「日本再生]「地域創生」ラクビー熱 W杯の遺産 2023年10月2日 昨年度観戦率 全国で14.8% 大分県・岩手県高く 街おこしでスクラム
- honchikojisitenji
- 2023年10月2日
- 読了時間: 8分
続木 碧(つづき あお) 2023年10月(研究報告№083)
「巻頭の一言」
ラクビーのワールドカップ(W杯)フランス大会が開幕し、日本代表は2023年9月10日に、チリ代表との1次リーグ初戦で快勝しました。前回の2019年の日本大会は、12会場での熱戦に、延べ170万人の観客が国内外から集まりました。会場になった大分県や岩手県では、ラクビー熱は、今でも高いのです。また、地域おこしに生かす動きは、各地で広がっています。
「地域創生」ラクビー熱 W杯の遺産 昨年度観戦率 全国で14.8% 大分県・岩手県高く 街おこしでスクラム
「地域創生」ラクビー熱 W杯の遺産 昨年度観戦率 全国で14.8% 大分県・岩手県高く 街おこしでスクラム
ここでは日本経済新聞の2023年9月9日朝刊の2面の記事を紹介します。
[はじめに]
スボーツ庁による「スポーツ実施状況等に関する世論調査」によりますと、2022年度にラクビーをテレビや競技場で観戦した人の割合は14.8%でした。都道府県では、大分県(22.2%)、岩手県(18.8%)、奈良県(18.0%)が上位でした。現地観戦の割合は、野球やサッカー、マラソンに次いで高いのです。
[大分県]
前回W杯で5試合が開かれた大分県は、ラクビー文化の継承や試合誘致などに力をいれています。2023年度予算に計4500万円を計上しました。幼稚園や小学校でラクビー教室を毎年100回ほど開催し、多数の小学生を国内リーグに招きます。ファン拡大へプレーの迫力を眼前で体験できる装置も製作しました。県芸術文化スポーツ振興課の担当者は、「今回のW杯を機に改めて県民に興味を持ってもらいたい」と話しています。
大分県には50年以上続くラクビースクールがあり、国内最高峰「リーグワン(注3)」の「横浜キャノンイーグルス」が第2拠点とするラクビーが根付いています。そんな大分県でも、中学校のラクビー部が一時途絶えましたが、2019年に別府市で学校を超えてチームをつくる「拠点校方式」により復活しました。これは豊後高田市や臼杵市などにも広がっています。
[岩手県]
岩手県釜石市は、日本選手権で7連覇を果たした新日鉄釜石ラクビー部の記憶から「ラクビーのまち」を掲げています。震災復興の旗印でもある「ワンフォーオール、オールフォーワン(注4)」というラクビー精神は復興の町づくりと相通じると野田武則釜石市町は述べています。
津波で壊れた学校跡に立つ「釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム」は、東北唯一のW杯会場です。ここは新日鉄釜石の歴史を継ぐリーグワン(注3)の「釜石シーウェイブズ」の拠点でもあるのです。市民らでつくる「釜石ラクビー応援団」が市と設けた動画チャンネルの試合配信を、多いときは2万人の人々が見ているのです。
市は知名度やW杯のレガシー(注1)などを生かして幅広い世代を呼び込んでいます。スタジアムのラクビー体験を盛り込んだ修学旅行のプランでは、県内の中学校から2022年度には1600人を受け入れました。
[奈良県]
奈良県の天理市・御所(ごせ)市では、強豪校の存在を、人の交流と結びつけています。天理市では、2023年6月、天理大学ラクビー部の試合観戦ツアーを開催しました。ここではラクビーボールの楕円形の器入りの弁当がつき、学生部員が初心者も楽しめるように解説しました。天理市スポーツツーリズム(注2)推進協議会の田中啓之氏は「市内の観光資源を組み合わせて、活性化につなげたい」と期待しています。
御所(ごせ)市では、2023年7月の「御所ラクビーフェスティバル」が根付いています。これは全国大会で優勝4回の県立御所(ごせ)実業高校のラクビー部員らが30年前から実施しているのです。ここには全国から40校が集い対戦します。飲食・物販の出店など地域ぐるみのイベントに育ち、2023年は週末に、5000人を集めました。
[この項のまとめ]
2022年に始まった「リーグワン(注3)」は、チームによる「トップリーグ」を、2023年には「自治体ワンチーム」に衣替えしました。これはラクビーによる地域振興で、地域が連携しようと2020年に発足した協議会が発展したのです。現在150自治体が加盟しています。県単位でみますと、静岡県が、県を含めて18自治体が参加しており最多です。
W杯会場になった袋井市のスタジアムでは、五輪種目である女子7人制ラクビーの全国大会を開催して、その普及を後押ししています。前回のW杯の経済効果は、過去最高の6464億円でした。この夢舞台の再招致も、いま、凄く期待されているのです。日本経済新聞2023年9月9日、朝刊、2面記事(瀬口蔵弘、朴相五、高田哲生)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年9月9日の日本経済新聞の朝刊2面の記事には、三つの図表が記載されていました。①一年間でラクビーを現地、テレビで観戦した人の割合。(出所)スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」から観戦割合を合算。②地域振興にラクビーを活用 静岡県は自治体の5割で推進。➂競技人口は減少傾向だが女性は増加。
[図表1]
