[日本再生]「荒廃農地」を再生させる取り組みが各地で加速(その2)2022年12月14日 関東8都県では茨城県以外の各県でも荒廃農地の再生が広く進んでいる 地域を生かした作物の導入が鍵。
- honchikojisitenji
- 2022年12月20日
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続木 碧(つづき あお) 2022年12月(研究報告№023)
☆巻頭の一言
前回の報告で述べましたように、茨城県は、広大な荒廃農地を「サツマイモ」畑に変身させました。これは日本創生にとって画期的な成果です。県が総合的に指導して、全県民が一致協力して達成した、この成果は、全国の各地が、これに学んで、次世代日本の成長の基礎としていくべきものです。
でも、「サツマイモ」は、南国「サツマ」生れの作物ですから、中山間地の涼冷な気候では、育てにくい一面もあるのです。茨城県は、県内の涼冷な地域には、それに合った施策を丁寧に指導しています。これも極めて適切な施策です。
[荒廃農地を再生させる取り組みが各地で加速(その2)
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
[荒廃農地を再生させる取り組みが各地で加速(その2)関東8都県では茨城県以外の各県でも荒廃農地の再生が広く進んでいる 地域を生かした作物の導入が鍵。
ここでは日本経済新聞の2022年10月8日39面の記事を紹介します。
[はじめに]
耕作放棄されて作物の栽培ができなくなった荒廃地の再生が、関東8都県の各県でも、どんどん進んでいます。国産農作物への需要が伸びており、自治体と就農者が一体となって取り組むケースが出てきました。各地の地域特性を生かした作物の導入が鍵を握ります。(参考資料1、2022年10月8日の日本経済新聞の39面(刈谷直政)を参照引用して記述)
[茨城県城里町]
茨城県城里町は、県の主導で2016年に、茶や化粧品の原料になるハトムギの生産を開始しました。これは従来から作っている麦やソバなどの設備を共有できるので、経済的にも有利なのです。町内に36ヘクタールを作付けしました。
[群馬県甘楽町]
群馬県で再生された農地では、野菜やソバ、コンニャクイモなどが栽培されています。
甘楽町(かんらまち)では、2018年1月に、農業関係者が集まり「一斉耕起の日」という活動を出発させました。所有者の了解を得て、ボランティアが雑草刈りなどで耕作可能な農地として再生し、新たな借り手に利用してもらっています。2018年~2021年までに4ヘクタールを、田畑として再生させました。
[千葉県睦沢町]
千葉県は、首都圏において、2016年~2020年の荒廃農地再生が最も進んだ地域の一つです。千葉県睦沢町(むつざわまち)の耕作放棄地では、オリーブの木に実が付きました。人々は10月中の収穫を待っています。町内の「道の駅むつざわ」に置かれた搾油機で新鮮なままオリーブオイルに加工し販売します。
農業法人の房総オリーヴ(睦沢町)が、2017年にオリーブの木を植え始め、3ヘクタールの土地で1000本のオリーブの木が育っています。2021年に初めて搾油にこぎ着け、2022年は前年の2.5倍のオイルの販売を予定しています。
金子健一社長は「オリーブは管理に手間がいらないので、兼業でも手掛けやすい」と話しています。現状は香川県産の実と合わせて加工しているのですが、今後はすべて千葉県産とし「2~3年後には独り立ちしたい」。来春には栽培面積を広げると意気込んでいます。
[埼玉県美里町]
埼玉県北西部の美里町は、生糸価格の低迷や、製糸業の衰退、農家の高齢化により桑畑の荒廃農地が増加しました。1999年以降、観光農園に転用する「観光果樹園100町歩構想」を本格化させました。県や町の補助金などを使って改革を進めた結果、現在町内には、15の観光農園が営業しています。
観光農園では、ブルーベリーやプルーン、アンズなどを生産しています。ブルーベリーは早生種の「デューク」、晩生種の「ディフブルー」など10品種以上を栽培しています。ブルーべリーの植栽面積は34ヘクタールと、現在、全国屈指の産地に成長しました。7~8月には観光客がブルーベリー狩りに訪れます。
[山梨県南アルプス市]
山梨県では、ワイン用のブドウの栽培地に再生する動きが目立ちます。国産ブドウだけで造る「日本ワイン」の人気が高まり、企業が栽培を広げているためです。
サントリーは南アルプス市、中央市、甲斐市の3カ所で荒廃農地を含む計16ヘクタールを借り、2018年からワイン用ブドウの栽培を順次始めました。まるき葡萄酒(甲州市)は、北杜市の荒廃農地8へクタールで2019年から栽培に着手しています。山梨県の「担い手・農地対策課」によりますと、野菜栽培を含めて2010年以降は、年に数十件の企業が、農業に参入しています。農地所有者と企業の仲介窓口となり、人材育成や圃場の区画整理などで支援して、農地の荒廃化抑制につなげています。
[神奈川県西部]
