[日本再生]「地域創生」半導体で新「企業城下町」2023年3月31日 GDPはコロナ禍前の水準を越えたのが計8県 経済安全保障の観点から国内生産の重要性が増大
- honchikojisitenji
- 2023年3月31日
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[日本再生]「地域創生」半導体で新「企業城下町」2023年3月31日 GDPはコロナ禍前の水準を越えたのが計8県 経済安全保障の観点から国内生産の重要性が増大
続木 碧(つづき あお) 2023年3月(研究報告№055)
「巻頭の一言」
日本経済のコロナ前の原点への回帰は、とても希望を持てる状況になってきました。日本経済に、手痛い打撃を与えたコロナウイルスとの闘いの中で、これに打ち勝って、コロナが来る前の「実質国内総生産」を、既に達成した自治体が、全国で8県現れました。
今、わが国でも、半導体の需要が大きく拡大しており、この半導体の生産・供給の順調な推移に背を押されて、「21世紀企業城下町」を形成し始めた地域が現れています。また、その予備軍が日本各地で、多数生れつつあるのです。この人達の、もう一息の頑張りがあれば、日本は今後、「国内総生産の伸びの良い成長国家」を再現させることが出来るのです。
「地域創生」半導体で新「企業城下町」GDPはコロナ禍前の水準を越えたのが計8県 経済安全保障の観点から国内生産の重要性が増大
「地域創生」
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
「地域創生」半導体で新「企業城下町」GDPはコロナ禍前の水準を越えたのが計8県 経済安全保障の観点から国内生産の重要性が増大
ここでは日本経済新聞の2023年2月18日2面の記事を紹介します。
[はじめに]
半導体が地域経済の牽引役になっています。2021年度の全国の実質国内総生産(GDP、注1)が2019年度の98%の水準に止まる一方、都道府県別では関連産業が集積する三重、山梨、熊本など8県で、県GDPが、コロナウイルス感染で、日本経済が沈没を始める前の2019年度の水準を上回りました。足元では供給過剰感が強まるものの、中長期では、また、需要が増える見込みです。経済安全保障の観点から世界的なサプライチェーン(供給網)の見直しが進んでいます。国内生産の重要性がいよいよ増しており、日本経済にも追い風が強まっています。(2023年2月18日の日本経済新聞の2面(桜井祐介、小山隆司、近藤康介)を参照引用して記述)。
[三重県]
東京財団政策研究所の山沢成康主任研究員(跡見学園女子大学教授)が推計した都道府県別の月次の国内総生産(GDP、注1)を基に、日経が2019年度と2021年度の水準を示す指標を算出し、比較しています。ここで最も回復したのは三重県でした。
2021年の三重県の国内総生産の回復度(%)は106%で、コロナ禍前の水準を超えました。ここでコロナ禍前を超えたのは計8県でした。上位自治体はいずれも製造業の活動状況を表す鉱工業生産指数(注2)が上昇しました。21世紀版「企業城下町」に向けた自治体の知恵比べが加速しています。
三重県は電子部品・デバイス工業の伸びが全体を押し上げました。三重県では、早くからこのテーマに注目し、力を入れており、2000年に、「シリコンバレー構想」をうたいあげ、集積を目指して大口設備投資に補助する仕組みを導入しました。新時代を担う半導体素子であるNAND型フラッシュメモリ(注3)(東芝、現在はキオクシアホールディングス)や高度に組成管理した単結晶シリコン素材である300ミリウエハー(注4)(富士通、現在は台湾UMC傘下)などの生産拠点を呼び込みました。そして、高額の設備投資を、県内に獲得しました。
ここで、2022年以降の半導体の需給の状況を見てみますと、半導体の受給のバランスは、消費者向け電化製品やデーターセンター(注5)の投資の減速などで崩れてきましたが、一方で自動車や産業向けは、なお逼迫しています。
信金中央金庫地域・中小企業研究所の角田匠上席主任研究員は、「半導体は製品サイクルに起因する短期変動はあるものの、需要拡大は続くことは間違いない」と指摘しているす。経済産業省は、世界の半導体市場は、2020年の50兆円から2030年に100兆円へと倍増すると予測しています。
この半導体の需給の活性化の大波にのり、先進企業の新産業に向けた新工場建設の高額投資を三重県内に獲得し、三重県の国内総生産(GDP)を拡大させました。
[山梨県]
産業の裾野が広いことも地域を浮上させる条件となります。回復率2位の山梨県(104%)は東京エレクトロンなど関連産業が主導しました。韮崎市に拠点を構える同社の2022年3月期の半導体製造装置売り上げ高は前期比48%増えました。2017年以降、同県に立地した半導体関連企業は24社に上ります。山梨県も21世紀「企業城下町」を牽引している中心メンバーです。
