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「日本再生]「地域創生」地方振興企業5割増 2023年11月6日 5年で産業活性化に貢献 長野県大学軸に起業支援

続木 碧(つづき あお) 2023年11月(研究報告№087)

「巻頭の一言」

 独自性のある技術やサービスで成長を目指すスタートアップ(注1)が、全国で増えています。振興企業支援会社のデータベースでは、全国の企業数が5年間で5割増えました。地元大学発振興が相次いで誕生する長野県は、8割増と大きく伸ばしています。地方でも、産学官の資金の支援の輪が広がっており、スタートアップを生み育てる「エコシステム(生態系)」が構築されつつあります。

日本経済新聞2023年10月14日、朝刊、1面記事(田崎陸、高田哲生)を参照・引用して記述。


「地域創生」地方振興企業5割増 5年で産業活性化に貢献 長野県大学軸に起業支援

 

「地域創生」地方振興企業5割増 5年で産業活性化に貢献 長野県大学軸に起業支援

ここでは日本経済新聞の2023年10月14日朝刊の1面の記事を紹介します。


[はじめに]

 東証グロース上場のフォースタートアップスが作成した「STARTUP DB(データベース)」に登録されている2000年以降創業の企業を対象に、2023年6月末の登録数を2018年と比較しました。

 この登録は、新たな技術やビジネスモデルでイノベーションの実現を目指す企業が対象です。全体の登録数は1万5692社で、東京都の企業が66%を占めますが、東京以外の自治体の合計登録数も5年で49.5%増と東京と同じ伸びを示しました。


[長野県]

 増加率4位の長野県は、信州大学の積極性が目立ちます。2017年に知的財産・ベンチャー支援室を開設しました。2018年には、「信州大学発ベンチャー」の認定を始めました。現在の認定企業は17社で、起業や事業拡大に向けた多彩な支援を受けています。

 信州大学は企業との共同研究が盛んで、特許出願件数も地方大学でトップクラスです。支援室長の松山紀里子准教授は「有望な技術が大学のどこにあるかを把握しており、企業を後押ししやすい」と説明しています。

 認定企業の一つで2017年創業の精密林業計測(伊那市)が目指すのは、地場産業である林業の活性化です。担い手不足が深刻になるなか、ドローンなどを使って伐採に適切な木を判別するなど効率化を進めています。農学部の特認教授でもある加藤正人社長は、「特許取得などで大学の支援を受けており経営もしやすい」と話しています。

 金融機関も支援に前向きです。2022年には長野県が音頭をとり、八十二銀行グルーブや投資会社などが「信州スタートアップ・継承支援ファンド」を設立しました。これまでに、信州大学発企業を含めた9社に出資しています。

[奈良県]

 奈良県は、登録は18社と少ないのですが、増加率は2倍でトップです。就職時の若者の県外流出に悩む奈良市は、独自の起業家育成プログラムを通じて、振興企業のエコシステムを作り上げています。7年目の今年のプログラムには、6社が参加しています。

 自宅の縫製士をネットワーク化し、高付加価値で小ロットの仕事を発注するヴァレイ(上牧町)の谷英希社長は、その1期生です。「これまでは奈良の中で、情報不足でモヤモヤしていましたが、プログラムを通じてビジョンを形にできました」と、谷社長は振り返っています。2016年の会社設立から委託先は300カ所になりました。年商は1億円を超えています。現在は、高校生への講演などに熱心に挑戦しています。

[愛知県]

 伸び率6位の愛知県は、自動車などの基幹産業が安定していることで、逆に「新興企業の不毛の地」とも言われてきました。クルマの電動化など変革の波が押し寄せる中、大村秀章知事は、「スタートアップで産業構造を変えたい」と意気込んでいます。県が2020年に開設したインキュベーション施設(注2)には、300近い企業が集まりました。2024年秋には国内最大級の育成事業「ステーションAi」を開催します。


[この項のまとめ]

 スタートアップの育成は、国を上げての課題でもあるのです。政府は2022年に「5カ年計画」を策定しました。2027年度の新興企業への投資額を10倍超の10兆円規模にすることを目指しています。

 日本総合研究所の井村圭マネージャーは「農業や製造業の効率化など地域の課題に取り組む新興企業が増えることで産業の高度化につながる」と強調しています。

今後は、ますます、既存企業を巻き込んで、地域全体の革新につながるような支援に、国が総力を上げて邁進していくことが、なんとしても必要となります。これが順調に進んでいけば、これからの国の活性化は、着実に進展していくこと思われます。

日本経済新聞2023年10月14日、朝刊、1面記事(田崎陸、高田哲生)を参照・引用して記述。

 

[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2023年10月14日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、三つの図表が記載されていました。①地方のスタートアップは5年間で急速に増えた。(注)2000年以降に創業したスタートアップの数。この数値を2023年6月末時点と比較した。出所はSTARTUP DB。②全国平均を上回る県も多い。➂スタートアップの資金調達額は増えている。


[図表1]

 図表1(注3)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、2000年以降に創業したスタートアップを、2023年6月末時点と比較し、その増加%を「黒緑・黒緑の斜線、濃い緑、淡い緑の斜線、淡い緑」で塗り分けて示してありました。これによりますと、スタートアップ数の増加%が最大の地域は「60%増の地域」で、これは黒緑色に塗ってありました。これが実現できていた地域は、1位奈良県、2位香川県、3位埼玉県、4位長野県、5位佐賀県、以下愛知県、高知県の合計7県でした。

