[地域創生]法人住民税575市町村で増収(その2) 2022年11月9日 東京都檜原村 法人住民税48%増 民泊施設続々 グランピングや空き家改修
- honchikojisitenji
- 2022年11月9日
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続木 碧(つづき あお) 2022年11月(研究報告№011)
☆巻頭の一言
法人住民税増加の市町村が増大。「柔軟な発想で多くの市町村が域内経済を活性化している」についての第2偏です。
[法人住民税575市町村で増収(その2)]
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
[東京都檜原村 法人住民税48%増 民泊施設続々 グランピングや空き家改修]
ここでは日本経済新聞の2022年8月13日の33面記事を紹介します。
[はじめに]
関東・山梨の1都8県でも、企業の数や業績に連動する法人住民税を、2020年までの10年間で大幅に増やした自治体が見られました。工業団地の造成や税制優遇などで企業を誘致したほか、不振の公共施設を廃止して跡地に工場進出を成功させた例も多数あります。この地域の交通アクセスの良さも追い風になっています。
[東京都]
[日本が世界に誇る巨大都市東京都の檜原(ひのはら)村も法人住民税を48%増やした]
東京都檜原(ひのはら)村は、法人住民税を48%伸ばしました。民泊施設が続々と生れました。グランピング(注1)施設や空き家をリノべーション(改修)した宿泊施設の開業が相次ぎました。また、林業分野の法人が次々と創業し「企業誘致の成果がでてきた」
ことが法人住民税の増収の背中を押しました。
[群馬県]
[群馬県明和町が法人住民税増加率、実質全国第2位に]
群馬県東南部の明和町が、法人住民税増加率で全国実質2位になりました。同税収を4.8倍に増やしました。群馬県が工業団地を造成し、2014年に凸版印刷の大規模工場が完成しました。2016年以降は、明和町の土地開発公社が工業団地を分譲し建設業の日本基盤技術の誘致に成功しました。公社の担当者は「工場向けの電力や都市ガスなどのインフラが整い工業用水も安いので、企業からの引き合いが多い」と胸を張っています。
企業誘致は雇用を創出し、移住・定住を促進する効果が期待されます。でも、明和町には充分な宅地がないため人口増加には結びつきませんでした(人口は2.9%減)。それでも、会員制量販店コストコが2023年に、明和町内へ進出を表明しています。
コロナウイルスの来襲により、今、大都市から住みやすいマチへの移住の流れが進んでいます。この中で明和町の人口増加は、ここで、また加速するのではないかと、私は感じています。
[栃木県]
[栃木県壬生町の法人住民税は53%増加。牽引役はファナック壬生工場」
栃木県宇都宮市の南に隣接する壬生(みぶ)町。「かんぴょう」と「おもちゃ」で有名な町の法人住民税は、2020年度、2010年度比で53%増えました。この10年、町内の産業団地に相次ぎ企業が進出しました。最大の牽引役が2016年に稼働を始めた敷地面積70万平方メートルのファナック壬生工場です。
壬生町には、かって県営宇都宮競馬場が移転する計画がありました。ところが、地方競馬の不振で、同競馬場が2005年3月に計画中止になりました。栃木県は移転予定地として整備した広大な用地の売却に苦戦し、分割譲渡を計画していたところファナックが救世主として現れたのです。
ファナックはファクトリーオートメーション(FA、注2)化の波で、山梨県忍野(おしの)村にある本社工場での生産が追いつかなくなったのです。さらに、東日本大震災以降、大規模な自然災害が相次いだことで、事業継承計画(BCP、注3)を抜本的に見直して拠点の分散を模索していたのです。これは栃木県とファナックにとって、ぴったりのビッグタイミングでした。
[千葉県]
[千葉県酒々井町は法人住民税を同2.2倍に増加。衣料品・雑貨ブランド220店。年間660万人が来場。]
千葉県酒々井(しすい)町は法人住民税を同2.2倍に増やしました。三菱地所グループが2013年に町内に開業した「酒々井プレミアム・アウトレット」の貢献が大きかったのです。東京都心から車で50分、成田空港から15分とアクセスが良く、国内外の衣料品や雑貨などのブランド220店がそろって出店しました。
3期にわたる拡張で総敷地面積は42万平方メートル余り。コロナ前は年間660万人が来場しました。2022年7月には、施設を拠点にヘリコプターの遊覧飛行サービスを始めました。将来の「飛ぶクルマ」の実用化を見据えた試みで、観光拠点としても新たな需要を開拓しています。
[神奈川県]
[神奈川県厚木市は法人住民税を同97%増加。物流・自動車関連企業から法人住民税流入]
