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[日本再生]「地域創生」ご当地産品 知財で育む 2023年3月3日 「地域団体商標」741件に 神戸牛 皮革もブランド化

  • honchikojisitenji
  • 2023年3月3日
  • 読了時間: 8分

 

続木 碧(つづき あお) 2023年3月(研究報告№047)

「巻頭の一言」

 地場の特産産品を知的財産として守り育てる活動が広がってきました。地名とサービス名からなる地域ブランド(注1)を「地域団体商標(注2)」として登録する凄いアイディアが湧出し始めています。ここでは、これを2編連続で報告します。


「地域創生」ご当地産品 知財で育む 「地域団体商標」741件に 神戸牛 皮革もブランド化


[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]

ご当地産品 知財で育む 「地域団体商標」741件に 神戸牛 皮革もブランド化

ここでは日本経済新聞の2023年1月21日2面の記事を紹介します。

[はじめに]

地場産品を知的財産として守り、育てる動きが広がってきました。地名とサービス名からなる地域ブランド(注1)を「地域団体商標(注2)」として登録しやすくする制度が、2006年に始まりました。地域団体商標の全国の有効登録数は、2022年末現在で741件になりました。模倣品の排除やライセンス契約による販路拡大が見込めますが、効力は国内に止まります。中国で、日本の地名などを第三者が登録する例が相次ぐ中、海外対応を見据えた戦略づくりが欠かせないのです。(2023年1月21日の日本経済新聞の2面(江口博文、篠崎瑠香、出口広元、久保田皓貴)を参照引用して記述)。


[地域団体商標]

 通常、地名とサービス名を合わせた文字商標は「夕張メロン」や「西陣織」のように、全国的な知名度がないと登録できません。しかし、地域団体商標では近隣の都道府県で周知性があれば登録できます。名称を独占的に使えるなどの効果は通常の商標と同じで、早い段階からブランドの保護や管理に注力できます。

 

[登録数のランキング]

特許庁によりますと、都道府県別の登録数は京都府の68件が最多です。工芸品や野菜など「京」を冠した商品が目立ちます。2位以下は兵庫県(44件)、北海道(36件)と続きます。8位東京都(23件)も「江戸切子」など「江戸」がらみの登録が多いのです。


[兵庫県神戸市]

兵庫県では2021年、「KOBELEATHER(神戸レザー)」が革素材として全国で初めて登録されました。「神戸ビーフ」として海外でも知名度のある神戸牛の活用を広げようと神戸市の革小物店や家具店が2019年に設立した「神戸レザー共同組合」か取得しました。年約400頭分の皮革で小物入れや財布を作ります。

組合は評価機関が神戸ビーフと認めた但馬牛の原皮のみを使いますが、神戸牛の原皮は他の牛と混在して流通するケースがあり、神戸牛をうたった商品も出回っています。片山喜市郎代表理事は「登録後は一部百貨店にあった模造品はなくなった」と話しています。


[北海道帯広市]

 模造品対策が「守り」なら、販路拡大は「攻め」の活用になります。北海道の「十勝川西長いも」は帯広市西農業共同組合などが1999年に輸出を始め、2006年に商品登録しました。産地証明が必要になった東日本大震災以降は、登録証が国が認めた産地証明として扱われ、輸出事務が円滑に進みました。衛生管理に関する国際認証の取得などの取り組みも実り、ピーク時の2015年の輸出は11億円以上に達しました。


[千葉県勝浦市]

 2022年末と2006年度の登録数を比べた増加率(登録数が全国平均を上回る16都道府県が対象)は、千葉県が18倍でトップでした。ご当地グルメの祭典「B―1グランプリ(注3)」の常連「勝浦タンメン」(勝浦市)は成功例の一つです。地元の企業組合が2014年に登録し、食品メーカーなど10社とライセンス契約を結びました。コラボ商品の売り上げから得る使用料は年間数百万円に上ります。


[この項のまとめ]

 欧州では、古くから地名の価値が重視されていました。フランスのナポレオン3世は、パリ万博(1855年)に出品したボルドーワインの格付けを命じ、ボルドーを生産地として広めました。農水産品の名称を保護する「地理的表示(GI、注4)」制度も欧州連合(EU)が先行して導入しました。

 一方、日本から海外進出する際の有力な選択肢になる中国は、日本の地域ブランド(注1)が、正当な権利を持たない第三者により商標登録される例が後を絶たないのです。この対抗処置としては、何よりも海外で先に登録することが大切です。

 特許庁も海外での出願にかかる費用の半額を補助するなどして後押ししています。東京理科大学大学院の生越由美教授(知的財産戦略)は、地域団体商標の取得について「登録された名称で信用あるものを生み出していくという決意表明にほかならない」と指摘しています。その上で「関係者が『地域財産』としての認識を共有し、権利の保護と活用を、ビジネス感覚を持って進めていくことが重要だ」と述べています。(2023年1月21日の日本経済新聞の2面(江口博文、篠崎瑠香、出口広元、久保田皓貴)を参照引用して記述)。

 

[まとめ]

この研究報告の執筆で参照引用した2023年1月21日の日本経済新聞2面の記事には三つの図表が記載されていました。①地域団体商標の都道府県別登録数(図表1、注5)。②登録数の増加率上位ランキング(図表2、注6)。③地域団体商標の産品別内訳(図表3、注7)。


図表1(注5)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、地域団体商標(注2)の都道府県別の登録数が茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。都道府県別でみて地域団体商標の登録数が最も多い処は、登録数が40件以上の処で、最も濃い茶色(黒茶色)で示してありました。このランク1の処は、京都府と兵庫県の1府1県でした。

