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「日本再生]「地域創生」水道 遅れる耐震化 2024年3月18日 2028年度目標の7割止まり 福島市 衛星×AIで漏水検査

 

続木 碧(つづき あお2024年3月(研究報告№101)


「巻頭の一言」

能登半島地震の被災地では、断水の続く地域が依然として残っています。災害に強い水道への更新の遅れが響いています。国には石川県より耐震化率が低い自治体も少なくないのです。人口減少などで、水道事業の6割が採算割れになっているなかで、生活に欠かせない水の安定供給に、向き合う自治体の動きを追いました。

日本経済新聞2023年3月9日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。

 

「日本再生]「地域創生」水道 遅れる耐震化 2028年度目標の7割止まり 福島市 衛星×AIで漏水検査

 

「日本再生]「地域創生」水道 遅れる耐震化 2028年度目標の7割止まり 福島市 衛星×AIで漏水検査

 

ここでは日本経済新聞の2024年3月9日1面の記事を紹介します。

 

[はじめに] 

13年前の東日本大震災では、広範囲な断水が発生しました。多くの水道網は、高度成長期に整備され、老朽化と耐震性の低さが問題視されています。素材や継ぎ手部分などを強化した耐震性の高い水道管への更新や、浄水施設の耐震化が求められていすが、自治体の財政難と水道事業の経営状態の悪化で、思うように進んでいません。

厚生労働省によりますと、全国の水道の基幹管路の耐震適合率(注1、2)は、2021年度に、41.2%でした。東日本大震災後の2011年度より8.6ポイント(注3)改善しましたが、国の2028年度末の目標である「耐震適合率60%以上」の7割にとどまっています。石川県は36.8%と1ポイントしか進んでいないのです。石川県も耐震化が不十分であったと認めています。

自治体別で最も改善が進んだのは、東京都で31.1ポイント(注3)でした。山口県(21.5ポイント)大阪府(19.4ポイント)、福島県(19.3ポイント)が続きました。

 

[福島県]

福島県内では、効率的に耐震性を高めるために、先端技術の活用を広めています。耐震化率が47.9%と、14.4ポイント(注3)伸びた会津若松市は、管路の劣化具合の調査に、人口知能(AI)の使用を開始しました。従来の診断では、全体の半数の400キロメートルを、早急に更新する必要があるとしていましたが、AIは「55キロメールを優先すべきだ」と評価しました。そこで、2022年度から、この判断を基にした更新を始めています。

耐震管は通常以上の施工管理が必要です。会津若松市は、スマートフォンなどを活用し、工事内容のバラつきを防いでいます。「デジタル技術を水道事業の人員不足や収益改善につなげ、減った負担を管路更新に生かしたい」と同市の担当者は言っています。

 

福島市は、衛星による水道管の漏水調査を2023年に開始しました。衛星の観測データと水道事業者の管路情報を組み合わせ、AIで解析するのです。内閣府との実証実験の結果から、このAI活用の結果、点検費用を65%、調査期間を85%削減できることがわかりました。


ここでは、水道事業は、市町村などが運営し、料金収入で経費をまかなう独立採算を原則とします。しかし、各地の現状では、6割の水道事業が赤字になっており、耐震化の費用の調達が難しいケースが多いのです。そこで、市町村の範囲を超えて共同給水することで、スケールメリットを生かそうという動きが広がってきたのです。

 

[山口県]

 山口県は、水道事業を全県で一体的に運用すると、今後、40年間で74億円の費用が削減できるという、試算をまとめました。同県内では、すでに、柳井市など1市4町が、水道事業を2025年に統合する方針を決めました。山陽小野田市と宇部市なども連携を深めており、ガスなどを含めた道路下のライフラインの調査の申請手続を、ネット化する全国初の取組みも始めました。

 

[この項のまとめ]

 耐震化率(注2)が66.0%で全国2位の東京都は、1400万人の給水人口を抱えています。トップ神奈川県(73.1%)や3位の千葉県(60.3%)も、地方都市に比べて、料金収入が豊富な点で共通しています。

 これに対して、高齢化と過疎化が急速に進む多くの地域では、水道の耐震性の向上以前に、均質な給水サービスの維持さえ、容易ではないのです。基幹管路を整備するのはやめて、タンク車で水道水を運ぶ「運搬送水」の導入を検討する自治体も現れています。

 水道行政に詳しい全国簡易水道協議会の真柄泰基相談役は「水道事業が不採算の状態では、送水管などの更新は難しい、どうやって更新するかを考えると同時に、地域に合った水道を考える必要があると思います」と話しています。

日本経済新聞2023年3月9日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。

 

 [まとめ]

  この研究報告の執筆で参照・引用した2024年3月9日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、三つの図表が記載されていました。①基幹水道管路の耐震適合率(注1、2)の変化。(注)2011年度と2021年度の耐震適合率(注2)を比較した変化の幅。耐震適合率が下降した理由は、耐震診断の精度の向上や集計方法の見直しなどによる。厚生労働省の資料から作成。②地震による断水の戸数と最大断水継続期間。(注)国の資料などから作成。➂水道管耐震適合率(注2)。

 

[図表1]

図表1(注4)には、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、ここには「2011年度と2021年度の、都道府県別の耐震適合率(注1~2)を比較した変化幅」を、その変化幅の最も大きい処から小さい処へと4段階に区分して、青色の濃淡で色分けして示していました。

