「日本再生]「地域創生」看護師の確保 西日本先手 2023年10月9日 離職防止・復職支援に力 高知県・佐賀県 訪問対応に人材育成
- honchikojisitenji
- 2023年10月9日
- 読了時間: 7分
続木 碧(つづき あお) 2023年10月(研究報告№083)
「巻頭の一言」
超高齢化社会を迎え、医師と同時に看護師の不足が一段と深刻になっています。新型コロナウイルス禍でも大都市圏を中心に危機感が広まりました。その中で西日本では、人口当たりの看護師数が、福祉先進国の北欧を超える自治体もあるのです。トップの高知県は養成学校が多いうえ、奨学金の返済免除制度や就職後の研修など支援策も手厚いのです。日本経済新聞2023年9月16日、朝刊、2面記事(桜井祐介、富田龍一)を参照・引用して記述。
「地域創生」看護師の確保 西日本先手 離職防止・復職支援に力 高知県・佐賀県 訪問対応に人材育成
「地域創生」看護師の確保 西日本先手 離職防止・復職支援に力 高知県・佐賀県 訪問対応に人材育成
ここでは日本経済新聞の2023年9月16日朝刊の2面の記事を紹介します。
[はじめに]
厚生労働省の「衛生行政報告例」によりますと、2020年末に就業中の看護師(准看護師を含む)は156万人でした。保健師や助産婦などを含めた看護職員は173万人でした。10年前よりは2割増えていますが、2025年に必要とされる200万に及ぶかどうかは難しいのです。
全国の人口10万人あたりの看護師は、1241人で、1800人台のフィィンランドやノルウェーに見劣りします。一方、都道府県別看護師数では、高知県が2070人と国内で一番多いのです。相対的に西日本の自治体が先行しています。2022年度の看護師などの有効求人率も愛知県が2.80倍、東京都が2.70倍と大都市の不足が目立つのに対し、高知県の有効求人率は1.25倍に止まり、看護師は充足していました。
[高知県]
高知県は中山間地が多く、高齢化率も高いのです。人口あたりの病床数は全国平均の2倍となっており、歴史的に看護師の養成学校も多いのです。高知県看護協会の藤原房子会長は、「産休などで一時的に不足するケースはあるが、全体では一定の人数を確保できている」と話しています。
しかし、一方で、入院日数が長くなっている傾向があり、県民1人あたりの医療費が全国でトップクラスという問題点もあります。高知県医療政策課は「近年は在宅療養の推進などで病床数も減少傾向にある」としたうえで、「一定の経験が必要とされる訪問看護に対応できる看護師の育成にも、力を入れている」と述べています。
高知県は、中山間地で勤務したり、訪問看護に携わる人に、奨学金の返済を免除する制度を設けました。県看護協会の藤原会長は、「中小病院向けの新人研修などを通じて、新人採用が難しい病院などへの人材確保や離職防止にもつなげている」と述べています。
正規雇用看護職員の2020年度の全国平均離職率は、10.6%と、全業種平均よりは、やや低いのですが、高知県は、7.8%とさらに低く、とても良好なのです。
[佐賀県]
看護師確保で先行する地域は、養成学校が多いうえ離職率も低い傾向があります。佐賀県は、養成学校が人口あたりで全国最多であり、離職率も7.2%と低いのです。
県や県看護協会などは、資格取得後のスキルアップの支援に力を入れており、2015年には佐賀市に訪問看護サポートセンターを開設しました。高齢化でニーズが高まる訪問看護に対応する人材を確保すると同時に、働き方の選択肢を広げています。
[この項のまとめ]
看護師確保は、全国的な課題です。日本看護協会は、「訪問看護ステーション(注1)や在宅・介護分野での需要増などで、引き続き看護職の不足感は続く」とみています。政府は新型コロナ禍での経験を踏まえ、30年ぶりに看護師確保に向けた基本方針を改定しました。
全国で70万人とされる資格があっても離職中の「潜在看護師」の復職に向けた対応も広がっています。鹿児島県看護協会は、復職時の不安解消のために、新しい医療機器の取り扱い方法などを学ぶセミナーを、無料で開催しています。親の介護などでUターンした人が年数十人、これに参加しています。徳島県も55歳以上の潜在看護師向けに、病院などとのマッチング事業を展開しています。
看護事情に詳しい神奈川県立保険福祉大学の石原美和教授は「子育てや待遇などを理由に離職する人たちを減らす必要があります。家庭と介護師の仕事を両立できるように、国だけてなく自治体も努力しなければならないでしょう」と指摘しています。(地域再生エディター、(桜井祐介、富田龍一)を参照・引用して記述。)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年9月16日の日本経済新聞の朝刊2面の記事には、三つの図表が記載されていました。①看護師は、大都市圏ほど少ない。(注)2020年末に従事する看護師・准看護師の人口10万人あたりの人数・出所は厚生労働省。②九州や四国が上位を占める。(注)求人倍率は2022年度。保健師・助産師を含む。➂国内看護師数は北欧に見劣り。(注)2020年の10万人当たりの看護師数。出所OECD。