[熊本県]
今、各地域が期待をかけているのが、サプライラェーンの見直しや国内への生産回帰です。2021年には、これに伴う新規の大規模投資が期待されていました。2021年には半導体受託生産世界大手、台湾積体電路製造(TSMC)が1兆円規模の工場を熊本県菊陽町に建設することを決めました。九州ファイナンシャルグループの笠原慶久社長は、地域への経済波及効果は「10年で4兆3000億円に達する」と試算しています。
熊本県は、一歩一歩、着実に、半導体主体の産業の県内繁殖を進めており、ここ数年、急速に頭角を現わしてきました。熊本は、二十一世紀「企業城下町」作りのエースです。
[この項のまとめ]
2022年11月には、最先端の半導体の開発・量産を進める素晴らしい次世代企業が生れました。それはトヨタ自動車やNTTなど8社が出資して設立した新会社「Rapidus(ラピダス、注6)」です。この企業は、10年間で5兆円の設備投資を実施する計画です。今、各地の自治体がこの企業に熱い視線を送っています。
北海道の鈴木直道知事は、2023年2月16日、ラピダスの本社(東京・千代田)を訪問し、工場を北海道に建設するように要請しました。鈴木知事は「他の県からも、強力なアピールが行われている」ことを明らかにしています。ラピダスは、新工場の第一号を、北海道千歳市に建設すると発表しました。
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO、注7)によりますと、世界の対内直接投資は2021年に1兆5823億ドルでした。でも、日本向けは、この内1.6%にすぎないのです。米国(23.2%)、中国(11.4%)など、上位国に大きく水をあけられています。
一方で視点を変えてみれば、注目すべき状況もあります。半導体の製造拠点として知られる韓国と福岡市の製造業(一般工)の月額給与が、ほぼ同じ水準で並んでいるのです。さらに円安傾向で、対日投資への「割安感」も増しています。巨大投資を国内に呼び込む条件は揃いつつあるのです。これをチャンスと見極めて力強く挑戦しなければなりません。(2023年2月18日の日本経済新聞の2面(桜井祐介、小山隆司、近藤康介)を参照引用して記述)。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年2月11日の日本経済新聞2面の記事には三つの図表が記載されていました。①「地域経済の回復が早い都道府県(2021年度)、図表1、注8)。」②「地域経済の回復度会いに差(図表2、注9)」。③「好調なのは半導体関連ばかり」(図表3、注10)。
図表1(注8)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、半導体中心で進む、都道府県の各地の国内総生産(GDP)の回復度(増加度)を、青色の濃淡で塗り分けて示していました。これは「地域経済の回復の早い都道府県(2021年度)」と題した図表でした。この図表には、2019年の実質国内生産を100%とした時の2021年度の各地の実情の評価指標を、5ランクに分け、青色の濃淡で塗り分けて示してありました。
ここでは、地域経済の指標の回復が最も早い地域は、2021年で120%以上の処で、最も濃い青色(黒青色)で示してありました。このランク1の処は、三重県、山梨県、京都府の1府2県でした。
次いで復興の早い処は、2021年の水準が100%以上102%未満の処で、熊本県、青森県、岩手県、長崎県、徳島県の5県でした。結局、自治体(県・府)の国内総生産(GDP)が、コロナウイルスの感染で、日本経済が沈み始める前の2019年の水準を上回ったのは、三重県、山梨県、京都府、熊本県、青森県、岩手県、長崎県、徳島県の1府7県の8カ所でした。
一方、地域経済の回復が最も遅れた都道府県(ランク5、96%未満)は、宮崎県、福島県、広島県、佐賀県の5県でした。
その他の32都道府県(ランク3~4、96%以上100%未満)は、もう少しで、2019年を原点として増加に転ずることが出来る地域で、これが全体の71%を占めており、最も多く、日本全土に拡がっていました。
図表2(注9)は、「地域経済の活用度に差」と題した図表が記載されていました。この図表では、左縦軸に自治体(都道府県)の国民総生産(GDP)の回復度合いの指数(%)をとり、下側横軸に2006年度から2021年度までの年度をとり、三重県、熊本県、東京都の各年度の達成指数をプロットし、これを結んで、折れ線グラフを描いていました。
ここに登場した3都県は、それぞれ個性がありました。三重県は、一番実行力が大きいのです。地域経済を大きく躍進させる力があります。時々、大躍進しますが、直後に大きく転落もします。また、熊本県は、着実に力を伸ばしています。東京都の苦戦は明確でした。
