「日本再生]「地域創生」地価バブル超え 85市区町村 2023年11月20日 沖縄・八重瀬町は5倍 街の「通信簿」子育て支援・移住促進 結実
- honchikojisitenji
- 2023年11月24日
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続木 碧(つづき あお) 2023年11月(研究報告№089)
「巻頭の一言」
地価の回復が地方に広がっています。国土交通省が9月に公表した2023年の基準地価を市区町村別に見ますと沖縄県などの85市町村で過去最高だったバブル期の1990年を上回りました。新規の工場立地などに加え、子育て環境の整備などで住みやすさを実現した自治体が目立っています。まちづくり「通信簿」にもなっています。
日本経済新聞2023年10月28日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、奈良部光則、南畑竜太)を参照・引用して記述。
「地域創生」地価バブル超え 85市区町村 沖縄・八重瀬町は5倍 街の「通信簿」子育て支援・移住促進 結実
「地域創生」地価バブル超え 85市区町村 沖縄・八重瀬町は5倍 街の「通信簿」子育て支援・移住促進 結実
ここでは日本経済新聞の2023年10月28日1面の記事を紹介します。
[はじめに]
2023年の基準地価は全用途(注2)の全国平均が、前年比1.0%上昇と2年連続で上がりました。投資資金の流入や再開発で、三大都市圏が2.7%上がり、地方圏も0.3%上昇しました。
バブル期の地価上昇が三大都市圏に比べて穏やかだった影響もあり、2090年を上回った85市町村は、大半が地方圏でした。
[沖縄県]
都道府県別で、唯一バブル期を超えた沖縄県は、過半の24市町村が上回りました。2003年に那覇市でモノレールが開通しました。訪日客が増えて、観光関連産業の投資も拡大しています。
バブル期の5倍近くと、全国で最も上がった県南部の八重瀬町は、2006年の町村合併で誕生した町です。2000年代後半に国道が延伸され、那覇市までのアクセスが30分足らずと半減しました。サトウキビ畑が広がっていた同町屋宣原地区には住宅が増え、人口は2000人と7倍になりました。国道沿いには大型スーパーや飲食店が立ち並んでいます。
不動産鑑定士の仲本徹氏は、「那覇市の不動産に手が届かなかった層が流れてきた」と説明しています。若い世代が増え、合計特殊出生率(注1)も2.15と全国16位の高水準です。町は2023年に、学童保育施設を2カ所増設する計画です。地元民は「歩道が広く、登下校時の事故の心配も少ない」と話しています。
[宮城県利府町]
バブル超え市区町村の多くが子育て支援や移住促進、工場誘致などで新たな土地需要を生んでいます。地価がほぼ2倍になった宮城県利府市も運動着の無料支給や、ベビー用品無料レンタルなどが好評です。同町には、仙台市とつながる駅や、高速道路インターチェンジがあります。通勤・通学圏の仙台市内での不動産価格の上昇もあり、「戸建て住宅を望む夫婦の転入が目立つのです」。
インターチェンジ付近には物流施設も増えました。町は土地整備事業をさらに進めて、さらなる宅地需要に備えています。熊谷大町長は「仙台市と日本三景の松島の中間にあるため、通過される町だったが、選ばれる町に変貌した」と胸を張っています。
[富山県舟橋村]
日本一面積が小さい富山県舟橋村も地価が41%上がりました。2020年の時点の人口は3132人と2090年比で2.3倍に増加したのです。それで「奇跡の村」と呼ばれるようになったのです。きっかけは規制が厳しい市街化調整区域の指定が1988年に解除されて宅地開発が進んだことです。
以前から子育て支援に熱心だった上、隣接する富山市などに比べて割安感もあって、若い家族層が移り住むようになったのです。舟橋村は、さらなる移住促進に向けて、2019年度から村営賃貸住宅を提供しており、将来の定住につなげています。
[この項のまとめ]
一方、2013年に始まった日銀の金融緩和を柱とした「アベノミクス」のもと、この10年間の全国の地価は平均45%上がり、市町村別でも4分の1の自治体が上昇しました。特に中心都市である都道府県県庁所在地の上昇率は平均65%に達しました。再開発が相次ぐ大阪や札幌、福岡、名古屋の4市は2倍以上となりました。
人口問題などに詳しい東北大学の吉田浩教授は「投資対象となる都市部とは異なり、地方圏の地価は、そこに住みたいという人がいなければ上がらない」と強調しています。「今後も育児環境や教育、空き家対策など、総合的なすみやすさが地価に反映する流れが続くだろう」としています。
日本経済新聞2023年10月28日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、奈良部光則、南畑竜太)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年10月28日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、四つの図表が記載されていました。①沖縄県の地価はバブル期を超えた。(注)2023年基準地価(全用途平均)1990年比。出所は国土交通省「都道府県地価調査」(2023年)。②2090年比で85市町村が上昇(2023年)。➂10年間で中心都市の地価は上昇した。④基準地価の推移(全用途平均)。
