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「日本再生]「地域創生」全国自治体の寄付額 3年連続最高 2023年10月30日 稼ぎ頭は400人の村 ふるさと納税「黒字」自治体の3倍 和歌山県北山村 英語教育の原資に

続木 碧(つづき あお) 2023年10月(研究報告№086)

「巻頭の一言」

 ふるさと納税(注1)による全国自治体への寄付額が2022年度は9654億円と、3年連続で過去最高を更新しました。都市部では税金の流出が膨らみ、返礼品競争にも批判はありますが、財政基盤の弱い自治体には貴重な財源です。各市区町村の住民1人あたりの収支をみますと「稼ぎ頭」は人口400人の和歌山県北山村でした。

日本経済新聞2023年10月7日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、高尾泰朗)を参照・引用して記述。


「地域創生」全国自治体の寄付額 3年連続最高 稼ぎ頭は400人の村 ふるさと納税「黒字」自治体の3倍 和歌山県北山村 英語教育の原資に

 

「地域創生」全国自治体の寄付額 3年連続最高 稼ぎ頭は400人の村 ふるさと納税「黒字」自治体の3倍 和歌山県北山村 英語教育の原資に

ここでは日本経済新聞の2023年10月7日朝刊の1面の記事を紹介します。


[はじめに]

 総務省の「ふるさと納税に関する現況調査」から2022年度の市町村ごとの実質収支を算出しました。受け入れた寄付額から他の自治体に寄付して流失した控除額と、寄付を得るためにかかった経費を差し引きました。人口1人あたり1万円以上の「黒字」だった自治体数は449で、経費を把握できる2016年度の3倍です。うち9割が人口5万人以下でした。


[和歌山県北山村]

 「ふるさと納税」による人口1人当たりの黒字が、最も大きかったのは和歌山県北山村で、122万2838円に達しました。この村は紀伊半島の山あいにあります。また、北山村は和歌山県とは接しておらず、奈良県と三重県に囲まれた全国唯一の飛び地の村です。人口は全国有数の少なさで過疎が進んでいます。この地がふるさと納税の収益を高めた背景には、村に自生する絶滅寸前のかんきつ類「じゃばら」の復活劇がありました。

 特産化へ唯一残る原木から作付面積を広げました。2001年に自治体では、当時異例の楽天市場で果実や加工品のネット通販を始めたことが突破口となり、生産者は34戸に増えました。顧客目線をふるさと納税にも生かし、2017年には返礼品の翌日配送を始めました。

 村は小学校に英語圏の教員を招くなど英語教育を重視しました。中学生になると海外への語学研修に出かけましたが、ここで貴重な発見をしたのです。村の地域事業課の話によりますと、「外から人を呼び込むためには、寄付を活用して渓谷などの大自然を楽しめる体験型観光を拡充すること」が、なんとしても必要だったのです。

[北海道 白糠町]

 2位は北海道東部の太平洋に面した白糠町の(104万9194円)です。同町も、県内の主力の1次産品を町自ら電子商取引で扱ってきた営業感覚を、ふるさと納税に生かしたのです。町税は10億円足らずですが、イクラなどの返礼品の人気から2022年度の寄付額は150億円に迫り、全国市区町村で4位になりました。棚野孝夫町長は「子や孫のために使い道を考える」と強調しています。

 2022年に開校した小中一貫の義務教育学校「白糠学園」の整備にも寄付を用いました。町は保育料や18歳までの医療費、給食費を無償にし、出産祝い金なども手厚く支給しました。転入ゼロだった子育て世帯も、2018年~2022年には、転入を呼び込みました。

[佐賀県]

 都道府県全体では、佐賀県が2万4549円で、黒字が最も大きかったのです。県内の全20市町村の内、上峰町が61万5228円で、突出していました。返礼品にそろえたブランド牛や米の人気に加え、2020年に町が公開した「鎮西八郎為朝」の反響が寄付に結びついたのです。危機的だった町の財政は、2023年4月から高校生までの医療費を完全無料化できるほどに改善しました。武広勇平町長は、「幅広い公共サービスの提供が可能となった」と述べています。


