「日本再生]「地域創生」被災訓練 防災へ住民組織 2023年9月25日 カバー率 全国で84% 岡山県・熊本県伸び大 避難誘導を「共助」
- honchikojisitenji
- 2023年9月25日
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続木 碧(つづき あお) 2023年9月(研究報告№082)
「巻頭の一言」
自然災害が頻発するなか、町内会などを基盤とした自主防災組織の重要性が増しています。どれだけの世帯が自主防災組織の対象になっているかを示す「カバー率」を見てみますと岡山県や熊本県など近年、災害が多かった西日本の自治体の伸びが目立ちます。活動メンバーの高齢化も進みますが、身近な住民で支え合う「共助」の拠点として機能を高める努力も続きます。
「地域創生」被災訓練 防災へ住民組織 カバー率 全国で84% 岡山県・熊本県伸び大 避難誘導を「共助」
「地域創生」被災訓練 防災へ住民組織 カバー率 全国で84% 岡山県・熊本県伸び大 避難誘導を「共助」
ここでは日本経済新聞の2023年9月2日朝刊の2面の記事を紹介します。
[はじめに]
自主防災組織は災害対策基本法(注1)などに基づく任意団体、町内会や小中学校の通学区域単位で組織されるケースが多く、平常時は住民参加の防災訓練や備蓄の点検などを実施します。災害時には自治体などと連携し、住民の避難誘導や支援物資の配布といった活動を担います。消防団などと被害者の救助や初期消火をすることもあります。
1995年の阪神大震災を契機に設立が進み、自主防災活動をする世帯数を全世帯数で割った「自主防災カバー率(注2)」も上昇しました。総務省消防庁によりますと全国の2022年4月時点のカバー率(注2)は、84.7%と1995年の2倍になりました。
[岡山県]
10年前と比べた「上昇幅」を見ますと、岡山県が33ポイントでトップでした。2018年の西日本豪雨で大きな被害を受けたことから、岡山市は2019年度に自主防災組織への支援メニューを拡充しました。新たにできた組織に助成金を支給するほか、避難訓練の実施や地域防災マップの作成などにも補助しました。
[熊本県]
2位の熊本県も2016年の熊本地震などの経験から自主防災組織の設立を進めてきました。県は2019年度から活動を支援する担当者を配置し、災害発生時の自治体との役割分担なども定めました。2020年7月の九州豪雨による球磨川の氾濫で大きな被害を受けた人吉市では、自主防災組織が市民の安全と生活の確保に貢献しました。
同市上新町で防災組織の役割を担う町内会の4人の役員は、氾濫に伴う避難指示を受けて計50世帯を1軒ずつ訪ねて避難を呼びかけました。ここには20人の高齢者が住んでおり、耳の遠い人もいました。床上浸水した家もありましたが、事前に決めてあった高台へ全員避難して無事でした。焚き出しも3週間続けました。
防災士の資格を持つ町内会の白石忠志会長(73)は「地域の実情を良く知る我々だからこそ可能な活動がある」と話しています。今年8月の台風6号でも、一人暮らしの高齢者の家庭などを回って安全対策を呼びかけました。
地域防災力のさらなる向上へ向け、球磨川流域の自主防災組織として、9月をめどに「コミュニティー・タイムライン(注3)」を作ります。災害を5段階にレベル分けて、地域ごとに誰が、いつ、何をするかを事前に定めます。人吉市の深江政友防災官は「地域ごとに、より適切な行動をとれるようになる」と期待しています。
[兵庫県]
2022年4月時点の自主防災カバー率(注2)が、全国で最も高かったのは兵庫県でした。兵庫県消防保安課によりますと、阪神大震災では救出された人のうち、消防などの「公助」は2割にすぎず、8割が「自助」や町内会などの「共助」だったのです。この教訓を生かそうと、自治体が音頭をとって自主防災組織の設立を促してきました。県は主導する人材の育成に向け、災害時の対応などを学ぶリーダー養成講座を2004年度に開設しました。これまでに3500人が学んでいます。
[この項のまとめ]
全国的に自主防災組織の設立は進んでいますが、高齢化による人員不足などで「自主防災カバー率(注2)」が落ちる自治体も出ています。組織があっても災害時に思うように機能しないケースもあります。都市防災に詳しい東京大学の廣井悠教授は「災害時の共助の重要性は高い。地域の街づくり組織やスポーツ団体などと連携し、若い世代や外国人を巻き込んでいく必要がある」と話しています。日本経済新聞2023年9月2日、朝刊、2面記事(田崎陸、岩本隆)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年9月2日の日本経済新聞の朝刊2面の記事には、三つの図表が記載されていました。①自主防災組織のカバー率(注2)は西日本で上昇が目立つ。(注)自主防災組織の活動エリアにある世帯の全世帯に対する割合(カバー率)を、2022年と2012年で比較した。出所は総務省消防庁。②全国平均のカバー率は8割を超えた。(注)同じ値は小数点第2位以下で順位付け。➂阪神大震災を契機に急上昇した。
[図表1]