[図表1]
図表1(注3)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、2023年基準地価1990年比を「茶、濃い青の斜線、濃い青、青、淡い青」で塗り分けて示してありました。これによりますと、基準値の地価が上昇していた地域は、「地価上昇」と記されていた地域で、これは、「茶色」に塗った地域でした。これが実現できていたのは、沖縄県一カ所だけでした。その他の地域の地価は、全て下落でした。
下落が最も小さかったのは、「濃い青色の斜線」で示してあった地域で、「40%未満の下落」と記されていた処でした。これが実現できていたのは、佐賀県、岩手県、宮城県、島根県、広島県、福岡県、鹿児島県の7県でした。
2番目に「下落」が小さい地域は、「40%以上60%未満の下落」の地域で、「濃い青色」で記してありました。これが実現されていた地域は、山形県、茨城県、埼玉県、神奈川県、長野県、愛知県、三重県、石川県、京都府、山口県、徳島県、愛媛県、高知県、大分県、長崎県、宮崎県、熊本県の17府県でした。
一方、基準地価の下落が一番大きかったのは、「60%以上の下落」の地点で、日本全国でこの地域が最も多く、21カ所ありました。この地域を列記しますと以下です。青森県、秋田県、福島県、新潟県、富山県、福井県、兵庫県、島根県、広島県、栃木県、群馬県、千葉県、東京都、山梨県、静岡県、岐阜県、滋賀県、大阪府、奈良県、和歌山県、香川県の1都1府19県です。
この「60%以上の下落」の地域は地価再生が最も遅れている地域ですが、この地は美しい淡い青色に染め抜かれており、この色に塗り込められた日本列島の本州は、あたかも、美しい淡青色の列島のようにみえました。また、世界の大都市、東京都・大阪府を始め、栃木県、群馬県、千葉県、山梨県の東京+山梨8県の多くが、この立ち遅れた地域に含まれており、これでは、地価再生が波に乗ったとは思えないのです。これからが、まさに勝負時だと思えます。
地価が「85市区町村で地価がバブル期を超えた」という、この調査研究の報告には、私はとても喜びました。本当に嬉しい情報ですが、でも、凄く大事なのは、これからだと思うのです。日本国の地価再生の活動を、これから、国を上げ、地域を上げ、みんなが共同して頑張らねばなりません。皆さん頑張りましょう。
日本経済新聞2023年10月28日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、奈良部光則、南畑竜太)を参照・引用して記述。
[図表2]
図表2(注4)は「90年比で85市町村が上昇(2023年)」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 90年比で85市町村が上昇(2023年)
自治体名 1990年比上昇・下落
1 八重瀬町(沖縄県) 4.7倍上昇
2 座間味村(沖縄県) 4.2倍
3 渡嘉敷村(沖縄県) 3.5倍
9 菊陽町(沖縄県) 2.3倍
11 嘉島町(熊本県) 2.0倍
12 利府町(宮城県) 95.1%上昇
30 舟橋村(富山県) 41.0%
1730 木更津市(千葉県) 89.5%下落
1731 甲府市(山梨県) 90.4
1732 八街市(千葉県) 92・0
(注)比較可能な1732自治体を算出
この図表には、2023年の7~9月の中小飲食・宿泊業で業況の良かった自治体の7カ所と下落の大きかった3カ所が記してありました。
この図表2に記してある7カ所を、新聞に着色して示してある地図(図表1)で、一瞥してみますと、これは全国に広く分布しています。この各地の景況判断で「業況が良い」と判断された地域が、全国各地に広く分布していることは、日本の未来にとって、とても好ましいことです。これからの日本は、国をあげ、産業・企業の総力を上げ、国民みんなで一致協力して、この活動を強く推進して行かねばなりません。これが日本の未来を、明るい姿に導いてくれるものだと、私は信じています。
[図表3]
図表3(注5)は「10年間で中心都市の地価は上昇した」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表3 10年間で中心都市の地価は上昇した
順位 2013年比上昇幅
1 大阪市 2.4倍
2 札幌市 2.3倍
3.福岡市 2.2倍
4.名古屋市 2.1倍
5.仙台市 99.0%
6.京都市 97.8
7.那覇市 85.4
8.横浜市 58.9
9.新宿区 55.6
10.広島市 55.3
(注)都道府県庁所在地の地価上昇幅
この図表3(注5)には、2023年時点の2013年比の地価の上昇幅について、47都道府県庁所在地の内、上昇幅の10位以内の地点について記してありました。上位10位の広島市で2013年比で53.3%も地価が上昇しています。ここで第1位は大阪市で札幌市、福岡市、名古屋市がこれに続いています。
[図表4]
図表4(注6)は「基準地価の推移(全用途平均、注2)」と題した図表でした。この図表の左側縦欄には、基準地価の推移(全用途平均)の「0~120万/平方メートル」が記してあります。また、下欄には「1975年から2023年まで」の(年)が記してありました。この縦横軸を用いて「各年度基準地価の推移(全用途平均)」を示す折れ線グラフが記されていました。