[この項のまとめ]

 制度運用から15年を経た、この「ふるさと納税による自治体への寄付制度」には課題も多いのです。返戻金次第では寄付格差が広がります。まだ、仲介サイトの手数料など、経費負担も増加します。

 総務省は2023年10月、「経費」を寄付額の5割以下とする、「経費基準」の改革を実施しました。新基準に沿って返礼品の内容など経費の適正化が進めば黒字の自治体が増加するものと思われます。京都府は、府内市町村と募った寄付を分け合う制度を10月から導入して、府全体の底上げを狙っています。

 ふるさと納税に詳しい慶応大学の保田隆明教授は「都市住民の関心を地方に向ける趣旨は実現できている。各自治体は、産業育成や交流・関係人口を増やための『投資』に、もっと繋げてほしい」と話しています。

日本経済新聞2023年10月7日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、高尾泰朗)を参照・引用して記述。

 

[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2023年10月7日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、三つの図表が記載されていました。①2022年度ふるさと納税1人あたりの実質収支。1人当たり実質収支=(寄付受け入れ額-経費-控除額)/人口。(出所)総務省、2023年度[ふるさと納税に関する現況調査]。②市区町村別では北海道の自治体が上位を占める。➂1人当たりの実質収入が1万円以上の自治体数。


[図表1]

図表1(注2)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、2022年度のふるさと納税の1人当たりの実質収支を「黒・緑・茶色の濃淡」で塗り分けて示してありました。これによりますと、1人あたりの実質収支が最高の地域は「1万円以上の黒字の地域」で、これが実現できていた地域は、1位佐賀県、2位宮崎県、3位山形県以下、北海道、山梨県、鹿児島県の1道5県の6カ所でした。

2番目に黒字が大きい地域は、1人あたりの収支が「5000円以上1万円未満の黒字の地域」で、黒緑色の斜線で記してありました。これが実現されていた地域は、岩手県、新潟県、福井県、和歌山県、高知県、熊本県の6県でした。

結局、1人当たりの実質収支の黒字が大きい地域は全国で合計12カ所でした。


これに続く地域、「5000円未満の黒字の地域」は、濃い緑色に塗り分けてありました。これが実現できていた地域は15カ所です。それは以下です。青森県、秋田県、宮城県、茨城県、静岡県、長野県、岐阜県、鳥取県、島根県、香川県、愛媛県、大分県、福岡県、長崎県、沖縄県です。すなわち、この15カ所の自治体は、一人当たりの実質収支の黒字は、1人あたり5000円未満で、まだ少額ですが、黒字を維持していました。


これで黒字になっている自治体は、全国で27カ所(57%)でした。残りの20カ所(43%)が赤字の地域(5000円未満の赤字の地域と5000円以上の赤字の地域)でした。この中で2カ所だけが、1人あたりの赤字が5000円以上の赤字最大の地域でした。それは東京都と神奈川県です。


この図表1を、良く観察してみますと、以下のことが判りました。2022年度の「ふるさと納税1人当たりの実質収支で、最も黒字が大きかった処(1万円以上の黒字)の自治体に、これに次いで黒字の大きかった処(5000円以上、1万円未満の黒字)の自治体を加え、さらに頑張って、やっと黒字を確保した自治体を加えた「黒字地域」は、概観しますと、三つの地域から成っていました。すなわち①日本列島北部(北海道と東北)。②列島南部(九州・四国と山陰)。列島中西部(本州の長野等の以西、関西の一部まで)です。


一方で赤字の地域(茶色の濃淡の地域)は、本州に広く拡がっており、特に淡い茶色の地域(5000円未満の赤字の地域)は華やかな色合いに染まっているため、地図上で良く目立ちました。そのため、この列島図は、あたかも「淡い茶色の列島」のようであり、そこに黒っぽい三集団が点在しているかのようでした。この淡い茶色の地域が「5000円未満の赤字」から「5000円未満の黒字」に転換してくれれば、日本国全体の実質収入は、大きく向上するだろうと期待できるのです。