 2番目にスタートアップ数の増加率(%)が大きい地域は、増加率(%)が「50~59%の地域」で、黒緑色の斜線で記してありました。これが実現されていた地域は、宮城県、栃木県、千葉県、神奈川県、静岡県、岐阜県、滋賀県、京都府、兵庫県、山口県、福岡県、熊本県、宮崎県、鹿児島県の1府13県でした。

結局、スタートアップの数が2018年から2023年6月末にかけて50%以上増えた地域は全国で合計21カ所でした。


一方、スタートアップの増加率(%)が最も小さかった地域は、増加率が29%以下の地域です。この地域は淡い緑色に染め抜かれていました。これは福島県、群馬県、富山県、福井県、三重県、和歌山県、徳島県、大分県の8県でした。


この図表1を概観してみますと、スタートアップの増加が著しい処と立ち遅れてしまった処は渾然一体となって全国に広がっています。これは各地が、個別の努力でスタートアップ数の拡大の努力を重ねていることで、これが広く全国に広がっていることは、大変有望です。でも、ここでは著しく進展している地域の隣地が立ち遅れている例が多いのです。近隣相互の情報交換に欠けているように思います。相互に、その経験を伝達し合う活動が、ここでは必要だと思われます。

日本経済新聞2023年10月14日、朝刊、1面記事(田崎陸、高田哲生)を参照・引用して記述。


[図表2]

図表2(注3)は「全国平均を上回る県も多い」と題した図表でした。これを以下に記します。


図表2 全国平均を上回る県も多い


        自治体名      5年前比増加率   スタートアップ数

       1 奈良県      2倍         18社

       2 香川県      92.3%      25

       3 埼玉県      78.4      157

       4 長野県      77.8       80

       5 佐賀県      69.2       22

       6 愛知県      63.0      388

       7 高知県      60.0       16

       8 熊本県      56.1       64

       9 山口県      55.0       31

       9 鹿児島県     55.0       31


        全国平均      49.4


 この図表には、2022年度の各地のスタートアップ数と、その5年前比増加率が1位から9位まで記してありました。


 この図表を、じっくり眺めていますと、以下のことがわかりました。すなわち、この表の1~7は、図表1の「スタートアップの増加%」が「最大のグループ」の各地域であり、これに次ぐ8~9は「2番目のグループ」の主力メンバーでした。

 また、スタートアップの欄の企業数に注目して見てみますと、愛知県の388社と、埼玉県の157社が、際立って目立っていました。この2地域は、人口が大きい大都市圏なのです。すなわち、この図表2は、ここに示したメンバーに、東京・大阪が加われば、一層強力なメンバーリストになるのです。この2都市は、「増加%の3番目のグループ(中ぐらいのグループ=40~49%)」に入っていました。ですから、この2大都市は、増加率の多いクラスには、なかなか、入ってこないのです。このような産業改革のデータ分析では、この視点を配慮した検討が必要になると感じました。


[図表3]

 図表3(注4)は、「スタートアップの資金調達額は増えている」と題した図表でした。この図表の左側縦欄にはスタートアップの資金調達額を示す0~1.0兆円の数値が記してありました。また、下欄には2013年から2022年までの「年」が記してありました。この縦横軸を用いて、「各年のスタートアップの資金調達額」を示す棒グラフが記されていました。この棒グラフを見ますと2013年の0.1兆円から、2022年度の0.9兆円に向けて、スタートアップの資金調達額は着実に増えています。この10年間に9倍に増えました。

 さらに、この棒グラフを丁寧に見ますと、2013年から2016年にかけては、年間資金調達額は0.06兆円程度であり、2017年から2022年にかけての年間資金調達額は、2020年の急落年の例外を除けば、0.17兆円程度に増加しています。年間資金調達額は2.8倍に伸びています。日本経済新聞2023年10月14日、朝刊、1面記事(田崎陸、高田哲生)を参照・引用して記述。



(注1)スタートアップ(start up, start-up, startup)とは:「始める」「起こす」「立ち上げる」という意味を持つ英語表現。新しく設立された会社・企業のこと。特に、新規事業領域を開拓する会社・企業のこと。


(注2)インキュベーション施設(Incubation facility)とは、創業初期段階にある起業者の事業拡大や成功を支援する目的のもと、通常よりも安価な賃料で事務所スペースを提供したり、事業の立ち上げに関する専門家(インキュベーションマネージャー)によるサポートを提供したりする施設のことである。


(注3)日本経済新聞2023年10月14日の朝刊1面に掲載された図表1、①地域のスタートアップは5年間で急速に増えた。(注)2000年以降に創業したスタートアップの数。この数を2023年6月末時点と比較した。出所はSTARTUP DB。


(注4)日本経済新聞2023年10月14日の朝刊1面に掲載された図表2、②全国平均を上回る県も多い。


(注5)日本経済新聞2023年10月14日の朝刊1面に掲載された図表3、➂スタートアップの資金調達額は増えている。


(1)日本経済新聞、2023年10月14日(1面)。

[付記]2023年11月6日:

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