[日本再生]「地域創生」動物園・水族館、観光の核に(その1)2023年1月2日 全国の6割。10年で入場者増。愛知県竹島水族館深海に特化して集客
- honchikojisitenji
- 2023年1月4日
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続木 碧(つづき あお) 2023年1月(研究報告№030)
「地域創生」動物園・水族館、観光の核に(その1)
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
「地域創生」動物園・水族館、観光の核に(その1)全国の6割。10年で入場者増。愛知県竹島水族館深海に特化して集客
ここでは日本経済新聞の2022年11月5日2面の記事を紹介します。
[はじめに]
公立動物園・水族館が集客力を取り戻してきました。限られた予算の中、動物本来の動きを引き出す「行動展示」や、ふれあう機会を充実し、高まる「コト消費」需要を満たしました。深海生物やクラゲなど「ニッチ」な内容に特化し新たなファンを獲得した施設も多いのです。全国6割の施設が入場者数を伸ばし「地域観光」の核となっています。(参考資料1、2022年11月5日の日本経済新聞の2面(中川竹美、上野正芳、大久保希美、増渕稔、檀上泰弘)を参照引用して記述)
[全国の動物園・水族館の数]
公益社団法人「日本動物園水族館協会(JAZA)」によりますと、2019年度時点でJAZA加盟の動物園・水族館は、全国に144施設あります。都道府県や市区町村が管理する公立施設は106(施設数は2010年度、2019年度の加盟施設に基づく)で、東京都が最多の9カ所、愛知県が7カ所、北海道が6カ所と続きます。低廉な入場料で小中学校の校外学習や地域住民が憩う場として親しまれてきましたが、設備の老朽化やレジャーの多様化、少子化などの影響を受け、全国では1992年をピークに入場者数が減少傾向に転じました。
[入場人数復活率の順位]
個別の入場人数復活率をみますと、独自の取り組みで盛り返しているところも多いのです。ここでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を廃除するため、2010年度と2019年度に入園者を、JAZAのデータで比べてみました。ここで入園者数を最も伸ばしたのは、和歌山城公園動物園(和歌山市、注1)で、4.6倍(28万5945人でした。以下、愛知県蒲郡市の竹島水族館(注2)、3.1倍、38万4959人、新潟県上越市の上越市立水族博物館(注3)、2.9倍、51万4946人、北海道千歳市の千歳水族館(注4)、2.4倍、25万8376人、山形県鶴岡市の加茂水族館(注5)、2.3倍、50万3912人の順でした。
[和歌山県和歌山市]
和歌山城公園動物園(注1)は、2018年度から堺市などで民間施設の運営ノウハウを持つ事業者に管理を委託し、入場者数を伸ばしました。アルパカ、ヤギへの餌やり体験や乗馬記念撮影会などのイベントを矢継ぎ早に展開しました。飼育員の湯浅真波さんは「動物を身近に感じることでファンが根付いた」と言っています。このことから、委託初年度だけで入場者数は前の年度の1.5倍と劇的に増えました。
[愛知県蒲郡市]
展示で特色を出すことによって、再興したケースもあります。愛知県蒲郡市の竹島水族館(注2)は深海生物に焦点を絞り、タカアシガニやオオゾクムシに直接触れることのできるプールを設置しました。予算節約の一貫で、紹介文を飼育員の手書きに変更したこともウリになりました。「おくちが意外とカワイイんです」など、語り口のポップを館内至る所に掲出しました。戸館真人副館長は言っています。
[山形県鶴岡市]
山形県鶴岡市の加茂水族館(注3)が焦点を当てたのはクラゲです。入館者が9万人まで落ち込んだ1997年、水槽に偶然生れたクラゲに入館者が喜んだのを見てカジを切りました。2000年に12種で日本一になり、2005年には20種で世界一を達成しました。奥泉和也館長は「とんがっていれば、遠くからもみえる」とこの戦略を、こう表現しています。クラゲ研究の下村脩氏のノーベル賞授賞なども追い風になり入館者を伸ばし、2008年に安定黒字経営に達しました。
[北海道旭川市]
公立施設の改革の先駆けは北海道の旭川市旭山動物園(注6)とされています。1990年代後半から野生に近い「行動展示(注7)」を取り入れました。
同園の入園者数は1997年以降右肩あがりに伸び続け、ピーク時は300万人(2006~2007年度)を突破しました。市推計の経済波及効果は1996年から2004年で193億園を超え、中核施設としての地位を確立しました。同園は2022年春「えぞひぐま館」を開館し、市街地にも出没するクマとの共生を考える施設として行動展示を進化させました。(参考資料1、2022年11月5日の日本経済新聞の2面(中川竹美、上野正芳、大久保希美、増渕稔、檀上泰弘)を参照引用して記述)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2022年11月5日の日本経済新聞2面の記事には、三つの図表が掲載されていました。①公立動物園や水族館は東京都や北海道など6都道府県で5カ所以上ある(図表1、注13)。②首位の和歌山城公園は5倍近く来園者を伸ばした(図表2、注14)。③動物園や水族館の利用者数はピーク時から約2割減少した(図表3)。