2008年9月のリーマンショック(注12)の時は、3者とも大転落して85~90%まで落ちましたが、ここからコロナ禍の始まる直前の2019年の3社1列の100%に戻る過程が、図表に描かれていました。そして、2019年から2021年までの僅か2年間に、どのように回復したのか、2021年度は、三重県106%、熊本県100%、東京都97%と、劇的ともいえる差のあるスタートダッシュになりましたが、それが、2006年から2019年の13年間の進捗過程の反映であるというのが、このグラフが語る処なのです。
図表3(注10)は、「好調なのは半導体関連ばかり」と題した図表です。これを以下に示します。
図表3 好調なのは半導体関連ばかり
主な製造業 寄与度のボイント
電子部品・デバイス工業(注13)とは 1.0
半導体 フラットパネル・ディスプレイ製造装置(注14) 0.8
化学工業 ▲0.4
食料品・たばこ工業 ▲0.5
自動車産業 ▲2.8
その他 ▲2.4
合計 ▲4.4
(注)2021年度鉱工業生産指数(注2)の2019年比増減率の内訳。出所は経済産業省。
図表3を見ていて、私は強い衝撃を感じました。コロナウイルスの蔓延で、世界の社会・産業・企業は、等しく、大きな毀損を受けました。今は、ようやく、これが終息できるかどうかの瀬戸際ですが、今後これを如何に回復できるかが、最大の課題です。
この図表は、この経済の回帰に関して、回帰に寄与している産業と「足を引っ張っている産業(図表中▲印)」を、寄与度のポイントで示しています。そうすると結局、経済復興にプラスに寄与している産業は、「電子部品・デバイス工業(注13」と「半導体 フラットパネル・ディスプレイ製造装置」の二つしかないのです。その他の全産業は、現状では、「足を引っ張る側」なのです。私がここでの経済復興に大いに寄与してくれると期待していた自動車産業が最大の重荷(▲2.8ポイント)なのです。私は驚きました。今、プラスの寄与度を持っている2分野は、結局中身は、半導体だらけと言う状態でした。これを理解しやすいようにと、参考資料(注13、14)をつけました。ご参照ください。(2023年2月18日の日本経済新聞の2面(桜井祐介、小山隆司、近藤康介)を参照引用して記述)。
[おわりに]
私はこの研究報告を書いて、凄く元気がでました。もう一息でコロナ禍前の経済に戻れる自治体が日本全土に(都道府県の)70%以上も居るのです。今、各地の人達(自治体)は、地域経済の回復に向けて、必死の努力を続けてくれています。
あと4%水準を上げてくれれば、コロナ禍前の原点に戻れる人達が大勢いるのです。この人達が今の頑張りを続けてくれれば、原点回帰へと勇んで進んで行く人達が、続々と出てくるはずなのです。日本経済のコロナ前の原点回帰は、とても希望を持てる状況になってきました。
その人達が、その頑張りを続けてくれたら、そして三重県を追いかけて、熊本たちがこれに続いてくれたら、日本の今後は、国内総生産(GDP、注1)の伸び率の良い、成長する国家になれるのです。さあ、みんなで頑張りましょう。私も頑張ります。
(注1)GDP=国内総生産(gross domestic product):一定期間内に国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計のことである。その国内領土に居住する経済主体を基準にした数値で「居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額」をいう。国内総生産は「ストック」に対する「フロー」を表す指標であり、経済を総合的に把握する統計である国民経済計算の中の一指標で、GDPの伸び率が実質経済成長率に値する。
(注2)鉱工業生産指数(Index of Industrial Production、IIP):日本の鉱業および製造業の生産動向を、その活動を総体として把握するために、ある基準年次を100とした指数で表したもの。鉱工業に属する業種では、非常に多数にわたる品目の製品を生産しているが、それらの中から生産動態統計調査などを基本資料として重要性の高い品目を選定し、それらの生産量をおのおのの基準年次の生産量と比較した指数を作成し、それらを総合することによって全体指数とする。
(注3)フラッシュメモリ(Flash Memory):浮遊ゲートMOSFETと呼ばれる半導体素子を利用し、浮遊ゲートに電子を蓄えることによってデータ記録を行う不揮発性メモリである。東芝の舛岡富士雄が発明した。データを消去する際に、ビット単位ではなくブロック単位でまとめて消去する方式を採ることにより、構造が簡素化し、価格が低下したため、不揮発性半導体メモリが爆発的に普及するきっかけとなった。消去を「ぱっと一括して」行う特徴から、写真のフラッシュをイメージしてフラッシュメモリと命名された。
(注4)ウエハー(wafer): 半導体素子製造の材料である。高度に組成を管理した単結晶シリコンなどの素材で作られた円柱状のインゴットを、薄くスライスした円盤状の板である。呼称は洋菓子のウエハースに由来する。
