[日本再生]「地域創生」地方副業(その1)、鳥取県が先行 2023年1月9日 首都圏のプロ人材を呼ぶ 「週1で副社長」300人集う
- honchikojisitenji
- 2023年1月9日
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[日本再生]「地域創生」地方副業(その1)、鳥取県が先行
2023年1月9日 首都圏のプロ人材を呼ぶ 「週1で副社長」300人集う
続木 碧(つづき あお) 2023年1月(研究報告№033)
[巻頭の一言]
人口減少が、ますます顕著になってきている日本の山間地において、見事な経営戦略が華開きました。それは、人口が全国で最も少ない鳥取県においてです。これは今急速に育っている「地域副業(注1)」と言う凄い戦略です。
すなわち、これを直言すれば、総務官僚から鳥取県知事に転じた平井伸治知事が「この戦略を実施すれば、遅れている地域も、直ちに先端知識を活用した地域に変身できる」と言う「鳥取県で週1副社長(注7)」という革命を発出させたのです。
県知事というトップリーダーの、その改革についての深い知識と、限りなき情熱とリーターシップ。これで、今、鳥取県は大変身しました。
また、平井さんの出身母体総務省も、これを国を上げて背中を押しました。それで「日本国・日本人」の苦手の弱点(体質)を見事に転換させました。日本企業の重大な弱点を克服する「一大革命」を達成したのです(注6)。
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
「地域創生」地方副業(その1)鳥取県が先行 首都圏のプロ人材を呼ぶ 「週1で副社長」300人集う
ここでは日本経済新聞の2022年11月12日の1面記事を紹介します。
[はじめに]
高度な職業スキルを持った人材が都市部などでの仕事を続けながら、移住を伴わずに地方企業で働く「地方副業(注1)」が広がってきました。働き手不足の解消だけでなく、新たな視点で事業を見つめ直すことで、経営課題の解決につながる可能性があります。
新型コロナウイルス禍で、リモートワーク(注5)が浸透したことも追い風に、鳥取県や富山県などが積極的に推進しています。(参考資料1、2022年11月12日の日本経済新聞の1面(桜井佑介、毛塚正夫、国司田拓児)を参照引用して記述)
[地方副業]
地方副業(注1)とは、大企業などで働く技術者や管理者らが、地方の企業で自身の知見や経験を生かす仕組みです。国は地方副業を人材不足が続く地方での創生の重要な手段として位置付けており、各都道府県に首都圏の人材協力会社と協力したマッチング(注2)を促してきました。
[地方副業の2018年以降の募集件数]
仲介する人材会社、みらいワークスとパーソナルキャリアの大手2社のデータを、2022年8月時点で集計しましたところ、副業解禁の2018年以降の累計で、「地方副業」の全国の募集件数は2154社でした。都道府県別では、鳥取県が293社で最も多く、大阪府(138社)、山口県(128社)、富山県(113社)が続きました。
[鳥取県 鳥取県鹿野町]
鳥取県は、元総務官僚の平井伸治知事の主導で、中小企業に地方副業の共同募集を呼びかけています。副業の共同募集を「プチ移住(注3)」と位置付け、2019年に「とっとり副業・兼業プロジェクト『鳥取県で週1副社長』」と題したホームページを立ち上げました。募集企業の経営者の人柄やメッセージを伝える動画を発信して求職者を募ります。
多くの企業は優秀な人材を欲していますが、一方でスキルを生かせる仕事は年間を通じてあるわけではないのです。2016年に就任以来、700社と面談した鳥取ハローワークの松井太郎戦略マネージャーによりますと、「経営者は優秀な人材には来て欲しいのですが、高い年収は払えない」とういうのが本音だと言うのです。そこで同県は、収入よりも将来のキャリアアップや地方創生への貢献など、やり甲斐に繋がるテーマをアピールしました。鳥取県における地方副業の成約実績は、これまで198社338人です。
鳥取市西部の鹿野町で宿泊施設など運営する第三セクター,ふるさと鹿野では、2022年4月から全日本空輸(ANA)の客室乗務員として勤務する真下あずみさんが副業を始めました。また、玄米茶メーカーや芝生ネット販売会社、サッカーJ3「ガイナーレ鳥取」を運営するSC鳥取などが、マーケッティング、サイト開発といった分野で「週1副社長」の募集を開始しています。
[富山県 富山県高岡市]
富山県は、県人材活用センターに、プロフェッショナル人材戦略本部を設置しました。プロ人材を求める中小企業の相談に応じるほか、人材紹介会社に支払う経費の2分の1以内、月2万2000を助成する副業・兼業人材活用促進事業費補助金」を用意しました。
アルミ加工のフジタ(富山県高岡市)は、今春、ソフトバンク社員の春日壮助さんを副業人材として採用しました。ウェブ発信の質を高めてフジタの知名度を上げ、採用や顧客の増加につなげるためです。
春日さんは、オンラインで月数回、ソフトバンクでの勤務を終えた午後6時から1時間程度、フジタと打ち合わせる仕事を進めています。春日さんは「副業をすることで、自分の市場価値を確認できました」と言っています。
フジタの梶川貴子社長は「ウェブ発信の充実を自分たちでやろうとしたら2~4年かかります。専門家にお願いしてスピードを上げたい」とその狙いを話しています。そして「中小企業が能力の高い人を正社員を雇用するのは厳しいのです。副業は高いスキルを拾い上げるいい手段です」と梶川さんは位置付けています。(参考資料1、2022年11月12日の日本経済新聞の1面(桜井佑介、毛塚正夫、国司田拓児)を参照引用して記述)。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参考引用した2022年11月12日の日本経済新聞1面の記事には、二つの図表が記載されてていました。①地方創生(注1)を積極的に募集している都道府県(図表1、注4)。②地方副業の新規求人は右肩上がり(図表2、注5)。
