した実質賃金が0.5%減と、もう少しでプラスになるところに迫っています。県内の最低賃金は、2023年10月、46円上がり900円となりました。国が目安とした39円を上回り、上げ幅は東北6県で最も大きいのです。

 

[岩手県・徳島県]

岩手県は、2023年4月以降の中小企業の賃上げに最大100万円を支給しました。2024年1月に開かれた徳島県版・政労使会議(雇用政策協議会)には、後藤田正純知事が始めて出席しました。岩手は最低賃金が全国で最も低く、徳島はそれに次いでいるのです。それで働き手の県外流出に危機感が強いのです。

 

[この項のまとめ]

 みずほリサーチテクノジーズの河田皓治主席エコノミストは「雇用者の7割が働く中小企業で賃上げが広がらないと、経済効果は期待できません」と、極めて重要な要点を指摘しています。「ネットは、物価上昇の局面でも賃上げの原資がないのです。商品の付加価値を高めて値上げできるように後押しすることが、国や自治体が取り組むべきことの本質です」と語っています。

日本経済新聞2023年1月27日、朝刊、1面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。

 

 [まとめ]

  この研究報告の執筆で参照引用した2024年1月27日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、三つの図表が記載されていました。①物価高を織り込んだ実質賃金の増減。(注)2023年10月まで1年間の前年同月比。小数点第2位以下で順位付け。厚生労働省・都道府県の「毎月勤労統計調査」や総務省「消費者物価指数」から作成。②群馬・大分のみが実質賃金プラス。(注)2023年10月までの1年間の前年同月比。▲は減少。➂物価高で実質賃金は低迷(同年同月比増減率)。

 

[図表1]

図表1(注3)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、ここには「物価高を織り込んだ実質賃金の増減」と題した図表が織り込まれていました。ここでは、2023年10月まで1年間の前年同月比の増減比(%)を計算し、小数点第2位以下で順位付けています。ここでの数値は、厚生労働省・都道府県の「毎月勤労統計調査」と総務省「消費者物価指数」から作成しています。

そして「各都道府県」の2023年10月時点での「物価高を織り込んだ実質賃金の増加、減少は、増加を最初に記して、減少については、減少率の小さい処から大きい処までを4段階にわけて、日本列島の地図を色分けして示していました。その色分けは以下です。①増加(黒茶色)。②1%未満の減少(濃い青の斜線)、➂1~3%未満の減少(濃い青)、④3~5%未満の減少(淡い青の斜線)、⑤5%以上の減少(淡い青)。

 

ここで実質賃金が物価上昇率を超えて増加している地域は、黒茶色に塗ってありました。このグループは1位群馬県、2位大分県の2地域のみでした。

 

減少組で、減少が最も小さかった地域は、濃い青色の斜線で示してあった処で、その減少率は「1%以未満の減少」の地域でした。これは山形県と兵庫県の2カ所でした。次に減少率が小さかったのは「1~3%未満の減少」のグループです。それは以下の各地です。すなわち、秋田県、新潟県、富山県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、岐阜県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、和歌山県、岡山県、島根県、福岡県、熊本県、香川県、徳島県、愛媛県、高知県の24地域です。

 

減少率が次に小さかったのは、「3~5%未満の減少」の地域です。それは以下の地域です。すなわち、北海道、青森県、岩手県、宮城県、福島県、栃木県、埼玉県、石川県、三重県、奈良県、広島県、山口県、佐賀県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の17地域です。

 

ここまでくると、残ったのは、5%以上の減少の地域だけです。これは淡い青色に染まった地域であり、地図を確認すると、この地域は福井県と鳥取県の2カ所だけでした。すなわち、この改革プロジェクトで、著しく遅れている地域は僅か2カ所なのです。

 

[図表2]

図表2(注4)は「群馬・大分のみが、実質賃金プラス」と題した図表でした。これを以下に記します。

 

図表2 「群馬・大分のみが、実質賃金プラス」

順位   都道府県              賃金の増減率             実質賃金の増減率                              1   群馬県        5.0%        0.6%

2   大分県        3.7         0.4

3   山形県        3.3        ▲0.5

4   兵庫県        3.2        ▲0.7

5   岐阜県        3.1        ▲1.0

12  東京都        2.4        ▲1.7

   全国平均        1.8        ▲2.2

18  大阪府        2.0        ▲2.3

45  沖縄県       ▲0.8        ▲5.0

46  鳥取県       ▲2.2        ▲6.3

47  福井県       ▲2.8        ▲6.6

 

(注)2023年10月までの1年間の前年同期比。▲は減少。

 

この図表を、しっかり眺めてみますと、以下のことがわかります。

(1)実質賃金(注1)の増減率が増加になっているのは、順位1~2に記している群馬県と大分県だけです。

(2)順位3以下は、全て実質賃金(注1)の増減率は減少(▲印)ですが、これを図表1では、①~④と4段階に分け、増加を先頭に置き、減少は小さい処から大きいところへと順に並べて示していました。

(3)最も減少率の小さかった処(1~3%減少)は24カ所ありました。すなわち、これを図表2の順位に当てはめてみれば3から26(26は図表2にはない)までとなります。この図表2では、この組の中で最も成績が良かった、順位3~5まで(山形県、兵庫県、岐阜県)を記しており、そのあとは人口が大きく、影響が大きい東京都(順位12)と大阪府(順位18)を記してあります。

ここでの名目賃金(注2)から物価上昇額を引いた実質賃金(注1)は0.5~2.3%の減少ですが、名目賃金は3.3~2.0%増加です。

 