図表1(注4)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、「自主防災カバー率(注2)」を、2022年と2012年で比較して、その伸び率のポイントを、茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。この結果、2022年の自主防災組織のカバー率(注2)が2012年比で増加が最も大きかった地域は「30.0ポイント以上の伸び」の地域で、これは色が「黒に近い」最も濃い茶色に色付けされていました。これが実現できていたのは、1位岡山県、2位熊本県、3位沖縄県の3県のみでした。
次に「伸びが進んでいた地域」は、「20.0~29.0ポイント未満」の伸びの地域で、これは黒に近い濃い茶色の斜線で記してありました。これは青森県、茨城県、石川県、香川県、高知県、佐賀県、長崎県の7県でした。
また、三番目に増加が進んでいる地域はさらに多く、全国で13カ所ありました。すなわち、三番目に「伸び」が進んでいたのは、北海道、岩手県、山形県、新潟県、群馬県、千葉県、和歌山県、島根県、広島県、福岡県、宮崎県、鹿児島県の1道12県でした。
この「自主防災カバー率(注2)」は、全国、多くの地域で進んでいましたが、本州の中南部太平洋側を中心に、「自主防災カバー率」が2012年に比べて低下している地域がありました。これは新聞の地図に「淡い青色」で示してあり目立ちました。すなわち、宮城県、福島県、栃木県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、愛知県、三重県、長野県、京都府で自主防災活動が低迷していました。私はいつも、改革の先導者だと思っている東京都・神奈川県・山梨県などが、低迷組の中にいるのに、大変、驚きました。この自主防災活動が低迷している地域に対して、国も、地域も、国民にも、改めて強力な対策が必要と思われます。
[図表2]
図表2は「全国平均のカバー率は8割を超えた」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 全国平均のカバー率は8割を超えた
2022年時点 2012年比上昇幅(ポイント)
1 兵庫県 97.4% 1.2
2 香川県 97.2 24.6
3 大分県 97.1 5.8
4 和歌山県 97.1 14.9
5 石川県 97.0 20.7
全国平均 84.7 7.3
この図表には、2022年時点での全国都道府県別の自主防災活動の「カバー率の第1位から第5位まで」が記されていました。その全国平均は84.7%で8割を超えていました。
なお、このベスト5に入っている地域で、先に示した、近年10年における「カバー率の伸び率」のベスト10に入っている処は、香川県と石川県だけでした。過去10年間の牽引者と2022年のリーダーとは、大分、変化しているようです。日本は、今、変動の時代を迎えています。
[図表3]
図表3は、「阪神大震災を契機に急上昇した」と題した図表でした。この図表の左側縦欄には30~90%の自主防災組織のカバー率の目盛が記してあり、下欄には関東大震災が発生した1995年から2022年までの「年」が記してありました。この縦横軸にプロットして自主防災組織カバー率の折れ線グラフが書いてありました。グラフは阪神大震災が発生した1995年時点の40%強から2010年の80%弱へと、カバー率は右肩上がりで順調に拡大していました。2010年からは、この上昇は鈍化しています。日本経済新聞2023年9月2日、朝刊、2面記事(田崎陸、岩本隆)を参照・引用して記述。
(注1)災害対策防止法とは:国土や国民の生命、身体、財産を災害から守るために、防災計画の作成、災害予防、災害復旧などの基本を定める法律である。災害が発生した場合には、被害の最小化と迅速な復旧を行うことを目指す。1961年に制定され、防災行政の整備と推進を図っている。防災とは、災害の発生を防ぐことや、発生した災害に対して効果的に対処することを言う。
(注2)自主防災カバー率とは:その地域の世帯のうち、どれだけの世帯が自主防災組織の対象となっているかを示す率のこと。
(注3)コミュニティー・タイムラインとは:風水害などの災害時に地域住民が取るべき防災行動や避難のタイミングを時系列で定めた行動計画のことである。地域で活動する団体や個人が「誰が」「いつ」「何をするか」をお互いに把握しておくことで、災害に備えることができる。コミュニティ・タイムラインは、町会・自治会単位で作成することが推奨されている。
(注4)日本経済新聞2023年9月2日の朝刊2面に掲載された図表1、①自主防災組織のカバー率は西日本で上昇が目立つ。(注)自主防災組織の活動エリアにある世帯の全世帯に対する割合(カバー率)を、2022年と2012年で比較した。出所は総務省消防庁。
(注5)日本経済新聞2023年9月2日の朝刊2面に掲載された図表2、②全国平均のカバー率は8割を超えた。(注)同じ値は小数点第2位以下で順位付け。
(注6)日本経済新聞2023年9月2日の朝刊2面に掲載された図表3、➂阪神大震災を契機に急上昇した。
(1)日本経済新聞、2023年9月2日(2面)。
[付記]2023年9月25日:
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