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[日本再生]「地域創生」PFI活用広がる 民間パワー公共施設を磨く 2023年1月27日  大阪府PFI活用の苦闘 老朽住宅の刷新実現 佐賀県みやき町住宅整備 人口も増加した

 

続木 碧(つづき あお) 2023年1月(研究報告№038)

「巻頭の一言」

国や地方自治体は公共投資を量的に持続するだけの財政的余力がなくなってきています。そのため、国や地方自治体は、民を利用した社会資本整備の促進を目指して、PFI(注3)の導入に積極的に取り組んでいます。そして近年、PFI運用のノウハウの蓄積が進み、ポストコロナの経済の再発展に向けて、民の知恵と力量によって、様々な魅力的なサービスが提供されるようになってきました。


「地域創生」PFI活用広がる 民間パワー公共施設を磨く 大阪府PFI活用の苦闘 老朽住宅の刷新実現 佐賀県みやき町住宅整備 人口も増加した


[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

「地域創生」PFI活用広がる 民間パワー公共施設を磨く 大阪府PFI活用の苦闘 老朽住宅の刷新実現 佐賀県みやき町住宅整備 人口も増加した

ここでは日本経済新聞の2022年12月17日2面の記事を紹介します。

[はじめに]

公共施設の建設や運営を委ねるPFI(注3)という官民連携の手法を導入する自治体がが増えています。限られた財源のなか、民間の柔軟な発想で魅力ある社会資本を構築することができると、住宅や空港、スポーツ施設、美術館と分野は広がっています。PFIは公共施設の収益性の向上だけでなく、地域に新たな賑わいを生み出しています。(参考資料1、2022年12月17日の日本経済新聞の2面(金岡弘記、古田翔吾、長谷川岳志)を参照引用して記述)


[PFIについて PFIの事業数]

 PFI(注3)は、1999年に国が制定したPFI法に基づき、公共施設の新設や建て替えにおいて、施設の設計や建設、管理、運営を、一括して民間に任せる仕組みです。民間が一定のリスクを負い、コストを縮減しながら魅力的かつ収益が見込める施設を目指します。

 内閣府によりますと、2022年3月末での,PFI(注3)の事業数は、国や大学法人の実績を含めて932県でした。2012年3月末の10年前と比べて2倍以上に増えました。


[大阪府の23年にわたる苦闘]

 PFI(注3)は、23年前、国が大きな期待を持って開始した事業でしたが、永い間、苦戦が続いていました。そのなかで大阪府は、全国の自治体(都道府県および市町村)の実施事業数で最多なのです。1990年代に、深刻な財政難に陥った大阪府は公共事業のコスト削減を探ろうと、1999年に「PFI検討委員会」を発足させました。全庁を挙げてPFI(注3)が可能な案件の発掘を進めてきました。

 取り組んだのは老朽化した府営住宅の建て替えです。PFI(注3)による建て替えと余剰地の活用を一体にして事業者を募る独自のスキーム(注4)を構築しました。担当者は、民間が参入しやすいように「コストのかかる維持管理と指定管理者制度で別の事業者を募集した」と、この時の苦心をと話します。余剰地は建て替え後の住宅を高層化して捻出しました。これまで23年間、15件のプロジェクトに、このスキームを適用しています。大阪府は戦後復興期に、ただひたすら建て続けてきた府営住宅の老朽化の負債の解決に、激しい情熱を投じて闘ってきたのです。2022年、この苦闘を乗り越えて、美しい花が開いたのです。

 2022年2月にオープンした大阪中之島美術館は官民連携によって魅力ある施設運営が実現したのです。市が建設し、運営権を民間に売却するPFIのコンセッション方式(注5)を公式美術館で初導入したのです。菅谷富夫館長は「美術館の運営も経済的な視点が必要になる」と話しています。開館後の来館者は50万人を超えています。これは戦後の高度成長時代の後に、全国に訪れた、老朽公営住宅の処理の苦闘を乗り越えた、素晴らしい成功の物語です。


[佐賀県みやき町]

 PFI(注3)を活用した町営住宅整備で、人口増に転じさせた地域都市があります。人口減が続き人口増への転換の見通しが立たない市町村が多い、今、PF3の活用で、ついに嬉しい人口増に転じた、地域が出現したのです。それは佐賀県みやき町です。

 みやき町では、2012年に町長直轄のまちづくり課を新設しました。ここで予算を抑えながら子育て世代を呼び込める住宅を整備しようと、PFIの活用に踏み切ったのです。民間に建設と維持管理を任せるスキーム(注4)を採用し、集合住宅7棟のほか、全国初となるPFDによる戸建ての賃貸住宅31戸を整備したのです。


[岡山県津山市]

国は今、地方で加速する老朽インフラの更新にPFI(注1)の活用を自治体に促しています。2022年度から10年間にPFI(注3)など民間と連携した事業を、国内で30兆円とする目標を設定しました。先の臨時国会で成立した改正PFI法で、地方銀行など専門家を派遣できるようにして、小規模自治体でのPFI導入支援を打ち出しました。

行政と民間とがリスク分担を定めて事業を進めるPFIでは、設計段階で民間の提案や民間の意向を汲んだ計画づくりが不可欠となります。岡山県津山市では、民間事業者にとって採算が合わない市営プールを廃止して、PFIによって2022年5月に、会員制の総合スボーツ施設をオープンさせました。