それと、もう一つ、日本の未来を常に牽引してきた世界の大都市東京都が、ここでは最下位でした。人口が桁外れに多く、一人一人の努力で一人一人の実収入を引き上げるのには、大変なエネルギーがいるのだと思いますが、ここでのひと頑張りが、なんとしても、欲しいのです。日本国をあげ、東京都という「地域都市」の総力を結集して、なんとか、頑張ってください。ここでの頑張りが、日本国の未来の前進を、必ず牽引するはずです。日本経済新聞2023年10月7日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、高尾泰朗)を参照・引用して記述。


[図表2]

図表2(注3)は「市区町村別では北海道の自治体が上位を占める」と題した図表でした。これを以下に記します。


図表2 市区町村別では北海道の自治体が上位を占める


  (▲は赤字)自治体名       市町村名      1人当たり実質収支

       1 和歌山県     山北村       122万2838円

       2 北海道      白糠町       104万9194

       3 佐賀県      上峰町        61万5228

       4 北海道      紋別市        48万3

       5 北海道      根室市        37万3382

       6 北海道      弟子屈町       34万1210

       7 高知県      芸西町        31万2228

1738 東京都      中央区        ▲1万9324

1739 兵庫県      洲本市        ▲2万4823

    1740 東京都      千代田区       ▲2万5580

    1741 東京都      港区         ▲2万6210


 この図表には、2022年度の各地の市区町村別の1人当たり実質収支について、その多い順に1位から7位まで、また、赤字(▲で示す)については、その最下位から4カ所について、記していました。


 これをみて、まず驚いたのは、黒字額のベスト7に入った自治体(市区町村)として、北海道が凄く多かったことです。ベスト7の中で実に4カ所を占めていました。

 また、全国1741市区町村の中で、最大の赤字(▲で示す)を計上したのは、天下の東京都の千代田区と港区でした。これまで、多くの場面で、政治的・経済的大改革を、常に牽引してきた千代田区と港区が最下位賞を競うとは、やはり驚きました。これには、よほど深い理由があるものと思われます。


[図表3]

 図表3(注4)は、「1人当たりの実質収支が1万円以上の自治体数」と題した図表でした。この図表の左側縦欄には自治体数を示す0~100の数値が記してありました。また、下欄には2016年度から2022年度までの「年度」が記してありました。この縦横軸を用いて、「各年度の1人当たりの実質収支が1万円以上の自治体数」を示す棒グラフが記されていました。この棒グラフを見ますと2016年度の150自治体から、2022年度の450自治体に向けて、一万円以上の自治体数は、着実に増えています。この7年間に3倍に増えました。

さらに、この棒グラフを丁寧に見ますと、2016年度から2018年度にかけては、年間増加数は43程度であり、2019年度から2022年度にかけては、年間増加数は123程度に増加しています。年間増加数は2.6倍に伸びています。日本経済新聞2023年10月7日、朝刊、1面記事(瀬口蔵弘、高尾泰朗)を参照・引用して記述。



(注1)ふるさと納税とは、日本で2008年5月から開始された、都市集中型社会における地方と大都市の格差是正・人口減少地域における税収減少対応と地方創生を主目的とした寄附金税制の一つ。法律で定められた範囲で地方自治体への寄付金額が所得税や住民税から控除される 。


(注2)日本経済新聞2023年10月7日の朝刊1面に掲載された図表1、①2022年度ふるさと納税1人あたりの実質収支。1人当たり実質収支=(寄付受け入れ額-経費-控除額)/人口。(出所)総務省、2023年度[ふるさと納税に関する現況調査]。


(注3)日本経済新聞2023年10月7日の朝刊1面に掲載された図表2、②市区町村別では北海道の自治体が上位を占める。


(注4)日本経済新聞2023年10月7日の朝刊1面に掲載された図表3、➂1人当たりの実質収入が1万円以上の自治体数。


(1)日本経済新聞、2023年10月7日(1面)。

[付記]2023年10月30日:

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