「日本再生]「地域創生」「駅のない街」に1180万人 2024年2月19日 4キロ圏外 人口減進む 福島県郡山市 新駅軸に住宅・産業集積
- honchikojisitenji
- 2024年3月2日
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続木 碧(つづき あお) 2024年2月(研究報告№099)
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「巻頭の一言」
全国の鉄道の存廃議論が広がるなか、自宅から最寄りの駅まで徒歩1時間以上の住民が総人口の1割弱にあたる1180万人いることが分かりました。交通アクセスが相対的に悪い「駅がない街」は人口減少のスピードが速いことも判明しました。人口減に歯止めをかけようと、新駅誘致や既存駅周辺の再強化など駅を軸にした活性化に力をいれる自治体が増えています。
日本経済新聞2023年2月3日、朝刊、1面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。
「日本再生]「地域創生」「駅のない街」に1180万人 4キロ圏外 人口減進む 福島県郡山市 新駅軸に住宅・産業集積
「日本再生]「地域創生」「駅のない街」に1180万人 4キロ圏外 人口減進む 福島県郡山市 新駅軸に住宅・産業集積
ここでは日本経済新聞の2024年2月3日1面の記事を紹介します。
[はじめに]
国土交通省の国土数値情報に登録された2022年時点の駅の位置情報と、2020年推計の500メートル四方の人口データを組み合わせて独自に分析しました。具体的には、駅から半径4キロメートル(徒歩1時間、自転車で15分程度)の圏内と圏外の人口を重複を除きながら算出して、市区町村ごとに集計しました。全体の人口に占める圏内、圏外の割合の10年間の変化を比較しました。
[沖縄県と佐賀県、鉄道アクセス困難人口の減少最大]
半径4キロメートル圏外の、鉄道アクセス困難者の人口を、都道府県別にみると、沖縄県が2022年55.5%と10年間で6.4%を減らし、佐賀県も2.9%を減らしました。市区町村別でも両県が上位を占めました。沖縄都市モノレールの延伸や西九州新幹線の開業という「新線効果」が大きいのです。
ただ、人口減や高齢化が進む地方都市で、これから新しい鉄道を建設するのは現実的ではないのです。そこで、自治体が既存路線に新駅を誘致したり、現在ある駅周辺の魅力を高めて人口集中を進めたりする動きが広がっています。
[福島県郡山市]
福島県郡山市は、20億円の事業費を負担し、2017年にJR磐越西線に「郡山富田駅」を誘致しました。駅周辺では住宅建設が進み人口も増加傾向です。品川萬里市長は「駅が地域にもたらす利便を実感した」と話していました。医療機器の開発拠点が整備され、地域の中核病院も駅前への移転を決めました。「郡山から県内全域に高度な医療を提供するという市の構想が実現しやすくなったのです。
[静岡県磐田市]
静岡県磐田市でも、市などが事業費を負担してJR東海道線の御厨駅が2020年に誕生しました。市は先行して駅周辺の3地区で合計105ヘクタールの区画整理事業も進めており、全て完了すれば3地区の人口は7000人になり、従来の5倍に増えます。
[岡山県瀬戸内市]
新駅ではなく既存駅周辺に人を集めることで、アクセス困難者を減らす自治体もあります。鉄道アクセス困難者の減少幅が12位の岡山県瀬戸内市は、15億円を投じて、赤穂線の邑久、長船、大富の3駅で駅前広場などの整備を進めました。「駅前のイメージを高めて住宅開発などを促す」と同市の担当者は言っています。実際に市全体の人口は減るなかで駅周辺は増えています。
[北海道]
赤字ローカル線の存廃議論が全国で表面化するなか、先行して路線や駅の廃止が進む北海道では、駅がない道内自治体が、半数に迫っています。代替バスでさえ運転手不足で廃止になるケースもあるのです。駅に頼れない多くの自治体は、デマンド型交通(注1)やライドシェア(注2)など、新たな交通手段を模索しています。
[この項のまとめ]
今回の分析では、4キロ圏内の人口が、10年前に比べて2・3%減だったのに対し、圏外は10.1%減ったということもわかりました。人口減少を少しでも抑えるためには、鉄道以外の手段を含めて、圏外地域での交通網を維持・再構築することが欠かせないのです。
