「日本再生]「地域創生」行政DX 神奈川が先行 2024年1月29日仙台400万業務 オンラインに 横須賀、窓口待ち6割短縮
- honchikojisitenji
- 2024年1月31日
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続木 碧(つづき あお) 2024年1月(研究報告№097)
「巻頭の一言」
行政をデジタル技術で効率化する「自治体デジタルトランスフォーメーション(自治体DX、注1)」が大変に活発になってきています。「DX(注1)」の専門人材の登用が進むなか、人工知能(AI)の活用例が、とても増えてきました。人口減に伴い地方公務員が不足するなかで、公共サービスの水準を保つには、今,業務改革が欠かせないのです。来庁いらずの行政手続きが、もし、当たり前になれば、住民の利便性は、とても増すはずです。
日本経済新聞2023年1月13日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘、鈴木遊哉、三宅樹)を参照・引用して記述。
「日本再生]「地域創生」行政DX 神奈川が先行 仙台400万業務 オンラインに 横須賀、窓口待ち6割短縮
「日本再生]「地域創生」行政DX 神奈川が先行 仙台400万業務 オンラインに 横須賀、窓口待ち6割短縮
ここでは日本経済新聞の2024年1月13日2面の記事を紹介します。
[はじめに]
総務省は「自治体DX・情報化推進概要」として全自治体のデジタル進捗度を幅広い観点から整理してまとめています。2022年度の調査で、「推進体制」から7項目、「行政サービス向上など」の内36項目、「情報セキュリティ対策など」から7項目について、全1741市区町村(東京23区を含む)の達成状況を、「データの値を、平均50、標準偏差10のデータに標準化した値で、個々のデータが平均からどれだけ離れているかを感覚的に現す方法である」偏差値(注2)として平均しました。
この値の全国での首位は、仙台市(偏差値71.0)でした。これは±20区間(30~70)の広い区間に含まれており、これは平均値が、全体の約95.4の広い幅の中にあることを示しています。また、都道府県ごとに市区町村の平均値を求めたところ、神奈川県(57.8)が最も高く、東京都(56.3)広島県(55.0)が続きました。これらは、平均50からの±10区間(40~60)の中にあり、全体は約68.3%の幅の中にあることを示していました。
[神奈川県]
神奈川県では、県内33市町村の8割以上で、標準化した偏差値(注2)が、平均の50を上回りました。県内上位の横須賀市(65.8)は、20年後に職員数が4分の3に減るとの危機感から、デジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変容させるDXを推進しています。公文書の電子化や業務フローの見直しによって仕事を効率化するだけでなく、行政サービスの向上にも結びつけています。
2021年に同市が開始した「書かない窓口」は、業務効率化をサービス改善にも生かしました。転出入に伴う諸手続きをバソコンやスマートフォンなどで、わかりやすく案内し、氏名や住所などの情報を一度入力すれば、複数の書類が整います。混み合う春は、窓口の待ち時間が100分と「テーマパーク並み」でしたが、DXを導入後は38分と、約6割に短縮しました。
職員の省力化へ向けて、2023年4月に、データの値を、平均50、標準偏差10のデータに標準化した値である、生成AI「チャットGPT(注3)」へと展開しました。同市の指導者は、書類や資料を作る負担を抑え、「住民と向き合う時間を増やしたい」と言っています。
[相模原市]
神奈川県内で偏差値首位の相模原市(67.2)も、2023年に、NECと国産生成AI(注3)の検証を始めました。日本語独特の表現や行政用語の扱いなどに効果を見込んでいます。総務省によりますと、AIの導入自治体は2021年末で1年前の6割増となりました。
[広島県]
各自治体は、デシタル人材の確保を急ぎます。広島県は新設した「情報職」の採用・育成・活用に県内の市町と共同で取り組んでいます。月5万円の手当を10年間にわたって支給します。2023年度は7市町に人材を派遣しました。この「環境の整備」が刺激となり、このうち江田島市では、DXによる課題解決に職員から100件を超す提案がありました。