さらに、この図表の最後に、順位45~47の全国で実質賃金(注1)の減少率が最も多い3地域を記載しています。このうち、順位46の鳥取県と47の福井県は、実質賃金の減少率が最大のグループ(5%以上減少のグループ)に属していました。この2地域は、日本の他の地域と比べて、減少率が際立って大きいのです。大変に立ち遅れているのです。

 

[図表3]

図表3(注5)は「物価高で実質賃金は低迷(同年同月比増減率)」と題した図表でした。この図表には、上段と下段に二つの図表が書いてありました。上段は折れ線グラフで下段は棒グラフです。上段は青線で折れ線グラフが書いてあり、2020年から2023年までの「名目賃金」の推移を示すグラフでした。このグラフを作成するために、左側縦欄に4%から-6%までの賃金増減率の数値が記してありました。そして下欄の横欄には2020年から2023年までの「年」が記していました。そして、この縦横欄を用いて、名目賃金の推移グラフを記していました。

 

また、下段は実質賃金の推移を示すグラフです。これは黒線で記していました。

 

この青線と黒線の賃金推移グラフを比べてみますと以下のことがわかります。2020年と2021年の2年間は、青線の「名目賃金」と黒線の「実質賃金」は、ほぼ同じ動きをしています。両者とも2020年は、増減率0から-2%の間を波打っていました。そして、この2年間の内、2021年は、両者の増減率は増加に転じ、0から+2%の間を波打っていたのです。

 

しかし、この両者は2022年~2023年には、全く異なる動きをするようになるのです。すなわち「賃金」の青線は、増加に転じ、0から+4%の間を波打つようになります。そして、「実質賃金」は、逆に減少に転じ、0から-4%の間を波打つようになるのです。すなわち、2022年以降は、「名目賃金」は上昇へ、「実質賃金」は減少へと向かい分かれていくのです。この図表3は、これを明確に示していました。すなわち、2022年頃から物価上昇の影響を受け実質賃金は低迷を始めたのです。

 

[最後のまとめ]

首相は、実質賃金を上昇させ、日本経済の好循環を起こさねばならないと、強く言っておられます。また「これが現実には、全く起きていない」と言う批判の声もあります。でも、今、これは立派に立ち上がっているのです。これには、本文で記した「群馬県」の強い決断と実行が、大きな力だったのです。

 

本文には、以下のように書いていました。

「群馬県内は高崎市が中小企業の賃上げ率に応じて奨励金を、最大150万円支給する制度を2023年7月に始めました。申請は見込みの2倍の150件に及び、3億円だった予算を2億円積み上げしました。」

 

ここでは、奨励金を2億円積み上げたのが大きかったのです。ここでは、公務員が死ぬことより大事にしている「自分に預けられた予算を、赤字にしないように守る」という本能から言えば「巧くいくかどうか怪しい大改革に、3億円、自分の身銭を投じるのは大変に勇気がいることだったのですが、予測を超えて、とんとん拍子で進んだとき、2億円を即座に、迷わず投ずる決断をするのは、一層、大変だったはずです。これを良く勇気をもって決断しました。

でも、これによって、今、日本で大問題になっている、「中小企業が金儲けに転ずる」ことが、いとも容易に実現したのです。ここで実質賃金が増大しましたから、この難問が、いとも簡単に実現したのです。

 

まだ、このことの本当の重要さに気づいている企業も国民も多くないと思いますが、儲けが出た事例には敏感なのは人間の常ですから、近々に、みんなが気がついて、この大改革は、一斉に始まると思います。


日本経済新聞2023年1月27日、朝刊、1面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。

 

(注1)実質賃金とは: 働く人が受け取る賃金から物価の影響を除いたもの。賃金の額面が同じでも物価が上がれば購入できるモノやサービスは減り、物価が下がれば購入できるモノやサービスが増える。実質賃金は、額面ではなく正味の購買力を表し、個人消費の動向に影響する。働く人が受け取る額面を示す名目賃金を消費者物価指数で割って求める。

 

(注2)名目賃金とは:普段受け取っている金額通りの賃金のことである。ここでは「あなたの名目賃金はいくら?」と聞かれたら、給与明細に書かれてあるとおりの数字を答えることになる。

 

(注3)消費者物価指数(consumer price index、:CPI)とは、最終価格 (消費者が実際に購入する段階の、相対価格(一般物価)) の変動を表す指数。消費者物価指数の項目、構成比、算出方法には国ごとに違いがある。指数は、基準年の家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを基準年平均=100として表すラスパイレス算式である。一時的な要因により大きく変動する分野を除外するため、コア指数が設定されている。日本の場合、生鮮食品を除いた指数「コアCPI」が使われる。また、エネルギー価格の変動がコアCPIに影響を与えるため、食料及びエネルギーを除いた指数「コアコアCPI」が2006年より統計として加わった。

 

(注4)日本経済新聞2024年1月27日の朝刊1面に掲載された図表1、①物価高を織り込んだ実質賃金の増減。(注)2023年10月まで1年間の前年同月比。小数点第2位以下で順位付け。厚生労働省・都道府県の「毎月勤労統計調査」や総務省「消費者物価指数」から作成。

 

(注5)日本経済新聞2024年1月27日の朝刊1面に掲載された図表2、②群馬・大分のみが実質賃金プラス。(注)2023年10月までの1年間の前年同月比。▲は減少。

 

(注6)日本経済新聞2024年1月27日の朝刊1面に掲載された図表3、➂物価高で実質賃金は低迷(同年同月比増減率)。

  

(1)日本経済新聞、2024年1月27日(1面)。

[付記]2024年2月12日:

 
 
 

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