[日本再生]「地域創生」山梨県・茨城県・栃木県 半導体で企業城下町 2023年4月3日 個人消費の冷え込みで東京都GDPの回復鈍く 中小設備投資への投資は始動
- honchikojisitenji
- 2023年4月4日
- 読了時間: 8分
続木 碧(つづき あお) 2023年4月(研究報告№056)
「巻頭の一言」
この研究報告は「国内総生産の伸び率の良い成長国家の再現」の第2編です。
「地域創生」山梨県・茨城県・栃木県 半導体で企業城下町 個人消費の冷え込みで東京都GDPの回復鈍く 中小設備投資への投資は始動
「地域創生」山梨県・茨城県・栃木県 半導体で企業城下町 個人消費の冷え込みで東京都GDPの回復鈍く 中小設備投資への投資は始動
ここでは日本経済新聞の2023年2月18日35面の記事を紹介します。
[はじめに]
関東・山梨8都県の2021年度の実質域内総生産(GDP、注1)の成長率は、山梨県が新型コロナウイルス拡大前の2019年度(基準年度)と比べて、(この基準年度を100とする指数で)、プラス4.3%の増加となりました。これを追う栃木県と茨城県は、マイナス1.2%、千葉県が同1.8%まで肉薄しています。東京都が、マイナス3.3%と追跡が遅れているのに比べ、半導体や電気自動車(EV)向けの生産拠点が県内に、多く存在している、栃木・茨城などの首都圏郊外や関東では、コロナによる経済的な打撃が少なかったことがうかがえます。(2023年2月18日の日本経済新聞の35面(松隈未帆、松永高幸、桜井芳野、相松孝暢)を参照引用して記述)。
[山梨県]
日本経済新聞は、東京財団政策研究所の山沢成康主席研究員(跡見学園女子大学教授)が推計した都道府県別の実質域内総生産(GDP、注1)に基づき、コロナ禍での影響を受ける前の2019年度を基準年度とし、この時点を100%として、2021年度における各地の状況(回復か転落か)を、指数(%)として計算しました。
山梨県の実態は、実質域内総生産(GDP、注1)の3割を製造業が占めており、全国平均の2割を大きく上回っています。2021年に県内の鉱業・製造業でどれだけ物が作られたかを示す鉱工業生産指数(注2、2015年=100)は125.4、と2019年比で14.8%上昇しました。牽引役となったのが、県内に主力工場があるファナックと東京エレクトロンです。下請け企業も含めて、設備投資を伴いながら関連製品の生産を、大きく伸ばしました。
県鉱工業生産指数(注2)のうち両社が主力とする産業用ロボットや半導体製造装置などの生産用機械の2021年は、2019年比で49.6%も上昇しました。今や、電気機械も33.4%上昇しました。脱炭素やデジタルが世界的に加速し、EVや半導体などの生産向けに、市場が急成長しているのです。食料品も20.4%上昇しました。これらの諸産業の急成長の波に乗って山梨県の地域創生が、大きく進展しているのです。山梨県は、ファナックや東京エレクトロンの21世紀版の企業城下町の様相を呈しているのです。
[茨城県]
茨城県も、県内の実質域内総生産(GDP)の3割以上を製造業が占めています。茨城県は県内の名目・実質GDPを、四半期ごとに独自に算出しています。同県は経済状況の変化を政策に早期に反映するため、国が公表する生産統計から割り出す形で、1999年から、この数値の纏めを開始しました。
それによりますと、2022年7~9月期の県内の地域内総生産(GDP)は2.2%プラスで、国(マイナス2.3%)を大幅に上回りました。特に製造業の回復が顕著で、茨城県政策企画部統計課は「機械や化学製品、鉄鋼などの輸出用の製品が回復を後押しした」と分析しています。
コロナ禍では、全国で、宿泊・飲食サービスが大きな打撃を受けましたが、茨城県は、GDPに占める同産業の割合が、もともと、少なかったのです。このことも、ここで回復が早かった一因でした。茨城県は、21世紀版の企業城下町生成の有力な推進者です。重要な一員です。
[栃木県]
栃木県も2021年は、県の鉱工業生産指数(注2)が92.4と前年比4.2%上昇しました。軸受けや自動調整弁などの汎用的な部品、半導体や、うすがたテレビの受像機の表示画面に使われる薄型ディスプレー(注3)の製造装置が牽引しました。
2021年は、世界的な半導体不足で、半導体関連の設備投資が旺盛だったのです。栃木県は生産機械活性化の恩恵を受けました。コロナ禍で一時落ち込んでいた生産機械製造が回復し、汎用機械のニーズも高まったのです。栃木県は21世紀版企業城下町を生成する重要な一員として、今、活動を著しく活性化しています。
[千葉県]
千葉県も、2021年度の実質域内総生産(GDP)が2019年度を基準とする基準値100(%)とする指数で2.2%プラスでした。これは国全体のマイナス2.3%を大幅に上回ったのです。特に食品や素材などの内需向け製造業が盛んで、関東・首都圏の他県と比べて自動車関連産業の集積が少なく、半導体不足の影響が少なかったのです。
コロナ下で県内に人口流入が続いたこともGDPを下支えしました。千葉県流山市は人口増加率が、2020年比2.1%増(2021年1月時点)と、全国の市区で首位でした。千葉県も1世紀版の企業城下町生成の推進の強力な推進者です。
[東京都]
東京都の2021年度の実質域内総生産(GDP)は、コロナ禍で疲弊した経済の回復を確認するために設定した、コロナ禍前の2019年度にまででは、まだ、かなり下回っており、回復の鈍さが際立ちました。すなわち、コロナの感染拡大で、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の発令期間が長引き、商業・サービスが集まる都心での、個人消費が冷え込んだからです。