[図表1]
図表1(注2)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、2020年末に従事する看護師・准看護師の人口10万人あたりの数を「茶色」と「青色の淡色」の濃淡で塗り分けて示してありました。この結果、2020年末に従事する看護師・准看護師の「人口10万人あたりの数」が最も多かったのは「1900人以上」の地域で、これを色が「黒に近い」最も濃い茶色に色付していました。これが実現できていたのは、1位高知県、2位鹿児島県、3位佐賀県以下、熊本県、宮崎県の5県でした。
次に二番目に多かった地域は「1600人以上1900人以下」の地域で、これは濃い茶色の斜線で記してありました。これは愛媛県、香川県、徳島県、大分県、長崎県の5県でした。結局、看護師・准看護師数の多い都道府県は、この10カ所でした。
また、看護師・准看護師の数の少ない地域(淡い青色の斜線で示した地域、1000人以上1300人未満)は、岐阜県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、三重県、愛知県、静岡県、山梨県、群馬県、茨城県、新潟県、宮城県の2府12県の14地域でした。
さらに、もっと淡い水色に染めた最も少ない地域(1000人未満)は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県の4地区でした。
この図表1を、良く観察してみますと、以下のことが判りました。東京都を中心とする神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県は、全国で最低でした。人口が多い地域では、この改革はとても難しいのです。でも、難しいから仕方がないと言うのではなく、これは極めて重要な改革ですから、国をあげ、地域をあげ、国民の総力を結集して、その前進に向けて、努力して行かねばなりません。首都圏の改革推進が極めて重要です。
また、この着色したこの図表1全体を概観してみますと、日本列島の中心部である関東・中部・関西の水色(改革の遅れ)が目立ちます。関東に続いて関西にも、大いに力を入れる必要があります。
[図表2]
図表2(注3)は「四国や九州が上位を占める」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 四国や九州が上位を占める
都道府県 人数 求人倍率
1 高知県 2070人 1.25倍
2 鹿児島県 1999 1.99
3 佐賀県 1933 1.97
4 熊本県 1929 2.26
5 宮崎県 1909 1.91
全国平均 1241 2.14
44 東京都 941 2.70
45 埼玉県 916 2.76
46 千葉県 914 2.69
47 神奈川県 882 2.33
(注)求人倍率は2022年度。保健師・助産師含む。
この図表には、2022年度時点での全国都道府県での保健師・助産師の求人倍率の上位7位までと最下位の4地域が記されていました。この求人倍率は、2022年度の保健師・助産師数を合算して計算したものです。ここで求人倍率が最も良好な処は高知県で、1.25倍でした。首都圏は最悪です。
[図表3]
図表3は、「国内看護師数は北欧に見劣り」と題した図表でした。この図表には、世界各国の2020年の人口10万人あたりの看護師数が列記されていました。フィンランド・スイス・ノルウェーが2000人弱で、アイルランドが1500人、オーストラリア・日本・ドイツ・米国が1000人強でした。日本経済新聞2023年9月16日、朝刊2面記事(地域再生エディター桜井祐介、富田龍一)を参照・引用して記述。
(注1)訪問介護ステーションとは:訪問看護をおこなう看護師や保健師、助産師、理学療法士などが所属している事業所のことである。職員は訪問看護ステーションを起点として利用者の自宅や施設へ出向き、状態観察や医療的ケアなどのサービスを提供する。
(注2)日本経済新聞2023年9月16日の朝刊2面に掲載された図表1、①看護師は、大都市圏ほど少ない。(注)2020年末に従事する看護師・准看護師の人口10万人あたりの人数・出所は厚生労働省。
(注3)日本経済新聞2023年9月16日の朝刊2面に掲載された図表2、②九州や四国が上位を占める。(注)求人倍率は2022年度。保健師・助産師を含む。
(注4)日本経済新聞2023年9月16日の朝刊2面に掲載された図表3、➂国内看護師数は北欧に見劣り。(注)2020年の10万人当たりの看護師数。出所OECD。
(1)日本経済新聞、2023年9月16日(2面)。
[付記]2023年10月9日:
Comentários