神奈川県西部は江戸時代から、ミカンの栽培が盛んでした。でも、価格低下やオレンジの輸入自由化などで、荒廃ミカン園が増加しました。キウイやレモンなどへの転作が進みました。一方で荒廃みかん園の農地保全のため、県は2009年度から「オレンジホームファーマー事業」を開始しました。毎年、研修生を募集しています。
荒廃みかん園を県が借りて整備した果樹園で、研修生は3年間の講義を受け、苗木の植えつけから収穫までを体験します。研修後は果樹園の所有者と交渉して契約を結べば、農園方式で農作業を続けられます。
[東京都八丈町]
東京都は島しょ部で、都の支援制度である「農地創出・再生支援事業」に基づいて、荒廃した農地を再生し、地域農業の活性化を目指す取り組みを進めています。
伊豆諸島南部の八丈町では、不要な樹木の伐採などを行い、ハウス栽培が出来るように整備しています。ルスカスなど八丈島特産の「切り葉」を栽培しています。高齢化や移転でやめた人から農地を引き継ぐ場合などに、この制度が利用されています。2019年度までの12年間で、延べ20ヘクタールが再生されました。(参考資料1、2022年10月8日の日本経済新聞の39面(苅谷直政)を参照引用して記述)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2022年10月8日の日本経済新聞(39面)の記事には、一つの図表が掲載されていました。①関東8都県の荒廃農地および再生できた農地(図表1、注1)。
この図表1では、都県別の荒廃農地面積と再生できた農地面積の一覧表が掲載されていました。これを以下に示します。
都県名 荒廃農地面積 再生できた農地面積(単位:ヘクタール)
茨城県 11393 (8.7) 3652
群馬県 9058(12.8) 2288
千葉県 13457(14.7) 2123
埼玉県 3493(▲4.9) 1704
山梨県 6695(▲1.3) 1410
栃木県 2258(▲3.8) 856
神奈川県 1441(11.6) 595
東京都 3096(12.0) 384
注記 農林水産省まとめ。農地はヘクタール。荒廃農地は2020年時点の実績値。
カッコ内は2016年比増減率(%)。再生できた荒廃農地は2016年~2020年の合計。
この一覧表を一見して、以下のことが解ります。荒廃農地面積の大きさで首位は、千葉県です。2位は茨城県、3位は群馬県です。2016年から2020年までの増減率でも、トップは千葉県で、2位は群馬県です。再生出来た農地面積で先頭に立つのは茨城県です。私は、この茨城県のトップは、数値以上にダントツトップだと感じています。これは県が主導し、全県民が一致団結して、これに取り組み、大きな成果をあげたからです。2位は群馬県で3位は千葉県でした。
結局、関東8都県における荒廃農地再生活動を牽引する先導者は、茨城県、千葉県、群馬県の3県です。
私は、荒廃農地を減少させ農地を再生する、この活動は、日本の社会の未来にとって、きわめて、重要だと思います。これは日本国が、全国土が等しく元気で、溌剌として生きて行くために、「地域創生の骨格」となる活動だと思うからです。
ここでは、以下の2点が最重要だと思います。
最も重要な点(1)需要が拡大していく見込みがあること。「サツマイモ」のように、だれでも好きで食べてくれて、焼くだけで美味しくたべられる。加工が容易で、容易に付加価値が付けられる。
これからの未来を考える場合には、全国展開が出来るかということに加えて、海外への輸出を拡大できるかという視点がきわめて重要なのです。ですから、ここは、この上なく重要だと、私は思っています。
最も重要な点(2)各地が持つ、特徴・能力・魅力に合致した、それぞれ特有で抜群なものを持っていること。すなわち、この報告に出てきた各地の「モノ」「コト」は、とてもユニークでした。
さきに述べた荒廃農地再生活動の先導者、茨城県、千葉県、群馬県に続いて、山梨県の国産ブドウだけで造る「日本ワイン」。これは世界に広がっていくと、私は思いました。
千葉県のオリーブの木も、世界の誰でも植えるオリーブの木。その木に実った果実で造ったオリーブ油。これを使った日本人特有の料理の数々。これも世界中に広まって行きそうだと、私は思います。
私はこのような夢を持ちたいのです。皆さん、このような夢を持って、荒廃農地をぐんぐん減らし、農地再生をずんずん進めましょう。そうして、夢を膨らませるのです。皆さん一緒に頑張りましょう。(参考資料1、2022年10月8日の日本経済新聞の39面(苅谷直
政)を参照引用して記述)
(注1)日本経済新聞2022年10月8日(39面)に掲載れた図表「①関東8都県の荒廃農地および再生できた農地。注記、農林水産省まとめ。農地はヘクタール。荒廃農地は2020年時点の実績地。再生できた荒廃農地は2016~2020年の合計。
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2022年10月8日(39面)。
[付記]2022年12月14日。


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