図表1は、この新聞紙上に、日本列島の地図が示されており、2019年度における都道府県別の動物園+水族館の数が茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。
動物園+水族館の数が最も多い自治体(都道府県)は、5カ所以上ある処で、最も濃い黒茶色で示してありました。この動物園+水族館の数が5カ所以上ある処は、北海道、東京都、埼玉県、長野県、愛知県、兵庫県の6都道県でした。
次に動物園+水族館の数が多かったのは、4カ所あるところで、神奈川県と福岡県の2県でした。続いて3カ所の所ある処は、新潟県、富山県、静岡県、岡山県、山口県、高知県の6県です。この合計の14都道県が、動物園+水族館の数が多い自治体(都道県)です。
この図表を見渡してみますと、人口が大きい大都市近郊に、動物園・水族館も集まっている感じです。でも、関西の大都市、大阪府(1カ所)・京都府(2カ所)と、この2府で動物園・水族館が少ないのが気になります。
図表2(注14)では、各地で中心となる動物園・水族館の2010年度比2019年度の入園者数の伸び率(倍率)の大きい順に、そのベスト10を表記していました。これを以下に示します。
図表2 首位の和歌山城動物公園は5倍近く来園者数を伸ばした
順位 施設名 倍率
1位 和歌山県和歌山市 和歌山城公園動物園(注1) 4.6倍
2位 愛知県蒲郡市 竹島水族館(注2) 3.1
3位 新潟県上越市 上越市立水族博物館(注3) 2.9
4位 北海道千歳市 千歳水族館(注4) 2.4
5位 山形県鶴岡市 加茂水族館(注5) 2.3
6位 福井県鯖江市 西山動物園(注8) 2.1
7位 長野県飯田市 飯田市立動物園(注9) 1.9
8位 愛知県碧南市 碧南海浜水族館(注10) 1.6
9位 東京都大島郡大島町 大島公園動物園(注11) 1.5
10位 東京都足立区 足立区生物園(注12) 1.4
(注記)2010年度比2019年度の入園者の伸び率
私は、頑張って来園者数をのばした動物園が、インターネットで発信している情報を探してみました。来園数の増加のベストテン上位の動物園は、本文に紹介がありましたが、ベストテンの下位の各地(注8~12)については、良くわかりませんでしたので、ホームページなどを読んで、注に記しました。
これらの動物園は、入場料を極力安くして子供連れの親子などが、入りやすいように配慮しています。入場料無料も多いのです。この経済的に極めて厳しい環境の中で、動物園の職員たちは、大変な努力をして集客していました。
ベストテン6位の鯖江西山動物園は、日本一小さい動物園なのです。その他、ここに並んでいる各地の園は、そろって小さいのです。それが集客力を発揮して全国の集客ベストテンに入ったのですから、並々ならぬ努力があったのです。
顧客の目線に立ち、アットホームな雰囲気を醸し出し、子供の笑顔を必死で引き出しています。このような活動は、これからも地域創生での原点であり、訪日客を招く際の基本となる態度です。日本各地は、このことを大いに学ぶべきなのです。
数匹づつでも良いから、皆で動物や魚類を飼って「店舗の人達が動物たちに降り注いでいる愛情で、顧客に接すること」、この原点に地域のみんなが立ち返って考えることが重要だと、私は、ここで、あらためて感じました。(参考資料1、2022年11月5日の日本経済新聞の2面(中川竹美、上野正芳、大久保希美、増渕稔、檀上泰弘)を参照引用して記述)
(注1)和歌山城公園動物園:城の敷地内にある全国でも珍しい動物園。大正時代の開園以来、無料で運営しており、令和4年4月1日末現在、ほ乳類22種81点、鳥類26種80点、は虫類32種5点、合計50種166点の動物を飼育・展示。
(注2)竹島水族館:愛知県蒲郡市竹島町にある蒲郡市立の水族館。飼育重視から規模の小ささを逆手に取った、アットホームな運営に路線変更したことで入館者が増加。経営戦略の変更のきっかけは、2011年に行われたリニューアルで、水族館プロデューサーの中村元の提案を受け、新設されたタッチプールにタカアシガニを導入したほか、職員の発案でカピバラの飼育を開始。その結果、2015年度に入館者数が初めて30万人の大台を突破。2018年度はタケスイ史上最高の47万5千人を達成。
(注3)上越市立水族博物館: 新潟県上越市五智にある上越市営の水族館。上越市の直江津地区中心部の日本海沿岸に立地する。起源は1934年の私立水族館開館に遡る。1953年に博物館となり、1954年に市営に移管された。2018年に「うみがたり」の名のもとでリニューアルオープンし、現在は、300種・45000点の水棲生物を飼育している。館内のマゼランペンギンでは世界最多の飼育数の120羽が暮らしている。