その色分けは以下です。①耐震適合率の変化幅の最も大きい処(20ポイント(注2)以上、黒青色の地域)。②耐震適合率の変化幅が次に大きい処(10ポイント以上20ポイント未満上昇の地域、黒青色の斜線)。➂最後に、耐震適合率の変化幅の小さい処(10ポイント未満上昇の地域、青色)。

 

ここで、耐震適合率の変化幅の最大の処(20ポイント(注2)以上上昇の地域)は、黒青色に塗ってあった処で、これに該当する地域(第1群)は、第1位の東京都、第2位の山口県の2カ所でした。

また、耐震適合率の変化幅が次に大きかった処(10ポイント以上20ポイント未満上昇の地域(第2群)は、黒青色の斜線で塗ってあった処で、第3位大阪府以下、次の各地が続いていました。それは福島県、茨城県、埼玉県、山梨県、神奈川県、静岡県、長野県、富山県、福井県、京都府、和歌山県、岡山県、広島県、福岡県、熊本県、愛媛県の17カ所でした。

 

ここまで、耐震適合率の変化幅が大きかった上位2群の合計は19カ所で、全国の41.3%でした。

 

さらに、次の段階に進みますと、このグループは、耐震適合率の変化幅が最少だったグループです。これを列記すれば以下です。北海道、秋田県、宮城県、山形県、新潟県、群馬県、栃木県、千葉県、石川県、岐阜県、滋賀県、愛知県、三重県、奈良県、兵庫県、鳥取県、佐賀県、長崎県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、香川県、徳島県の24カ所でした。結局、今回の分析では、耐震適合率の変化幅が最少だった処が、数のうえで最多という結論でした。

 

また、耐震適合率の変化幅で下降したところがあります。それは青森県、岩手県、島根県、高知県の4カ所です。

この地域は、耐震適合率(注2)が、2011年からみて、小さくなっているのです。ここには、緊急に、特別の対策を実施する必要があります。

 

 

[図表2]

図表2(注5)は「地震による断水の戸数と、最大断水継続期間」と題した図表でした。ここでは「最大断水継続期間」について、「地震名」「発生年」「戸数」「断水継続期間」

を記載しています。これを以下に記します。

 

図表2 「地震による断水の戸数と、最大断水継続期間」

     地震名      発生年      戸数      断水継続期間

 阪神淡路大震災  1995年    130万戸   3カ月

 新潟県中越地震   2004年     13万戸   1カ月

 東日本大震災   2011年         257万戸     5カ月

   熊本地震         2016年           45万戸     3カ月半

    能登半島地震     2024年            13万戸    ―

 

          (注)国の資料などから作成

  

この図表2を通観してみますと、これまでの大地震の断水継続期間は、東日本大震災が5カ月で最長でした。しかし、2024年1月1日に地震が発生した能登半島地震では、もう2カ月半が経過していますが,いまだに復旧の目途が立っていません。復旧がさらに遅れれば、災害からの回復に大きな影響を与えます。国をあげた、地域・県・企業・国民みんなの総力をあげた復旧を、急がねばなりません。

 

 

[図表3]

図表3(注6)は、「水道管の耐震適合率」と題した図表でした。

この図表は、2008年度から2021年度までの「水道管の耐震適合率(%)」を示した棒グラフでした。

そのグラフのための左側縦欄には「0~60(%)」の耐震適合率が記載されていました。また下欄には「2008年度~2021年度」の(年度)が記してありました。

この縦横欄を用いて、2008年度~2021年度にかけての水道管の耐震適合率の推移を示す棒グラフが記してありました。すなわち、水道管の耐震適合率は、近年、確実に増大しているのです。でも、2019年~2021年は、足踏みして止まっています。この先の進み具合が、私には、とても、心配になりました。

日本経済新聞2023年3月9日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘)を参照・引用して記述。

 

 

(注1)水道施設の耐震性能基準:水道施設は耐震性能基準を備える必要がある。「水道施設の技術的基準を定める省令」は、2008年3月28日に改正された。ここでは、施設の重要度に応じて耐震性能が明確化され、地震力に対して安全な構造であることが求められた。

具体的には、以下の諸点が考慮されている。(1)重要な水道施設(取水施設、貯水施設、導水施設、浄水施設、送水施設など)は、健全な機能を損なわない範囲で耐震性能を高める必要がある。(2)それ以外の水道施設(配水支管、末端部の小規模な配水池など)も、生ずる損傷が軽微、機能に重大な影響を及ぼさないことを考慮して、耐震化を進めている。

 

(注2)水道の基幹管路の耐震適合率:耐震適合率:基幹的な水道管のうち耐震性のある管路の割合を示す。わが国の「耐震適合率」は、2021年度末時点で全国平均41.2%である。同省は2028年度末までに全国で60%以上を目標に掲げている。



(注4)日本経済新聞2024年3月9日の朝刊1面に掲載された図表1、①基幹水道管路の耐震適合率(注1、2)の変化。(注)2011年度と2021年度の耐震適合率(注2)を比較した変化の幅。耐震適合率が下降した理由は、耐震診断の精度の向上や集計方法の見直しなどによる。厚生労働省の資料から作成。


(注5)日本経済新聞2024年3月9日の朝刊1面に掲載された図表2、②地震による断水の戸数と最大断水継続期間。(注)国の資料などから作成。

 

(注6)日本経済新聞2024年3月9日の朝刊1面に掲載された図表3、➂水道管耐震適合率(注2)。

 

 

(1)日本経済新聞、2024年3月9日(1面)。

[付記]2024年3月18日:

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