[日本再生]「荒廃農地」を再生させる取り組みが各地で加速(その1)2022年12月12日 荒廃農地の復活は茨城県が首位。5年で東京ドーム785個分達成。鹿児島県志布志市では和牛放牧に活用。
- honchikojisitenji
- 2022年12月22日
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続木 碧(つづき あお) 2022年12月(研究報告№022)
☆巻頭の一言
耕作されずに放置され、作物の栽培が出来なくなった「荒廃農地」を再生させる取り組みが各地で加速してきました。高齢化や担い手不足を背景に、全国で耕作面積の減少がつづきますが、茨城県は需要が増すサツマイモ畑への転用を促すことなどで、過去5年間に東京ドーム781個分の荒廃農地を再生しました。
[荒廃農地を再生させる取り組みが各地で加速(その1)
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
[荒廃農地を再生させる取り組みが各地で加速(その1)荒廃農地の復活は茨城県が首位。5年で東京ドーム785個分達成。鹿児島県志布志市では和牛放牧に活用。
ここでは日本経済新聞の2022年10月8日2面の記事を紹介します。
[放置農地を早い段階で再生し収益性を高めるのが地域再生に不可欠]
農林水産省によりますと、荒廃農地は、2020年時点で耕地面積の6%にあたる28.1万ヘクタールありました。放置後、時間がたてばたつほど復元利用は難しくなります。現在、7割が再生困難な状態になっています。
荒廃農地の多くは、中山間地域にあります。その多くが水田や果樹園などに利用されてきました。でも、放置された農地を早い段階で再生し収益性を高めることが、地域の再生のために不可欠なのです。
[茨城県 荒廃農地再生最大、鹿児島県、長野県が続く]
都道府県ごとの荒廃農地の再生面積を集計したところ2006年~2020年で最も多かったのは茨城県で3652ヘクタールでした。鹿児島県が2997ヘクタール、長野県が2852ヘクタールと、これに続きました。
[茨城県、さつまいもを重点施策に]
茨城県は、2019年から「茨城かんしょトップランナー産地拡大事業」として、荒廃農地をサツマイモ畑に転用する生産者らに補助金を支給しました。10アールあたり10万円を上限として、再生費用の半分を補助しました。そして、そればかりではなく、農地の貸主にも協力金を支給しました。
サツマイモは、国内での焼き芋ブームや東南アジアへの輸出増に、需要が伸びています。年平均価格は10年前に比べて3割高い水準にあります。干し芋や焼芋に加工しやすいため、付加価値を高めて収益を上げやすいのです。
「生産意欲が高まる一方で、鉾田市など、昔からの産地には土地供給余力が乏しく、必然的に、荒廃農地への引き合いが強くなっているのです」と茨城県の農林水産部産地振興課は話しています。
建設業のユタカファーム(茨城県水戸市)は、県の事業を活用し、水稲を栽培する陸田を転用して参入しました。栽培だけでなく、干し芋生産も手がけており、本格的な作付け開始から2年で、すでに利益が出るようになりました。石井登社長は「機械化や作付け品目を工夫すれば農業は収益をあげられる産業になる」と述べています。
[鹿児島県、荒廃農地に放牧]
畜産が盛んな鹿児島県では、荒廃農地を放牧に活用しています。農業法人さかうえ(鹿児島県志布志市)は、かって野菜や茶を生産していた耕作放棄地で、2019年から黒毛和牛を育てています。農家から土地を借り受け、中山間地に点在する15ヘクタールに130頭の和牛を放牧しています。「里山牛(さとやまぎゅう)」のブランド名でインターネットを通じて全国に販売しています。
2022年7月からの1年で出荷を拡大して、単年度での黒字転換を見込んでいます。省人化を進めるため、2020年度から鹿児島大学や慶応義塾大学などと人口衛星を使った実験を始めました。牛の運動量や行動履歴などのデータを集めて、牛の健康状態を把握しています。
放牧により、土地は耕され、草を食べた牛のフンは有機肥料として土に帰ります。放牧した土地は、将来的には、野菜や飼料作物の農地として活用します。
[福島県、荒廃農地の発生を未然に防ぐ]
再生面積が全国4位の福島県では、荒廃農地の発生を未然に防ぐ取り組みを進めています。農業法人の高ライスセンター(福島県南相馬市)は、担い手がいなくなった土地を請け負い、コメや小麦、大豆を生産しています。この耕作面積は120ヘクタールに広がりました。
現在は、乾いた田圃に種もみを直接まく手法を取り入れています。育苗の手間がかからないため労働時間は田植えをする場合に比べて3分の1に減ります。そして収量は、これまでの方法と同じ水準を確保しています。作業効率を高めることが担い手不足の緩和につながっています。(参考資料1、2022年10月8日の日本経済新聞の2面(桜木浩巳、松隈未帆
笠原昌人、黒滝啓介)を参照引用して記述)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2022年10月8日の日本経済新聞(2面)の記事には、三つの図表が掲載されていました。①茨城県や鹿児島県は、荒廃農地の営農再生面積が大きい(2016年~2022年、注1)。②再生利用できない荒廃農地が増えている(注2)。③耕地面積は60年で3割減少した(注3)。
ここでは図表1が重要です。この図表は新聞紙上に、日本列島の地図で示されており、都道府県別の荒廃農地の営農再生面積の大きさ(ヘクタール)が、緑色の濃淡で塗り分けて示してありました。
荒廃農地の営農再生面積が最も大きい自治体(都道府県)は、3000ヘクタール以上(最も濃い黒緑色)でした。3000へクタール以上、営農面積が再生したのは茨城県、1県のみでした。
次に再生面積が多かったのは、2000~3000ヘクタール未満再生の地域で、鹿児島県、群馬県、千葉県、長野県、宮城県、福島県、愛知県、岡山県、沖縄県の9県でした。
続く1000~2000ヘクタール未満再生の地域には、埼玉県、山梨県、青森県、岩手県、静岡県、愛媛県、大分県、福岡県、長崎県、熊本県の10県が入りました。
後に残る地域の主要な部分は、500~1000ヘクタール未満再生の地域(15地域)で、これは全国に広くしっかりと分布していました。
この荒廃農地の営農再生は、日本各地の地域再生にとって、きわめて、重要だと私は思います。でも、この活動には、茨城県という強力な先導者がいるのです。大きな実績を残した成功者がいるのです。ですから、これに習って、各地が頑張ってくれるでしょう。
立ち遅れている地域も、多少はありますが、多くは、この重要性に気がついて、積極的に活動してくれていると思います。近未来において、さらに大きな成果獲得の報告があるものと私は強く期待しています。(参考資料1、2022年10月1日の日本経済新聞の2面(江口博文 塚越慎也)を参照引用して記述)
(注1)日本経済新聞2022年10月8日(2面)に掲載れた図表「①茨城県や鹿児島県は、荒廃農地の営農再生面積が大きい(2016年~2022年)。」注記、農林水産省の資料を集計。
(注2)日本経済新聞2022年10月8日(2面)に掲載れた図表「②再生利用できない荒廃農地が増えている。」注記、農林水産省の資料から作成。2015年までは推計値。
(注3)日本経済新聞2022年10月8日(2面)に掲載れた図表「③耕地面積は60年で3割減少した」。注記、農林水産省の作物統計調査。
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2022年10月8日(2面)。
[付記]2022年12月12日。


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