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[日本再生]「地域創生」廃校が変身 集客の一翼 2023年2月17日 山梨県は廃校の84%が現役 北杜市雨天でもクライミング

  • honchikojisitenji
  • 2023年2月18日
  • 読了時間: 8分

 

続木 碧(つづき あお) 2023年2月(研究報告№043)

「巻頭の一言」

 日本全国の小学校、中学校、高等学校などの閉鎖により発生した廃校校舎を、今、地域活性化の基点基地に変身させる動きが旺盛になってきています。各地で成功例が続出しています。ここでは、これを2編連続で報告します。


「地域創生」廃校が変身 集客の一翼 山梨県は廃校の84%が現役 北杜市雨天でもクライミング


[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

「地域創生」廃校が変身 集客の一翼 山梨県は廃校の84%が現役 北杜市雨天でもクライミング

ここでは日本経済新聞の2023年1月7日2面の記事を紹介します。

[はじめに]

廃校が集客施設や工場に生れ変わっています。活用率が47都道府県で首位の山梨県では、廃校を首都圏からの集客に生かしています。2位の熊本県では企業の誘致が目立ちます。鉄筋コンクリートの校舎は解体に数千万円かかることがあります。草刈りや警備に年数十万円から数百万円が必要です。ここでは廃校の活用が欠かせないのです。廃校を活用してそれを地域の個性で生かせば、やっかいものだった廃校が、街の活力につながるのです。(参考資料1、2023年1月7日の日本経済新聞の2面(田崎陸、伴和砂、安倍大至)を参照引用して記述)。


[日本経済新聞が「廃校施設等活用状況実態調査」をもとにアンケート調査を実施]

 文部科学省が2022年3月に公表した「廃校施設等活用状況実態調査」をもとに日本経済新聞がアンケート調査を実施しました。2002~2020年度に廃校になった公立の小中学校や高校などのうち、2021年5月時点で再利用されている割合を「活用率」と定義しました。

 人口減少や少子化、「平成の大合併」も背景に、廃校は2000年代から増えました。最近も年数百の廃校が生れています。現在の日本全体の廃校の活用率は64%です。


[山梨県 北斗市]

でも、廃校の活用が見事に進んでいる地域もあるのです。山梨県では廃校舎の84%が生かされており、首都圏からの集客を見込んだ利用が多数実施されています。八ヶ岳山麓の北杜市では2004年の町村合併の後、廃校になった小学校6校のうち5校の校舎が今も活躍中です。市内の農業法人ファーマンは、その一つで、教室を農作物の倉庫として使っています。2021年4月からは体育館でのクライミング施設「ロクボク」を運営しています。

 ヒントになったのは、クライミング(注1)の聖地とされる市内瑞牆山(みずかきやま)です。全国からクライマー(注1)が集まりますが、雨で断念となることも多いのです。そんな時の代わりの場所として「ロクボク」は愛好家で賑わい、年700~800人が訪れています。その8割は県外からです。地元の山岳ガイド、棚橋靖さんは「初心者からベテランまで楽しめる」と太鼓判を押しています。


[愛知県 名古屋市]

子育て世代が郊外に移り住み、廃校は日本の中核都市でも珍しくなくなっています。廃校後の校舎は、オフィスや介護施設、大学のサテライトキャンパス(注2)などに用いられています。名古屋駅から徒歩10分の旧那古野小学校は2019年、名古屋市のスタートアップ(注3)の育成施設「なごのキャンパス」に生れ変わりました。30社が入居しており、開業から満室続きです。外国人材紹介会社、クロフネ(名古屋市)の倉片稜社長は「周辺より賃料が格安で助かる」と言っています。

 周囲で再開発が続く中で、校舎が生き残ったのは、「いきなり壊すのは住民の心理的な抵抗が大きかったからだ」と、名古屋市の中田英雄副市長は述べておられます。これは愛知県の課題である、車に次ぐ産業を育てる場所として、白羽の矢が立ったとも言えると思います。