公共交通に詳しい関西大学の宇都宮淨人教授は、「路線や駅の存続論が増えていますが、ただ駅を残せばいいわけではなく「使える駅」にしなければ意味がありません。そのためにも、自治体が関与していく必要があります」と話しています。
日本経済新聞2023年2月3日、朝刊、1面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照・引用した2024年2月3日の日本経済新聞の朝刊1面の記事には、三つの図表が記載されていました。①九州は新線効果で「鉄道アクセス困難者」の割合を減らした。(注)鉄道駅から半径4キロ圏内に住んでいない割合を、2022年時点の駅と2012年時点の駅で比較した。人口は国土交通省のデータにもとづく。②「駅のない地域」の人口割合が減った自治体。(注)同じ値の場合、少数点第2位以下で順位づけ。➂周辺人口が増えた主要駅。(注)2022年と2012年の路線名・駅名が一致する4キロ圏内人口1万人以上の駅などを比較。
[図表1(鉄道駅アクセス困難者数の減少へ向けて)]
図表1(注4)には、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、ここには「九州は新線効果で『鉄道アクセス困難者』の割合を減らした。」と題した図表が示されていました。ここでは、鉄道駅から半径4キロ圏内に住んでいない住民の割合を、2022年時点と2012年時点の駅で比較しています。
そして「各都道府県」別の「鉄道アクセス困難者」の減少について、減少率が大きい処から小さい処へと4段階にわけ、日本列島の地図を色分けして示していました。
その色分けは以下です。①「鉄道アクセス困難者」の3%以上の減少地域(黒茶色)、②2~3%未満の減少地域(濃い茶色の斜線)、➂1~2%未満の減少地域(赤)、④1%未満の減少地域(淡い赤)、⑤増加(青)。
ここで「鉄道アクセス困難者」の減少が最も大きかった処(3%以上の減少、第1群)は黒茶色に塗ってあった処で、沖縄県1カ所だけでした。また、「鉄道アクセス困難者」の減少が、次に大きかった処(2~3%未満の減少の地域、濃い茶色の斜線、第2群)は2位佐賀県と3位鹿児島県の2カ所でした。
ここまで、「鉄道アクセス困難者」を顕著に減少させることができた地域は、第1~2群加えて僅か3カ所なのです。全体に対する構成比は、僅か6.5%にすぎません。
そして、次に続いて「鉄道アクセス困難者」の減少が多かった処1~2%未満の減少、(赤、第3群)に進みますと、ようやく、その数が多くなります。
それは以下です。青森県、秋田県、福島県、石川県、岡山県、広島県、山口県、大分県、長崎県、宮崎県、熊本県、徳島県、愛媛県、高知県の14カ所です。第1、2、3群の合計で全体の30.4%になります。
さらに、次の段階に進みますと、このグループは、「鉄道アクセス困難者」の減少活動に、やっと参加できているグループです。
この第4グループに、入っている自治体は、以下です。これは山形県、新潟県、富山県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、山梨県、長野県、岐阜県、滋賀県、三重県、奈良県、和歌山県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、福岡県、香川県25カ所となり、全体の54.3%を占めます。
ここまでに記してきました「鉄道駅から半径4キロ圏内に住んでいない住民の割合を減らす活動」での実績を、通観してみますと、以下のことが言えます。
「鉄道アクセス困難者」の減少活動で、減少幅が最少レベルである「1%未満の減少」(淡い赤)の処(第4群)の都道府県の数は、25カ所あります。これは全国の54.3%に当たります。
すなわち、「鉄道アクセス困難者」の減少活動に、やっと参加出来た初心の地域が過半数を占めているのですから、この改革運動は、まだ、出発直後なのです。大多数の都道府県の「鉄道アクセス困難者」の減少の成果は、まだ、成果が出始めた処なのです。
しかし、全国に広くしっかりと拡大しており、出発時点としては、極めて好調といえます。