図表1(注5)は、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、「2022年のラクビー観戦について「現地ならびにテレビで観戦した人の割合」を、スボーツ実施状況等に関する世論調査から調査し、割合を推算して、その観戦割合を茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。この結果、2022年のラクビーの観戦割合が、最も大きかった地域は「20.0%以上」の地域で、これは色が「黒に近い」最も濃い茶色に色付けされていました。これが実現できていたのは、1位大分県のみです。
次に観戦割合が多かった二番目に多かった地域は「15~20%未満」の地域で、これは濃い茶色で染めてありました。これは2位岩手県、3位奈良県以下、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、福井県、京都府、大阪府、兵庫県、愛媛県、福岡県、長崎県、鹿児島県の1都2府14県の計17地域でした。
ラクビーの現地並びにテレビ観戦が三番目に多かった地域(10~15%未満)を加えると、ラクビー観戦を人々に勧める活動は、全国に広く広がっていました。でも、特に進んでいた地域(最も多かった地域+二番目に多かった地域)は、関東・関西地方に集中していたのです。
今後は、三番目に進んでいる1道22県(23カ所)の一層の普及を進めることが重要と思われます。また、全国で一番進んでいる処も、未だに20%です。これを40~50%に引きあげることが、さらに重要です。
[図表2]
図表2は「地域振興にラクビーを活用 静岡県は自治体の5割で推進」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 地域振興にラクビーを活用 静岡県は自治体の5割で推進
参加自治体数 割合
1 静岡県 18% 50、0%
2 神奈川県 18 29.4
3 岩手県 8 23.5
4 埼玉県 15 23.4
5 東京都 12 19.0
6 大阪府 8 18.2
7 大分県 3 15.8
この図表には、2022年時点での全国都道府県での参加自治体数と割合(%)が
第1位から第7位まで記されていました。これは、スポーツ庁の「スポーツ実施に関する世論調査」から観戦割合を合算して計算したものです。その割合の第1位は、静岡県で50%でした。
[図表3]
図表3は、「競技人口は減少傾向だが女性は増加」と題した図表でした。この図表の左側縦欄には0~10万人の競技人口数の目盛が記してあり、下欄には2015年度から2022年度までの「年度」が記してありました。この縦横軸を用いて、各年度の競技人口の推移を示す棒グラフが書いてありました。この棒グラフでは、競技人口は2015年度から2022年度に向けて、僅かずつ毎年度、減少していました。
また、この図表の上段に「女性の増加」を示す折れ線グラフが記してありました。さらにこの図表の右側には、3500人~5000人の女性人数の数値が記してありました。これと下段の年度を用いて、各年度の女性人数を折れ線グラフで記していました。この折れ線グラフは右肩上がりで、女性の年々の増加が示されていました。日本経済新聞2023年9月9日、朝刊2面記事(瀬口蔵弘、朴相五、高田哲生)を参照・引用して記述。
レガシーの語は日本では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの準備を進める2010年代半ば以降に、使用頻度が上がった言葉である。オリンピック・レガシー:オリンピックのような大規模な競技大会後には、開催地に長期的な影響がもたらされる。
(注2)スボーツツーリズムとは、スポーツをメインの目的にした観光旅行を意味する。スポーツと旅行を組み合わせた新しい観光スタイルが注目され、今多くの自治体や観光名所でスポーツツーリズムが取り入れられている。 スポーツツーリズムでは、スポーツの「観戦」「参加」「交流」などが目的となり、その地域や観光内容に合わせてあらゆる施策やイベントが取り入れられる。
(注3)リーグワン:リーグワンの正式名称は、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEである。 その「ONE」は、ラグビー日本代表の代名詞であり、2019年の流行語大賞にもなった。
(注4)ワンフォーオール、オールフォーワン(One for All, All for One)、この言葉は2019年のラグビーワールドカップを機会に有名になった言葉の1つある。この言葉の意味は、「1人は全員のために、全員は1人のために」と言うように誤解されることが多いが、本来の意味は「1人は全員のために、全員は1つの目標のために」と言う意味である。
(注5)日本経済新聞2023年9月9日の朝刊2面に掲載された図表1、①一年間でラクビーを現地、テレビで観戦した人の割合。(出所)スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査」から観戦割合を合算。
(注6)日本経済新聞2023年9月9日の朝刊2面に掲載された図表2、②地域振興にラクビーを活用 静岡県は自治体の5割で推進。
(注7)日本経済新聞2023年9月9日の朝刊2面に掲載された図表3、➂競技人口は減少傾向だが女性は増加。
(1)日本経済新聞、2023年9月9日(2面)。
[付記]2023年10月2日:
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