[仙台市]
仙台市は、年間に受け付ける業務476万件の9割を2026年度までにオンライン化します。2023年4月に、日本郵政の常務執行役をデシタル分野の市長補佐官に迎えました。早期に「フルデジタル市役所」を目指します。東日本大震災を教訓に防災・減災にもDXを生かします。津波発生時にドローンで空から避難を呼びかけ、水中ドローンで河川の異物を取り除きます。
[新潟市]
新潟市はオンライン手続きに応じる「e-NIIGATA」を2023年に導入しました。市役所を訪れることなく手数料の決済もできるのです。同市の偏差値は、70.5であり全国2位です。JR新潟駅周辺の通称「にいがた2km」には、市の誘致もあり50社を超すIT企業が集まりました。立地企業のデジタル技術を、まちづくりなどに生かす試みも始まりました。
[この項のまとめ]
自治体のデシタル化に詳しい武蔵大学の庄司昌彦教授は「行政機能を維持するため仕事の仕方を変えるのは当然です。DXは最も効果的ですが「X」にあたる業務改革なくしては進みません」と話しています。
日本経済新聞2023年1月13日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘、鈴木遊哉、三宅樹)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2024年1月13日の日本経済新聞の朝刊2面の記事には、三つの図表が記載されていました。①自治体DXの推進状況。(注)各市区町村による計52項目の達成数の「偏差値」を都道府県ごとに平均。2022年度総務省「自治体DX・情報化推進概要」から作成。②市区町村のDX偏差値上位。➂住民サービスを高めた例。
[図表1]
図表1(注4)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、これは「自治体DX(注1)の推進状況」と題した図表でした。
ここでは市区町村のデータを「平均値50、標準偏差10のデータに標準化した値」である(これを「偏差値」と呼ぶ)を、都道府県別に集計しています。
そして「各市区町村の偏差値の平均値」を「53以上」~「48未満」の4段階にわけて、日本列島の地図上に色分けして示しています。そして、その偏差値の平均値の高い順に「黒茶色、濃い茶色の斜線、濃い青色の斜線、淡い青色に塗り分けて示してありました。
ここで「各市区町村の偏差値の平均値が最も大きい地域は、「達成偏差値平均53以上」の地域で、黒茶色に塗ってありました。このグループは、一位神奈川県、2位東京都、3位広島県の3地域が、牽引していました。続いて、以下の地域が続いていました。それは埼玉県、静岡県、愛知県、福井県、山梨県、大阪府、兵庫県、山口県、大分県でした。このグループは合計12地域でした。
「偏差値の平均値」が、次に大きかった地域は、濃い茶色の斜線で示してあった処で、その偏差値の平均値は「50~53未満」の地域でした。一見してこれは、関東地方から中部・関西をへて下関にいたる本州一帯と九州・四国に集中していました。
この好調組は、以下です。それは茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野県、京都府、鳥取県、島根県、岡山県、香川県、愛媛県、長崎県、鹿児島県の13地域です。
「偏差値の平均値が、次に大きかった地域は、「濃い青色の斜線で示してあった処」で、その偏差値の平均値は「48~50未満」の地域でした。これは以下の地域です。岩手県、秋田県、宮城県、山形県、新潟県、長野県、山梨県、石川県、三重県、福岡県、佐賀県、熊本県の12カ所です。
ここで最も立ち遅れていた地域は、「48未満」の地域で、北海道、青森県、福島県、群馬県、奈良県、和歌山県、徳島県、高知県、宮崎県、沖縄県の10カ所でした。これらは北海道・東北・関西南部・九州・四国に点在していました。
[図表2]
図表2(注5)は「市区町村のDX偏差値上位」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 「市区町村のDX偏差値上位」
順位 自治体名 DX偏差値
1 仙台市(宮崎県) 71.0
2 新潟市(新潟県) 70.5
2 岡崎市 (愛知県) 70.5