この折れ線グラフは3本記されていました。その最上段のグラフは、「三大都市圏」についてのものです。中段は「全国」、最下段は「地方圏」のものでした。
この三段の折れ線グラフの記載パターンは、皆、共通でした。3本のグラフ共、1975年から1985年にかけては、穏やかに上昇していました。これが1985年から1990年にかけては急上昇しました。これが「バブルによる急騰」です。そしてここを頂点として1995年にかけて急降下し、その後は2023年にむけて、穏やかな上昇または、水平飛行をしていました。
三本の折れ線グラフにおける基準地価の推移(注2)の数字を追ってみると、以下です。最上段に記してある「三大都市圏」の基準地価は、1975年の10万円/平方メートルから、1985年には30万円/平方メートルに至り、ここから1990年の120万円/平方メートルに急上昇し(バブル急騰)、ここを頂点として、以下、1995年の40万円/平方メートルまで急落し、さらに2005年~2010年の20万円/平方メートルという低水準の底を経験し、また、2023年の40万円/平方メートルまで回復したのです。
一方、地方圏は、1975年の2~3万円位の水準から1990年の地価高騰時には10万/平方メートルまで上昇しましたが、以下、2023年まで、5万円程度の水準を、地を這うように進んでいるのです。
この図表4を作成しましたので、基準地価というものは、1975年から2023年までを通して見ることが出来ました。そして、これが、この48年間の間に大きく変動していたことがわかりました。
この研究報告の巻頭の一言で「地価の回復が地方に広がっています。国土交通省が9月に公表した2023年の基準地価を市区町村別に見ますと沖縄県などの85市町村で過去最高だったバブル期の1990年を上回りました。新規の工場立地などに加え、子育て環境の整備などで住みやすさを実現した自治体が目立っています。まちづくり「通信簿」にもなっています。」と書きましたが、この図表4で対象とした1975年から2023年に到る50年間の中の、2022年~2023年の2年間は、長い間、引きずってきた「基準地価」の大問題が、大きく変換を始めた、飛び上がるほど大切な変革期なのです。それも、これを牽引しているのは、全国各地の地方圏の人達が頑張って、推進しているのです。でも、この牽引者である「地方圏」の基準地価は、図表4で見ますと「地を這うように、「0」に近い地表すれすれを歩いている存在なのです。この改革が、いかに重いものなのかを思い知らされます。
私は、ずっと永い間、毎週のように、「これは千歳一隅のチャンスです。皆さん頑張ってください。」と書いてきましたが、今日のテーマは、その永年の「頑張り」の中でも「最高峰」のものだと思います。今ここでの、毎日の「一歩一歩の頑張り」が日本の未来を大きく変えていくのです。
日本経済新聞2023年10月28日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、奈良部光則、南畑竜太)を参照・引用して記述。
(注1)合計特殊出生率(Total fertility rate、略称: TFR):人口統計上の指標で、15~49歳までの既婚・未婚を問わない全女性の年齢別出生率を合計したもので、女性人口の年齢構成の違いを除いた「その年の出生率」を意味する。年次比較、国際比較、地域比較に用いられている。一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの子供の人数に相当する。この指標によって、異なる時代、異なる集団間の出生による人口の自然増減を比較・評価をすることができる。TFRがその国の人口置換水準を下回ると、次世代の人口が自然減となる。
(注2)基準地価の推移(全用途平均): 令和5年7月1日時点の価格を調査した結果、1年間の地価動向として、以下の結果が得られた。 【全国平均】 全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。 【三大都市圏】 全用途平均・商業地は、東京圏では11年連続、大阪圏では2年連続、名古屋圏では3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。
(注3)日本経済新聞2023年10月28日の朝刊1面に掲載された図表1、①沖縄県の地価はバブル期を超えた。(注)2023年基準地価(全用途平均)1990年比。出所は国土交通省「都道府県地価調査」(2023年)。
(注4)日本経済新聞2023年10月28日の朝刊1面に掲載された図表2、②1990年比で85市町村が上昇(2023年)。
(注5)日本経済新聞2023年10月28日の朝刊1面に掲載された図表3、➂10年間で中心都市の地価は上昇した。
(注6)日本経済新聞2023年10月28日の朝刊1面に掲載された図表4、④基準地価の推移(全用途平均)。
(1)日本経済新聞、2023年10月28日(1面)。
[付記]2023年11月20日:
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