(注4)千歳水族館:北海道千歳市にある水族館。サケのふるさと千歳水族館は、淡水では日本最大級の水槽を有する水族館で、館内ではサケの仲間や北海道の淡水魚を中心に、世界各地の様々な淡水生物を観察することができる。千歳川の水中を直接見ることのできる日本初の施設「水中観察ゾーン」では、四季折々の千歳川の生き物たちの営みを、間近に観察することができる。中でも、秋に産卵のため川をさかのぼるサケの群れは必見。サケの稚魚放流体験などのイベントや企画展などを数多く開催中。
(注5)鶴岡市立加茂水族館: 山形県鶴岡市にある市立の水族館。同館は旧加茂町の中心部に近い日本海に面した岬に建っている。クラゲの展示種類50種類以上で、2008年にはクラゲの繁殖等を授賞理由に古賀賞を受賞。2012年には種類数でギネス世界記録に認定。加茂港(加茂村)は江戸時代、庄内藩・鶴岡城下の外港として繁栄。明治以降の鉄道開通でその地位から転落。1930年に隣接する湯野浜温泉への鉄道開通を機に、同温泉の組合が加茂港背後地に当館を誕生させた。太平洋戦争中は国策の施設に転用され、1956年に12年間の空白期間を経て水族館として復活。集客力は1967年度に「21万7372人/年度」に達した。その後、凋落し、「9万2183人/年度」にまで落ち込む。歴史90年において、組合、県、市、第三セクター、民間、市と経営母体が変遷し、営業休止も経験した。経営上の紆余曲折も経ながら、クラゲに特化した水族館として復活。今や「50万人/年度」以上を集客する庄内地方有数の観光地となった。クラゲの飼育・繁殖に関する高度なノウハウを持つ。このため、海洋生物学研究者や世界の他の水族館から注目されている。
(注6)旭川市旭山動物園: 北海道旭川市東旭川町倉沼にある旭川市が運営する動物園。1997年以降は入園者数が増加し、北海道を代表する観光地として定着。日本国内だけではなく海外からも数多くの観光客が訪れている。2004年6月の「あざらし館」公開以降は、8月は32万1500人と、恩賜上野動物園を抜いて日本一の月間入園者数を記録。2006年度以降は入園者が300万人を超え、上野動物園に次いで国内2位。世界レベルでも上位の入場者数を維持。寒冷地域に生息する動物の飼育繁殖に実績がある。
(注7)行動展示:その動物の生態やそれに伴う能力を、自然に誘発させて観賞者に見せるように工夫した展示。 日本では旭川市旭山動物園で有名になった。
(注8)鯖江市西山動物園:福井県鯖江市桜町にある動物園。鯖江市制30周年を記念して、1985年4月11日に開園。日中友好のシンボルとして中国・北京動物園から寄贈を受けたレッサーパンダは、1986年以来毎年繁殖し、繁殖数が日本有数となっている。また、敷地面積は3830平方メートルと日本動物園水族館協会に加盟する動物園の中で最も小さく、日本一小さな動物園として知られている。
(注9)飯田市立動物園:長野県飯田市にある市立の動物園。1953年5月5開園。飯田市のシンボルのりんご並木の南端にある。鳥類と哺乳類を中心に60種を飼育する小規模な動物園。園内を走る豆汽車「弁慶四世号」やバッテリーカーなど子供向けの遊具がある。入園が無料なので気軽に入れる。エサやり体験も充実し、人気を博している。
(注10)碧南海浜水族館: 愛知県碧南市浜町の碧南市臨海公園内にある市立の水族館。1982年7月7日に開館。水族館には、日本沿岸の魚類を300種4000尾と矢作川・伊勢湾・三河湾などに生息する地域の魚などを展示している。
(注11)大島公園動物園:東京都大島町泉津字福重2号にある動物園。噴出した溶岩をそのまま使用するなど自然を生かした展示をしている。東京都が策定した「ズーストック事業」の対象園となっており、カラスバトの繁殖を国内で初めて成功させるなど、希少動物の飼育・繁殖にも力を注いでいる。大島公園内の売店にて購入した指定のエサを、園内にエサとして持ち込む事が認められている。
(注12)足立区生物園:東京都足立区の元渕江公園内にある生物園(動物園・水族館)。1階、2階の屋内展示と屋外展示場からなる。チョウの大温室は1階・2階吹き抜けとなっている。屋外展示場にはふれあいコーナーがあり、様々な動物に触れることが出来る。2010年4月、屋外展示場にオージードームが開設された。2013年から改装工事のため閉園していたが、2014年33月30日から再開した。
(注13)日本経済新聞2022年11月5日(2面)に掲載された図表「①公立動物園や水族館は東京都や北海道など6都道府県で5カ所以上ある(図表1)。注記、施設数は2010年度比2019年度のJAZA加盟施設に基づく)。
(注14)日本経済新聞2022年11月25日(2面)に掲載された図表「②首位の和歌山城公園は5倍近く来園者を伸ばした(図表2)。(注記)2010年度比2019年度の入園者の伸び率」。
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2022年11月5日(2面)。
[付記]2023年1月2日。


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