「日本再生]「地域創生」和牛 質高め「稼げる畜産」に 2023年9月11日 全国肉用牛産出量 10年で8割増 伸びは鳥取県が最高 ゲノム評価導入
- honchikojisitenji
- 2023年9月18日
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続木 碧(つづき あお) 2023年9月(研究報告№080)
「巻頭の一言」
和牛の生産が拡大しています。世界的な「和牛ブーム」を受けて輸出は急増し、訪日客などからの人気も高まっています。2023年までの10年間で和牛など肉用牛の生産額が全国で最も伸びた鳥取県は、ゲノム解析など先端技術を駆使して質向上を加速しています。生産者の高齢化や資料価格の高騰といった逆風もありますが、「稼げる畜産」の実現に向けた努力が各地で続いています。
「地域創生」和牛 質高め「稼げる畜産」に 全国肉用牛産出量 10年で8割増 伸びは鳥取県が最高 ゲノム評価導入
「地域創生」和牛 質高め「稼げる畜産」に 全国肉用牛産出量 10年で8割増 伸びは鳥取県が最高 ゲノム評価導入
ここでは日本経済新聞の2023年8月19日2面の記事を紹介します。
[はじめに]
農林水産省によりますと、2021年の肉用牛の総産出額は8232億円と10年間で8割近く増えました。黒毛和種など日本の在来種をもとにした和牛は肉用牛の飼育頭数の7割を占めます。適度なサシ(脂肪交雑、注1)が入った肉質は国内外で支持されており、2022年の牛肉輸出額は520億円と10年で10倍に急増しました。
各地でブランド化が進み、質も向上しています。日本食肉格付協会によりますと、最高ランクのA5の割合は2022年に約5割と10年間で3倍になり、取引価格も中長期で上昇傾向です。
[鳥取県]
鳥取県は2021年の肉用牛の産出額が10年前の2.4倍になりました。「神戸牛」などに比べてブランド力は高くないのですが、良質の子牛を他県に供給して生産を広げています。2017年に、県の種雄牛が肉質日本一に輝くと、県産の子牛の取引価格が上昇しました。県畜産試験場は全国に先駆けてゲノム評価技術(注2)を導入しました。優良な遺伝子の子牛を素早く見極めて繁殖用の母牛とすることで、質向上のスビードを上げています。
生産者の意欲も高まり、競り市場に集まる子牛は年2800頭と10年で1.7倍に増えました。栃木県からの競り参加者は「ゲノム評価が高い子牛は良い成牛に育つ可能性が高く安心感があります」と話しています。
鳥取県の生産者も高齢化が深刻ですが、最近では後継者や新規参入者がかなり現れてきています。同県倉吉市で2016年に子牛を生産する繁殖農家となった野儀増弘さん(40)は、「子牛の価格上昇で先行きに希望が持てるようになりました」と話しています。
[千葉県]
伸び率2位の千葉県は酪農発祥の地ともされており、現在も乳用牛の飼育が盛んです。同県の肉用牛は、肉用牛と乳用牛とをかけ合わせた交雑種が主力ですが、県は肉用牛に優秀な黒毛和種の受精卵を移植して「和牛」を産ませる技術の導入を支援しています。
乳用牛の子牛より、子牛の取引価格が高くなる和牛の子牛を産めば、激しい環境が続く酪農家の収入アップにつながります。県は「酪農家の選択肢が増えた」としており、県産肉用牛に和牛の占める割合は2021年に29%と10年で5ポイント上昇しました。
[宮崎県]
「和牛の先進地」の宮崎県は1990年に米国向け輸出を始めるなど、早くから輸出インフラの整備に力を入れてきました。JA宮崎経済連は、県内の食肉処理施設で輸出相手国・地域の認定を取得しています。香港や台湾など輸出先も広がっており、2022年度の輸出量は過去最高となっています。
生産現場の高齢化にも対応しています。母牛への受精や子牛の育成を代行する施設を整備し、農家の負担を軽減しています。JA宮崎中央の中森和幸畜産部長は「高齢の農家に少しでも長く効率的に飼育してもらえるように支援して行きます」と話しています。
[この項のまとめ]
帯広畜産大学の岩本博幸教授は「飼育価格の高騰と担い手不足で畜産経営を取り巻く環境は厳しい。持続的な成長にはコストダウンとさらなる高付加価値化が重要になる」と指摘しています。「サシ(注1)の多さという共通目標に向けて改良が進んだ結果、今ではどの地域の和牛も90点以上取れる品質になりました。今後は牛肉本来の肉質や香りなど地域独自のおいしさを追求していく必要があります」と話しています。(日本経済新聞8月19日朝刊2面(金子貴大、有年由貴子、蘇我真粧巳)を参照引用して記述。)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年8月19日の日本経済新聞2面の記事には、三つの図表が記載されていました。「①肉用牛の産出額は鳥取県や千葉県の伸びが大きい。(注)2021年の肉用牛の産出額を2011年と比較。出所は農林水産省「生産農業所得統計」。②肉用牛の産出額は鹿児島県がトップ。➂和牛人気の高まりで輸出は急増。(出所)貿易統計。