2 練馬区 (東京都) 70.5
5 浜松市(静岡県) 70.0
5 大阪市(大阪府) 70.0
5 豊中市(大阪府) 70.0
8 姫路市(兵庫県) 69.6
9 袋井市(静岡県) 69.1
9 伊丹市(兵庫県) 69.1
9 福山市(広島県) 69.1
9 町田市(東京都) 69.1
この図表2には、デジタルトランスフォーメーション(注1)の熱意のこもった活動で、DX偏差値を向上させた市区のベスト10が示してあります。このベスト10の上位5位までは、DX偏差値が70.0を超えており、下半の9位までも、70.0に肉薄しています。日本全土のDX偏差値向上競争は、今、とても盛り上がっています。
[図表3]
図表3(注6)は「住民サービスを高めた例」と題した図表でした。これを以下に記します。
「図表3「住民サービスを高めた例」
(1) 神奈川県横須賀市:入力作業を簡略化して、異動手続きの待ち時間を約60分短縮。
(2) 北海道北見市:転出入届や住民票発行などで、用紙に書かずにワンストップで対応。
(3) 東京都三鷹市:手数料決済に現金自動精算機。
(4) 熊本県阿蘇市:体育施設の貸出にスマートロック。鍵の管理負担軽減。
ここではデシタルトランスフォーソーション(注1)の実施により、行政サービスのレベルを高めた事例が示されています。
日本経済新聞2023年1月13日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘、鈴木遊哉、三宅樹)を参照・引用して記述。
(注1)自治体デジタルトランスフォーメーション、DX(Digital Transformation)=自治体DXとは:行政をデジタル技術で効率化することである。DXが最初に提唱されたのは古く、2004年に遡る。それはスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念に帰着する。近年では、「最新のデジタル化時代に対応するための企業の変革」の意味合いのビジネス用語とし、一般的に使われている。詳細な定義では「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」としている。
(注2)偏差値(T-score)とは、データの値を、平均50、標準偏差10のデータに標準化した値である。個々のデータに対して平均からどれだけ離れているかを感覚的に現す方法である。データの単位を消して一律の指標として表すことを目的とするので、結果的に無次元数となる。正規分布であるデータにおいて、平均50からの±10区間(40~60)は全体の約68.3%、±20区間(30~70)は約95.4、±30区間(20~80)は約99.73%、±40区間(10~90)は約99.9937%、±50区間(0~100)は約99.999953%である。
(注3)生成AIとは、既存の成果物から学習して、現実に即した成果物をあらたに大規模に生成するテクノロジである。この新しい成果物は、トレーニング・データの特徴を反映するが、データをそのまま繰り返すことではない。画像、動画、音楽、音声、テキスト、ソフトウェア・コード、商品設計といった分野で、多岐にわたり、まったく新しいコンテンツを生み出すことを指す。
このモデルを作成するには、複雑な数学と桁外れのコンピュータ処理能力が必要であるが、これらは本質的には予測アルゴリズムである。
チャットGPTとは、米国の企業であるOpen AI社が開発した、人工知能を使ったチャットサービスである。人間の質問に対して、まるで人間のように自然でクオリティの高い回答をする。
(注4)日本経済新聞2024年1月13日の朝刊2面に掲載された図表1、①自治体DXの推進状況。(注)各市区町村による計52項目の達成数の偏差値を都道府県ごとに平均。2022年度総務省「自治体DX・情報化推進概要」から作成。
(注5)日本経済新聞2024年1月13日の朝刊2面に掲載された図表2、②市区町村のDX偏差値上位。
(注6)日本経済新聞2024年1月13日の朝刊2面に掲載された図表3、➂住民サービスを高めた例。
(1)日本経済新聞、2024年1月13日(2面)。
[付記]2024年1月29日:
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