 

[熊本県菊池市]

 熊本県菊池市は、湧き水が豊富で、周辺には半導体関連や食品の工場も多いのです。税収や雇用を増やすため、菊池市は廃校への企業誘致に力を入れてきました。

 2013年に廃校となった山間部の旧水源小学校は、今や日本酒メーカー、美少年の酒蔵です。職員室は醸造場となりタンクが並び、アルコールの度数や成分を調べる部屋は、理科室の雰囲気を残しています。市では複数の行政機関にまたがる手続きの窓口を一本化して、土地の用途変更や改築に必要な書類、保険所への資料もまとめて用意して、後押ししています。大型鳥エミューの牧場が、市内の閉鎖小学校で2020年に開場した時も、飼育に必要な書類を提供しました。


[この項のまとめ]

廃校の活用率の下位には、北海道と東北が続きます。名古屋大学の小松尚教授(建築計画学)は、「人口が少ない地域でも、農林業に従事する世帯のために学校が造られたが、離農が進み廃校が増えた」と指摘されています。その頃から人口減少による校舎の余剰は見込まれていましたが、廃校活用の対策は手つかずだった処が多いのです。コミュニティの核だった校舎の廃校舎を放置すれば地域の衰退を助長することになるのは必定なのです。

また、自治体では、後地利用の計画が決まっていない解体には、公共事業の予算が確保しにくいのです。これは困った難問なのです。国はこのことを憂慮し、自治体と利用者を仲介して、その連携に必要な資金として補助金をだして支援しています。(参考資料1、2023年1月7日の日本経済新聞の2面(田崎陸、伴和砂、安倍大至)を参照引用して記述)。


[まとめ]

 この研究報告の執筆で参照引用した2023年1月7日の日本経済新聞2面の記事には三つの図表が記載されていました。①首都圏近郊は廃校活用率が高い (図表1、注4)。②

公立学校の年度別廃校発生数(図表2)。③廃校活用率の低い道県は北日本に多い(図表3、注5)。


図表1(注4)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、都道府県別の廃校活用率が青色の濃淡で塗り分けて示してありました。都道府県別でみて廃校活用率が最も高い処は活用率80%以上の処で、最も濃い青色(黒青色)で示してありました。このランク1の処は、山梨県、栃木県、鳥取県、熊本県の4県でした。

次に廃校活用率が高いランク2の処は、活用率が70%以上80%未満の処で、埼玉県、神奈川県、群馬県、長野県、岐阜県、滋賀県、富山県、三重県、愛媛県の9県でした。

また、廃校活用率が最も低いランク4は、活用率60%未満の処で、北海道、青森県、秋田県、岩手県、宮城県、千葉県、静岡県、石川県、和歌山県、岡山県の1道9県でした。

東京都、大阪府、京都府(1都2府)は、ランク3(活用率60%以上、80%未満)の活用度中程度の地域でした。

結局、廃校活用率の高い処(ランク1~2)は13県でした。最も活用率の低い処(ランク4)は1道9県でした。活用度が中間の処(ランク3)は、1都2府21県でした。

ここで、大いに気になったのは、北海道と東北の「北日本」での廃校の活用が遅れていることです。


 図表2は「公立学校の年度別廃校発生数」と題した図表であり、ここには2002年度から2022年度に至る期間の小学校、中学校、高等学校などの年度別廃校発生数を折れ線グラフで示してありました。

 これを一見しますと、年度間の変動は大きいのですが、2004年度から2015年度の間では430~500校の廃校があり、2015年度から2019年度へ向けては、280校に急減していました。


 図表3(注5)は「廃校活用率の低い道県は北日本に多い」と題して記した表ですが、ここには廃校活用率が高い5自治体(全国で1~5位)と低い自治体(43~47位)が表中に並べて併記してありました。これを以下に示します。