プールは年2億円の維持管理費がかかり、財政を圧迫していました。また、廃止や改修にも、膨大な費用がかかる想定でした。ここでプールを廃止すれば、事業者が独立採算で運営できると判断したのです。担当者は、「持続的は運営が市民の利益になる」と言っています。


[PFIを地域の自治体に展開するには]

PFI(注3)は人材や予算、保有する施設が多い都市部の自治体に集中する傾向があります。これを地域の小規模な自治体に展開したいのですが、関西大学の環境都市工学部の北詰慶一教授は、「まず、ノウハウの蓄積が重要です。小さな施設へのPFIの導入の可否から検討するべきです」と、その要点を教えてくれています。(参考資料1、2022年12月17日の日本経済新聞の2面(金岡弘記、古田翔吾、長谷川岳志)を参照引用して記述)


[まとめ]

この研究報告の執筆で参考引用した2022年12月17日の日本経済新聞2面の記事には三つの図表が記載されていました。①PFIを積極的に活用する自治体が多い都道府県 (図表1、注1)。②幅広い分野で活用が広がる(図表2、注2)。③全国でPFIの導入は増加(図表3)。


図表1(注1)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、都道府県別のPFIの実施案件の多い自治体(都道府県)が青色の濃淡で塗り分けて示してありました。都道府県別にみてPFIの実施案件数が最も多い処は「実施数45件以上」の処で、最も濃い青色(黒青色)で示してありました。このランク1の処は、大阪府、神奈川県、愛知県の1府2県でした。次に実施案件が多いランク2の処は、30件以上45件未満の処で、埼玉県、千葉県、東京都、静岡県、兵庫県、福岡県の1都5県でした。続いてランク3は、15件以上30件未満の処で、北海道、宮崎県、山形県、京都府、岡山県、広島県の1道1府4県でした。

結局、PDI(注3)の実施案件が多い道府県は、合計で1都1道2府11県で、15自治体でした。これは全国に広く分布していますが、四国には実施案件の多い処はありませんでした。

 

図表2(注2)では、「幅広い分野で活用が広がる」と題して、合計780件のPFIの実施案件の各分野別の構成百分率(%)を円グラフで示していました。ここでは、この構成百分率を表として表記して示します。以下です。


図表2 幅広い分野で活用が広がる


分野名                       構成百分率(%)

学校、美術館、博物館、スボーツ施設         34.4%

    道路、住宅、空港                  26.5

    病院、廃棄物処理施設                17.2

    庁舎や宿舎                      2.7 

    観光施設                       4.0

    警察、消防関連施設                  2.3

    保育所・福祉施設                   3.2

    複合施設                       9.7

    計                        100.0


(注)自治体が実施している案件。


 PFI(注3)が活用さている分野としては、「学校・美術館」「道路・住宅・空港」「病院・廃棄物施設」「複合施設」が多く、この4分野で全体の9割近くを占めています。私がPFIの実例として知っていた「官庁・警察・消防署」は、たった5%しかないのです。ここも、やはり、民需が主力になって行くようです。


 図表3では「全国でPFIは増加」と題した折れ線グラフが書いてありました。1999年の0件から2022年の932件に向けて、右肩上がりに一直線で上昇していました。(参考資料1、2022年12月17日の日本経済新聞の2面(金岡弘記、古田翔吾、長谷川岳志)を参照引用して記述)



(注1)日本経済新聞2022年12月17日(2面)に掲載された図表「①PDIを積極的に活用する自治体が多い都道府県 (図表1、注1)」。

(注2)日本経済新聞2022年11月19日(2面)に掲載された図表「②幅広い分野で活用が始まる(図表2、注2)」。

(注3)PFI(Private Finance Initiative)=民間資本を活用した社会資本整備:民間の資金や経営的・技術的ノウハウを活用して公共社会資本の整備・維持管理・運営などを行う手法のこと。民間を活用することによって、国や地方自治体が直接、実施するよりも経済的・効率的かつ質の高い公共サービスを提供できる事業がPFIに向いている。日本では、1999年7月に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が制定され、2000年3月に、その理念とその実現のための方法を示した「基本方針」が、民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)の議論を経て、内閣総理大臣によって策定された。戦後の一貫した公共投資による社会資本整備によって、日本の社会資本の整備水準は最低限のレベルには達した。しかし、欧米先進国並みの水準には達していない。財政難と少子高齢社会の到来による社会保障費の増大が見込まれるため、国や地方自治体は公共投資を量的に持続するだけの財政的余力がなくなってきている。そのため、国や地方自治体は、民を利用した社会資本整備の促進を目指して、PFIの導入に積極的に取り組んでいる。

(注5)コンセッション方式(Concession):ある特定の地理的範囲や事業範囲において、事業者が免許や契約によって独占的な営業権を与えられたうえで行われる事業の方式を指す。例えば、野球場やサッカー場などのスポーツ施設において、施設の運営会社とは異なる会社が飲食店の売店などの営業許可を得たうえで、飲食物の販売を行っていることがある。こうしたケースでは、当該飲食店はコンセッションと呼ばれる。ここでは、美術館は市が建設し、独占的な経営権を民間に与えて経営させている。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2022年12月17日(2面)。

[付記]2023年1月27日。  

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