次に登録数の多いランク2の処は、登録数が20件以上40件未満の処で、東京都、北海道、静岡県、愛知県、岐阜県、石川県、福岡県の1都1道5県でした。結局、地域団体商標の登録数の多い処(ランク1~2)は1都1道1府6県でした。これを全国の視点でみますと、近畿地方、関東地方、中部地方、北海道に、登録数の多い自治体が多く、東北・四国地方には登録数が多い自治体はありませんでした。九州では福岡県が唯一、登録数が多い地域として頑張っています。


 図表2は「登録数の増加率上位ランキング」と題した図表であり、地域団体商標の登録数を2022年12月を2006年と比較し、その増加の倍率を表に表記していました。なお、ここでは登録数が全国平均を上回る16都道府県を対象として調査しています。以下にこれを示します。


図表2 登録数の増加率上位ランキング


順位    都道府県       倍率     2022年末の有効登録数

1     千葉県       18.0倍      18件

2     北海道       12.0       36

3     福井県        9.5       19

4     静岡県        9.3       28

5     福岡県        8.0       24

6     兵庫県        7.3       44

7     三重県        5.7       17

8     熊本県        5.3       16

8     愛知県        5.3       21

10    広島県        4.0       16


(注)2022年12月と2006年度を比較。登録数が全国平均を上回る16都道府県が対象。件数は2022年末の有効登録数。


 この表を一見して感じたのは、この制度が開始された当初、圧倒的に登録数が多かった京都府が、2022年のベスト10には、姿が消えたことです。京都府はスタートダッシュは、素晴らしかったのですが、最近の登録は少なくなっているのでしょう。代わって千葉県、北海道が、近年、活発です。開始当初、トップを争っていた兵庫県は、今も頑張っています。


 図表3は「地域団体商標の産品別内訳」と題した図表であり、地域団体商標の登録の産品別の内訳を円グラフで示してありました。ここでは、これを表記して示します。


図表3 地域団体商標の産品別内訳


百分率多い順    産品名                構成百分率

   1        工芸品・かばん・器・雑貨       12.2%

   2        野菜                  9.2

   3        加工食品                8.8

   4        織物・被服・布製品・履物        8.5

   5        食肉・牛・鶏              8.3

   6        果実                  6.8

   7        水産食品                6.8

   7        仏壇・仏具・葬祭用品・家具       5.1

   9        その他 


(注)2022年4月現在で権利が存続している商標が対象。


 この図表を見ますと、「地域団体商標」で登録されている産品の内容を知ることができます。今後、未来に向けて、画期的な事業や新商品を、どんどん開発して、「地域団体商標」として、どしどし登録し、世界に発信し、サービスや商品と共に、各地の地名の知名度を世界に広めでいくことが、極めて重要です。これはポストコロナ時代の日本経済の発展のために、凄く大事な課題となるでしょう。


(注1)地域ブランド:地域を主に経済的な側面から捉えたときの、生活者が認識するさまざまな地域イメージの総体。 この語は、経営もしくはマーケティング分野でも使われる。そこでは「ブランド」から派生した概念であり、「商品ブランド」や「企業ブランド」などと同様の体系や ダイナミクスを持つ。 したがって、特産品や観光地など実体のあるものを地域ブランドと言うばかりでなく、「食べ物がおいしそう」「海がきれい」などのイメージを連想させる地名や地形といった無形の資産を地域ブランドとすることもあり、その概念は広い。ブランド(brand):あるサービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念

(注2)地域団体商標:日本商標法において、地域の名称と商品または役務の名称を普通に用いられる方法で表示する文字のみからなる商標等であって、一定の範囲で周知となったため、事業協同組合農業協同組合等が商標登録を受ける商標をいう。商標法の原則では、地域名と商品などの普通名称とを、単に組み合わせたものは登録できない(商標法3条1項3号)。しかし、これでは地域ブランドの保護に欠けるという問題が生じていた。そこで2005年の商標法の一部改正により、地域8団体商標制度が導入され、2006年4月1日から商標登録の出願の受付が開始された。2006年10月27日に第一弾として52件が登録され、その後、登録件数は増加しており、現在、741件が登録されている。

(注3)B―1グランプリ:ご当地グルメをテーマとした日本最大級のまちおこしイベント 。食をテーマとしたまちおこしイベントとしては最も知名度の高いものの一つ。 日本の各地方のボランティアまちおこし団体による共同発信のイベント。様々なパフォーマンスやおもてなしで来場者を迎えている。

(注4)地理的表示(geographical indications、GI):ある商品の品質や評価が、その地理的原産地に由来する場合に、その商品の原産地を特定する表示である。条約や法令により、知的財産権のひとつとして保護される。

(注5)日本経済新聞2023年1月21日(2面)に掲載された図表1「地域団体商標の都道府県別登録数」。(出所)特許庁。2022年12月末現在で、権利が存続している商標の集計。複数の自治体にまたがる場合はそれぞれカウント。

(注6)日本経済新聞2023年1月21日(2面)に掲載された図表2「登録数の増加率上位ランキング」。(注)2022年12月と2006年度を比較。登録数が全国平均を上回る16都道府県が対象。件数は2022年末の有効登録数。

(注7)日本経済新聞2023年1月21日(2面)に掲載された図表3「地域団体商標の産品別内訳」。(注)2022年4月現在で権利が存続している商標が対象。


[参考資料]

(1) 日本経済新聞、2023年1月21日(2面)。

[付記]2023年3月3日。

 
 
 

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