[図表1]
図表1(注3)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、「2021年の各都道府県肉用牛の増加産出額」を、茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。この結果、2021年の肉用牛の産出額を2021年と比較して、その増加が最も大きかった地域は「2.8倍以上」の地域で、これを色が黒に近い最も濃い茶色に色付けされていました。これが実現できていたのは、1位鳥取県、2位千葉県、3位神奈川県の3県のみでした。次に増加が進んでいた地域は、「1.6~1.8ポイント未満」の地域で、これは黒に近い濃い茶色に斜線を入れて記してありました。これは福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、福井県、岩手県,秋田県、山形県、福島県の9県でした。
また、三番目に増加が進んでいる地域はかなり多く、全国で19カ所ありました。すなわち、三番目に増加が進んでいたのは、青森県、岩手県、宮城県、栃木県、群馬県、東京都、山梨県、新潟県、石川県、滋賀県、三重県、和歌山県、兵庫県、岡山県、香川県、福岡県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県の1都18県でした。この肉用牛の改革は、全国に広く浸透していました。日本の肉用牛の開発は、順調に進んでおり、輸出は急拡大しています。将来にむけて期待される産業分野です。
[図表2]
図表2は「肉用牛の産出額は鹿児島県がトップ」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 肉用牛の産出額は鹿児島県がトップ
2021年の産出額 2011年比伸び率
1 鹿児島県 1240億円 1.51倍
2 北海道 1131 1.82
3 宮崎県 815 1.82
4 熊本県 454 1.49
5 岩手県 280 1.44
・ ・ ・
20 千葉県 107 2.33
・ ・ ・
30 鳥取県 60 2.40
この図表には、全国都道府県の肉用牛の産出額が、第1位から第30位までが列記されていました。この肉用牛の産出量レースでは、九州が優勢でした。上位5位までに、鹿児島県、宮崎県、熊本県の3県が入っています。また、日本列島北部の北海道と東北が食い込んでいます。どうやら、このレースでは、日本列島の南北端が優勢なようです。
[図表3]
図表3は、「和牛人気の高まりで輸出は急増」と題した図表でした。この図表は左側縦欄に、0~500億円の和牛輸出額の目盛が記されており、下側には2012年~2022年の「年」が記されていました。そして、この縦横の交点の数値に従って、棒線グラフが記されていました。
この棒線グラフは、2012年の20億円から2019年の30億円への右肩上がりの「和牛肉輸出」の「順調な増加」を示しており、2020年~2021年には500億円超に急増していました。日本の和牛肉の輸出は、今後、大いに期待されます。(日本経済新聞8月19日朝刊2面(金子貴大、有年由貴子、蘇我真粧巳)を参照引用して記述。)
(注1) サシ(脂肪交雑):牛肉の見た目に関して「(赤身の間に)網目状に走る白い脂肪部分」を表す言葉である。この語は、主に「サシが入る」という形で使用する。この肉の表面に見える網目状の脂肪部分は、専門用語では「脂肪交雑」(しぼうこうざつ)といい、その見た目から「霜降り」(しもふり)という表現もよく用いられる。「サシ」の語源は差し(白い脂肪が紋様のように赤身に差している)からきていると考えられる。しかし、この正確な由来は不明である。
「サシ」の部分は、結局、脂(あぶら)であるため、適切に調理・加熱することで、「肉がとろける」と形容されるような柔らかい歯ごたえとなり、脂の旨味を堪能するのに適する。このため、一般に「サシが入った肉」は高級品とされ、見た目からも上質であることがわかるため、贈り物として選ばれることが多い。
(注2)近年のゲノム評価技術:一般のゲノミック評価は、種雄牛が子牛の段階で検査可能であるが、信頼性は50%と後代検定に比べて低い。 そこで、近年のゲノミック評価は実際に娘牛を持たない若齢種雄牛について、DNA上の特定の塩基配列の型と従来の遺伝的能力情報を基に泌乳能力や体型評価値を推定する。
(注3)日本経済新聞2023年8月19日2面に掲載された図表1「肉用牛の産出額は鳥取県や千葉県の伸びが大きい。(注)2021年の肉用牛の産出額を2011年と比較。出所は農林水産省「生産農業所得統計」。
(1) 日本経済新聞、2023年8月19日(2面)。
[付記]2023年9月11日:
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