東京商工会議所が2022年に発表した調査によりますと、東京23区内で2021年に設備投資をしなかった中小・零細企業は56・5%と、2年連続で増加しました。同会議所は「コロナ禍で経済の先行きが予測できず、一部の企業は投資に踏み切れなかった」と見ています。
ただ、2022年の設備投資の実施割合は、2021年比で5%ほど伸びました。2023年は半数以上が設備投資をする予定で、アフターコロナに向け、中小企業の生産活動には回復の動きがみられます。明るい灯(あかり)が見えたのです。(2023年2月18日の日本経済新聞の35面(松隈未帆、松永高幸、桜井芳野、相松孝暢)を参照引用して記述)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年2月18日の日本経済新聞35面の記事には、二つの図表が記載されていました。①関東・山梨8都県のGDP増減率(図表1、注4)。②茨城県は国に先行して回復(実質GDP)、(図表2、注5)。
[図表1]
図表2(注4)は「関東・山梨8都県のGDP増減率」と題する表で、増加率(%)の大きい順、実質域内総生産(GDP)の比較開始時(2019年度)の指数値(100%)に対する、不足する指数の小さい順(▲の数値の小さい順)に、表に記してありました。これを以下に示します。
図表1 関東・山梨8都県のGDP増減率
順位 都県 GDP増減率
1 山梨県 4.3%
2 栃木県 ▲1.2
3 茨城県 ▲1.2
4 千葉県 ▲1.8
5 埼玉県 ▲2.6
6 神奈川県 ▲2.8
7 東京都 ▲3.3
8 群馬県 ▲3.5
(出所)東京財団政策研究所、2019年度比2021年度増減率、▲はマイナス
この実質域内総生産(GDP)の増減率では、山梨県がプラス4.3%で、唯一のプラスで、先頭をきっていました。次いで栃木県、茨城県が、もう少しでプラスになる処に肉薄していました。もう一頑張り頑張れば、コロナ禍以降の最初の目標の達成になり、これまで苦労してきた人達は、大いに元気が出るのです。ここでのもう一頑張りを大いに期待します。頑張ってください。私も一緒に頑張ります。
[図表2]
図表2は「茨城県は国に先行して回復(実質GDP値)」と題する図表でした。ここでは左側縦軸に、実質域内総生産(GDP)値の比較開始時点(2019年度)の比較指数(100%)に対するの増減%をとり、下側横軸に2021年1~3月から2022年7~9月の時点をとり、各時点での国及び茨城県の指数の増減(%)をプロットし、これを線で結んだ折れ線グラフを書いていました。この図表を一見しますと、茨城県は、国に対してこの増減(%)で、常に先行していました。(2023年2月18日の日本経済新聞の35面(松隈未帆、松永高幸、桜井芳野、相松孝暢)を参照引用して記述)
(注1)実質域内総生産=都道府県内での実質総生産(gross domestic product、略称:GDP):GDP:国内で生産されたモノやサービスの付加価値を表す国内総生産をGDPと呼ぶ。企業は財・サービスを売ることで、その付加価値分だけの利潤を得る。企業の得た利潤の一部は、賃金、利子、賃料、および租税として家計や政府の利潤となり、残りは企業の利潤となる。そして利潤の一部は株主への配当や内部留保となる。従って国内総生産(GDP)は家計、政府、および企業へと分配された利潤の総和としても定義出来る。先進諸国の傾向としては、国内総生産の3分の2が労働者の取り分となり、3分の1が地主・株主などの資本家の取り分となる。県内GDP:県内または都内でのGDP。
実質GDP:このGDPの物価の変動による影響を取り除き、その年に生産された財の本当の値を算出したものを実質GDPという。名目GDPは生産数量に市場価格をかけて、生産された財の価値を算出し、すべて合計して算出するが、実質GDPはここから物価の変動による影響を取り除く。生産された財の価格が一気に2倍になったときに名目GDPは単純に2倍となるが、経済の規模も2倍になったわけではない。このように、財の値段が変化することでGDPの数値が変化してしまうことを避けるため、物価変動の要素を除いた実質GDPを用いることで、経済の実状を知ることができる。企業は財・サービスを売ることで、その付加価値分だけの利潤を得る。企業の得た利潤の一部は、賃金、利子、賃料、および租税として家計や政府の利潤となり、残りは企業の利潤となる。そして利潤の一部は株主への配当や内部留保となる。従って国内総生産は家計、政府、および企業へと分配された利潤の総和としても定義出来る。
(注2)鉱工業生産指数(Index of Industrial Production、IIP):日本の鉱業および製造業の生産動向を、その活動を総体として把握するために、ある基準年次を100とした指数で表したもの。鉱工業に属する業種では、非常に多数にわたる品目の製品を生産しているが、それらのなかから生産動態統計調査などを基本資料として重要性の高い品目を選定し、それらの生産量をおのおのの基準年次の生産量と比較した指数を作成し、それらを総合することによって全体指数とする。
(注3)薄型ディスプレイ:うすがたテレビ(Flat Panel TV)のテレビ受像機の表示画面に使われるフラットパネル・ディスプレイの総称である。
(注4)日本経済新聞の2023年2月18日(35面)に掲載された図表1「①「関東・山梨8都県のGDP増減率)(図表1、注4)。」
(注5)日本経済新聞の2023年2月18日(35面)に掲載された図表1「②「茨城県は国に先行して回復(実質GDP)(図表2、注5)。」
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2023年2月18日(35面)。
[付記]2023年4月3日。


コメント