図表1は、この新聞紙上に、日本列島の地図が掲載されており、副業解禁(2022年8月時点)以降における、都道府県別の「地方副業」への応募企業の累計数が、青色の濃淡で示してありました。募集に対しての応募企業数が一番多い「ランク1」の自治体(都道府県)は、地方副業への応募企業が150社以上ある処で、最も濃い黒青色で示してありました。このランク1は鳥取県一カ所でした。
次にこの応募社数が多いランク2の自治体(都道府県)は、120~143社の処で、大阪府(138社)と山口県(128社)の2カ所。三番目のランク3の自治体、90~119社の処も富山県と広島県の2カ所でした。さらに、四番目のランク4は60~89社のところで、千葉県、群馬県、京都府、福岡県、大分県、熊本県の6カ所でした。この合計11府県が地方副業への応募件数が多い自治体(都道府県)です。
この地図の青色の濃淡で塗りわけられた日本地図を見て概観して見ますと、関西・山陰・中国地方と九州の日本列島の西半分で、この活動は活発です。しかし、四国だけは、最低ランク(0~29社)でした。総じて北日本は立ち遅れており、北海道と青森県から山形・宮城県に至る東北地方の北部と新潟県は、最低ランクに止まっていました。これは、地方副業の創設者,平井伸治鳥取県知事の影響拡大の範囲を示していると、私は感じています。
図表2には、2018年から2022年までの各年における新規求人数を棒グラフで示してありました。データは、みらいワークスの仲介サイト「スキルシフト」の新規求人数を引用しています。なお、2022年は同年9月末の実績に1~9月の伸び率に基づく予測値を加算しています。以下にそのデータを表にして記します。
図表2 地方副業の新規求人は右肩上がり
年 新規求人数
2018年 100件
2019 180
2020 200
2021 360
2022 600(内240は予測値)
(注)グラフは未来ワークスの仲介サイト「スキルシフト」の新規求人数。
2022年は9月末の実績値と1~9月の伸び率に基づく予測値。
これを棒線グラフに書きますと、たしかに、見事な右肩上がりの図になります。
[おわりに]
東京・山梨8都県も西日本と比べると、応募企業数などにおいては、見劣りするのですが、次回の研究報告で報告しますように、素晴らしく先進的な活動を進めている自治体(市区町村)があるのです。これについては次号をお読みください。(参考資料1、2022年11月12日の日本経済新聞の1面(桜井佑介、毛塚正夫、国司田拓児)を参照引用して記述)。
(注1)地方副業 : 地方再興のための副業。副業:移住・転職せずリモートで貢献できる働き方。収入を得るために携わる本業以外の仕事。兼業、サイドビジネスとも呼ばれる。
(注2)マッチング:組み合わせること。調和させること。複数のデータを突き合わせて照合すること。
(注3)プチ移住=ディアルライフ:好きな時に好きな場所で暮らす。
(注4)日本経済新聞、2022年11月12日の1面(桜井佑介、毛塚正夫、国司田拓児)に掲載れた図表「②地域副業の新規求人は右肩上がり」。注記:ワークスの仲介サイト「スキルシフト」の新規求人数。
(注6)地方副業解禁:政府の進める働き方改革の実行計画の一つとして、「副業解禁」を推進する動きがあり、2018年は、ついに「副業解禁元年」となった。巷では、法改正によって副業が解禁になったと認識している人も多いが、なにを以ての副業解禁と言うのか。今回改訂されたのは、厚生労働省が発表している「モデル就業規則」である。就業規則とは、常時10人以上の従業員を雇用する事業者については、労働基準法の定めるところにより、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないと規定されている。モデル就業規則には、これらの中の1つの要素としての「副業」に関する規定について、これまで次のように定めていた。「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」。要するに厚生労働省としては、これまで許可なく副業をすることを原則として禁止する姿勢だった。ところが、この度の働き方改革の一環として、この原則論を大変換して、次のように主旨改訂がなされた。「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」。このように原則として「勤務時間外であれば副業をしても良い」という副業推進姿勢に方向転換したのである。しかし、あくまでも本業の支障にならない範囲ということが、副業をする際の条件。また、副業が解禁となるのは、あくまでモデル就業規則に従って、自社の就業規則を改訂した企業に限られる。ただ、政府が方針転換したことで、ソフトバンクやヤフーといった大手企業も、モデル就業規則の改訂に先立って副業を許可した。このため、今後、自主的に副業解禁となる企業は急増してくる。
(注7)鳥取県で週1副社長:日本一人口の少ない鳥取県では、鳥取県内企業の経営課題解決のため、県内企業100社が「都市部のビジネス人材」を副業・兼業で募集している。県内企業の抱える課題は、経営戦略の見直し、マーケティング強化、人材育成・組織開発など多種多様である。この様々な領域で活躍する都市部のビジネス人材に、企業の経営課題解決に繋がるアイデア出しや企画・実行を担ってもらう。鳥取県では、地方版ハローワーク「鳥取県立ハローワーク」の無料職業紹介機能と、鳥取県と内閣府が協調して実施する「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」の人材スカウト機能を組み合わせた、全国初の「ビジネス人材誘致プラットフォーム」を構築した。これを「鳥取県で週1副社長」と全国に広く呼びかけている。
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2022年11月12日(1面)。
[付記]2023年1月9日。


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