(注5)データセンター (data center):各種のコンピュータやデータ通信などの装置を設置・運用することに特化した施設の総称。データセンターの中でも、特にインターネット用のサーバや通信設備・IP電話等の設置に特化したものはインターネットデータセンター (Internet data center; iDC) と呼ばれる。
(注6)ラビダス=Rapidus株式会社(Rapidus Corporation):日本の東京都千代田区に本社を置く半導体メーカー。 2022年8月に、日本の主要企業8社の支援を受けて設立。2020年代後半にプロセス・ルールが2mm以下の先端ロジック半導体の開発・量産を行うことを目指している。
(注7)独立行政法人日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization):東京都港区赤坂に本部を構える経済産業省所管の中期目標管理法人たる独立行政法人。設置法は独立行政法人日本貿易振興機構法。2003年10月1日に設立。職員数は日本国内1,045名、日本国外721名。日本の貿易の振興に関する事業、開発途上国・地域に関する研究を幅広く実施している。
(注8)日本経済新聞2023年2月18日(2面)に掲載された図表1「①「地域経済の回復が早い都道府県(2021年度)」(注8)。
(注9)日本経済新聞2023年2月18日(2面)に掲載された図表2「②「地域経済の回復度合い差」(注9)。
(注10)日本経済新聞2023年2月18日(2面)に掲載された図表3「③「好調なのは半導体ばかり」(注10)。
(注11)統合型の地理情報システム(GIS:Geographic Information System):地理情報および付加情報をコンピュータ上で作成・保存・利用・管理・表示・検索するシステムを言う。人工衛星、現地踏査などから得られたデータを、空間、時間の面から分析・編集することができ、科学的調査、土地、施設や道路などの地理情報の管理、都市計画などに利用される。コンピュータの発展にともなって膨大なデータの扱いが容易になり、リアルタイムでデータを編集したり、シミュレーションを行ったり、時系列でデータを適時に表現するなど、従来の紙面上の地図では実現不可能であった高度な利用が可能になってきている。
(注12)リーマンショック:アメリカ合衆国で住宅市場の悪化による住宅ローン問題がきっかけとなり投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが2008年9月15日に経営破綻したことにより、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象である。
(注13)電子部品・デバイス工業:「好調なのは半導体関連ばかり」と言という図表の中に、「電子部品・デバイス工業」という語があった。これらの産業分野が、半導体との関係が大きいことを示すため、理解の参考になる資料を検索してみた。」(資料)「電子部品・デバイス工業の需要動向」:2017年以降スマートフォン向け部材需要の一服で液晶パネルなどの生産が弱含んでいる。また、メモリが2016年以降データセンター向け需要の高まりを背景に、固定コンデンサが車載向けの需要増等を背景に増加した。メモリについては足下で需給の緩みによる取引価格の下落が生じた。こうした動向もあって、電子部品・デバイス工業全体でみても生産はおおむね横ばいとなっている。」この一文のなかに、半導体の語はないが、全文「ここに書かれた商品は全て半導体中心で成立している商品である。」これらの商品の需要動向は、半導体の需要動向を示している。
(注14)フラットパネル・ディスプレイ製造装置:フラットパネルディスプレイ(FPD)とは、ブラウン管に代わる、薄型で、平坦な画面の薄型映像表示装置の総称。FPDには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、FED(フィールド・エミッション・ディスプレイ)、電子ペーパなどがある。TVを始め、携帯電話、PCディスプレイ、ノートPC、モバイルミュージックプレイヤーなど、生活に浸透し、いまや生活必需品ともいえる機器に搭載されていている。FPD製造装置とは、フラットパネルディスプレイを製造するために使用される装置の総称。FPDの製造工程には、回路設計から点灯検査まで26種類ほどの工程がある。これらの解説は全て半導体の解説になる。
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2023年2月18日(2面)。
[付記]2023年3月31日。


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