図表3 廃校活用率の低い道県は北日本に多い


順位        都道府県        廃校活用率

(高い) 1        山梨県        84(%)

         2        熊本県        82

         3        栃木県        81

         4        鳥取県        81

         5        神奈川県       79

    (低い)43        石川県        55

        44        岩手県        54

        45        宮城県        53

        46        北海道        52

        47        青森県        45


(注)小数点第1位以下で順位付け


 この表を見ていますと、全国での廃校の活用率において最低の4自治体としては、東北地方と北海道の「北日本の地域」が並んでいるのが解ります。すなわち、廃校の活用については、北日本の立ち遅れが、なんとしても、顕著なのです。

 この地域では、主力産業であった農業と林業の推進を考え、この両産業の若手の育成のため、小中学校、高等学校、専門学校を数多く設立したのですが、農業、林業を成長させることは出来ず、衰退が続きました。それで学校閉鎖が相次いだのです。

 また、地域の地場産業の衰退と人口減少が進むことは、良く判っていました。ですから各地では、その穴埋めのため、新産業の誘致に、全力を投入して来ました。でも、これは容易に進まなかったのです。そのため廃校の跡地利用計画も、いつまでも決まりませんでした。そのため、校舎の解体に公共事業の予算を確保することも出来ず、空き家として放置し続けてきたのです。これは、これからの日本の未来を考えた時、まことに、困難な事態です。

 国はこのことを憂慮し、自治体と利用者の間の仲介をし、その連携に必要な資金として補助金を支給して支援しています。でもこれは、今の状態では、きわめて、不十分です。

 国はこれを、ポストコロナの日本の打つべき政策の最重要課題と強く認識し、産業界に広く協力を求め、コロナ後の経済再生の対策予算を、具体的にこれに振り向ける決断をしなければならないと思います。

 幸い、この報告にも書きましたように、各地で有望な動きが胎動しています。今こそ、国をあげ、産業をあげ、日本人みんなが団結して、これに全力で取り組まねばなりません。

みんなで力を合わせて頑張りましょう。(参考資料1、2023年1月7日の日本経済新聞の2面(田崎陸、伴和砂、安倍大至)を参照引用して記述)。


(注1)クライミング(climbing)=登攀(とうはん):手足を使ってよじ登ること。自らの手や足を使いよじ登ることであるが、補助的に登攀道具を使うこともある。自然の岩壁をよじ登るものも、氷壁をよじ登るものも、人工の壁をよじ登るものもある。もともとは登山の一形態として行われていたが、近年ではスポーツ登山の1ジャンルになっている 。


(注2)サテライトキャンパス:大学など教育機関の本部から地理的に離れた場所に設置されたキャンパスのこと。サテライトキャンパスの設置場所は、通学者にとって利便性の高い、大都市の都心部(官庁街オフィス街)、ターミナル駅周辺である場合が多い。ただし、一般にそのような場所の地価は高価であるため、専用のビルなどを新設する例は少なく、商業ビル内に比較的小規模な教室を設ける例が多い。また、都市部以外でも、地方の大学や公共団体との連携により設置されるケース(例:早稲田大学本庄キャンパス、慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス)もある。


(注3)スタートアップ:「革新的なアイデアや独自性で新たな価値を生み出し、社会にインパクトを与える企業」のことで、短時間のうちに急激な成長とイクジットを狙う。イグジット(exit):企業の創業者や経営者、出資者が保有する株式を売却し、投資した資金を回収すること。


(注4)日本経済新聞2023年1月7日(2面)に掲載された図表「①首都圏近郊は廃校活用率が高い、(図表1、注3)」。


(注5)日本経済新聞2023年1月7日(2面)に掲載された図表「③廃校活用率の低い道県は北日本に多い、(図表3、注4)」。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2023年1月7日(2面)。

[付記]2023年2月17日。

 
 
 

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