「鉄道アクセス困難者」が増加してしまった地域(青)が4カ所あります。北海道と岩手県、宮城県、島根県です。でも、ここでのアクセス困難者減少組への未参加は、たった4地域です。残りの42地域(91.3%)が、参加してこの改革が開始されているのです。
「鉄道駅から半径4キロ圏内に住んでいない住民の割合を減らす活動」は、全国一斉でスタートしました。
ここで出発したこの活動を、早急に大きなうねりに育てて行かねばなりません。今は、極めて重要な時なのです。なんとしても、大きなうねりに育てて、日本の人口減少の進行を阻止しなければなりません。
[図表2]
図表2(注5)は「駅のない地域の人口割合が減った自治体」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 「駅のない地域の人口割合が減った自治体」
順位 都道府県 減少ポイント
1 嬉野市(佐賀県) 60.9
2 宣野湾市(沖縄県) 59.1
3 中城村(沖縄県) 37.7
4 西原町(沖縄県) 31.6
5 浦添市(沖縄県) 12.0
6 郡山市(福島県) 6.3
7 古座川町(和歌山県) 4.4
8 北川村(高知県) 3.5
9 磐田市(静岡県) 3.4
10 高野町(和歌山県) 3.4
(注)同じ値の場合、小数点第2位以下で順位付け。
この図表を見て、私は驚きました。沖縄県が上位にぞろぞろと並んでいるのです。「駅のない地域の人口割合」の減少競争で2位だった佐賀県も、ここで第1位に座っています。
この競争レースでは、やはり、鉄道新線建設の効果が絶大なのです。
[図表3]
図表3(注6)は「周辺人口が増えた主要駅」と題した図表でした。この図表には、駅名(路線名)と増加率(%)が記してあり、増加率の大きい順に記述してありました。以下に示します。
図表3 「周辺人口が増えた主要駅」
順位 駅名(路線名) 増加率(%)
1 研究学園駅(つくばエクスプレス) 16.4
2 つくば駅(つくばエクスプレス) 15.5
3 沼の端駅(千歳線、室蘭線) 11.4
4 国際展示場駅(りんかい線) 11.4
5 有明駅(ゆりかもめ) 11.4
この図表3を見ていますと、「つくばエクスプレス」「りんかい線」「ゆりかもめ」と近年、産業改革で建設された鉄道新線の名前が並んでいます。やはり、「駅のない地域の人口割合減少」の推進では、鉄道新線の建設が、とても貴重なのです。(注)2022年と2012年の路線名・駅名が一致する4キロ圏内人口一万人以上の駅などを比較。
結局、人口減少に歯止めをかけるには、各地域の鉄道の見直しが、何をおいても、まず第一に重要です。
日本経済新聞2023年1月27日、朝刊、1面記事(桜井佑介)を参照・引用して記述。
(注1)デマンド型交通(Demand-responsive transport, DRT)とは、利用者の予約に応じる形で、運行経路や運行スケジュールをそれに合わせて運行する地域公共交通のこと。
(注2)ライドシェア: 自動車に相乗りすること。交通渋滞の緩和や,環境負荷の低減などを目的とした相乗りをさす。燃料費や交通費は同乗者が分担する。
(注3)実質賃金とは: 働く人が受け取る賃金から物価の影響を除いたもの。賃金の額面が同じでも物価が上がれば購入できるモノやサービスは減り、物価が下がれば購入できるモノやサービスが増える。実質賃金は、額面ではなく正味の購買力を表し、個人消費の動向に影響する。働く人が受けとる額面を示す名目賃金を消費者物価指数で割って求める。
(注4)日本経済新聞2024年2月3日の朝刊1面に掲載された図表1、①九州は新線効果で「鉄道アクセス困難者」の割合を減らした。(注)鉄道駅から半径4キロ圏内に住んでいない割合を、2022年時点と2012年時点で比較した。人口は国土交通省のデータにもとづく。
(注5)日本経済新聞2024年2月3日の朝刊1面に掲載された図表2、②「駅のない地域」の人口が減った自治体。(注)同じ値の場合、少数点第2位以下で順位づけ。
(注6)日本経済新聞2024年2月3日の朝刊1面に掲載された図表3、➂周辺人口が増えた主要駅。(注)2022年と2012年の路線名・駅名が一致する4キロ圏内人口1万人以上の駅などを比較。
(1)日本経済新聞、2024年2月3日(1面)。
[付記]2024年2月19日:
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