神奈川県厚木市は、法人住民税が同91%増えました。これは東名高速道路や新東名高速道路、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、国道246号などが通る交通の要衡にあります。東名厚木インターチェンジ(IC、注4)周辺を中心に、自動車関連企業などが多く立地し、法人住民税が入るのです。
2015年には圏央道が開通し、渋滞する東京都心を通らずに各地と行き来できるようになり、沿線で物流施設の新設が相次ぎました。2020年9月には、圏央道の厚木パーキングエリアに接続するスマートIC(注4)が開通しました。圏央道の内回り外回りの両方向とも出入りでき、企業誘致の促進効果も期待されています。
[埼玉県]
[埼玉県杉戸町の法人住民税が61%増加。日用品卸や電気用品製造・販売が参集]
埼玉県では杉戸町が法人住民税を61%増やしました。県企業局と協同で、2017年までに「杉戸屏風深輪産業団地」を整備したことで、日用品卸のPALTAC(パルタック)や電気用品を製造・販売するオーム電機(東京・豊島)など8社が立地しました。さらに、町内に事業所を設置した凸版印刷の業績が、近年好調なことが税収増に大いに貢献したのです。(参考資料1、2022年8月13日、日本経済新聞(33面)を参照引用して記述)
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2022年8月13日の日本経済新聞(33面)の記事には、図表一つが掲載されていました。①法人住民税収の増加率の高い自治体(市町村)。(図表1、注5)。
図表1には、法人住民税の増加率が高かった自治体を表で記載してありました。以下に示します。
図表1 法人住民税の増加率が高かった自治体(市町村)
順位 自治体名(市町村名) 税収の増加率
1 明和町(群馬) 4.8倍
2 早川町(山梨) 3.6
3 酒々井(しすい)町(千葉) 2.2
4 東庄町(千葉) 2.0
5 厚木市(神奈川) 97%
6 小菅村(山梨) 87
7 八千代市(千葉) 66
8 富津市(千葉) 65
9 杉戸市(埼玉) 61
10 鳩山町(埼玉) 60
13 壬生(みぶ)町(栃木) 53
16 檜原(ひのはら)村(東京都) 48
注記 2010年度と2020年度で比較。関東・山梨1都8県の順位。「市町村別決算状況調」から。6位以下は特徴的な自治体を抜粋。(参考資料1、日本経済新聞2022年8月13日(33面)から引用)
この表には、税収増加率の大きい順に10カ所。その以下には、特徴的な自治体が抜粋してありました。世界に誇る日本の超巨大都市東京都を囲む8都県ですが、この法人住民税増加率上昇を目指す全国レベルのレースでも、やはり現在全国を先導している先導者でした。すなわち、このベスト10を見ますと、10位の鳩山町も法人住民税を、60%増加させており、好成績の市町村の層は、この8都県でも厚いのです。
でも、私は、多少残念に思うのです。ここで、特徴的な存在として取り上げられている栃木県壬生町(みぶまち)は、この町の法人税増加を牽引したのは、日本のAI・IoTを牽引したファナックだったのです。ファナックが救世主だったのです。これは、日本の高度経済成長時代の牽引者が、この町の産業団地に参入してくれたらから助かったという話なのです。
ここで参照している記事のほとんどが同様に、戦後の高度成長に巧く乗れたから、今日があるという話でした。未来に向けた楽しみな芽の話は出てこないのです。
実は、この解説に書かれているような内容(高度成長時の成長)が自慢の法人住民税の増加組が、日本中に、夥しく多数いるのです。
私が、一連の研究報告で書いている、新しい進化の種を見付けて一生懸命努力している各地の事例に習って、どうか、みなさん、未来に向けて進化の種を育てる努力をしてください。そうすれば、日本の未来への進化は、大きく前進するのです。どうか、よろしく、お願いいたします。
(注2)ファクトリーオートメーション(Factory Automation 略字FA):工場における生産工程の自動化を図るシステムのこと。従来、人間によって行われていた作業を無人化することを意味する。産業用ロボットを多用して、従来人間によって行われていた作業を無人化することで、人間による作業ミスの削減、作業効率の向上、人間に対する安全性の向上を図る。
(注3)事業継承計画(business continuity planning, BCP):災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑えて、事業の継続や復旧を図るための計画。事業継続と復旧計画(Business Continuity & Resiliency Planning, BCRP)とも呼ばれる。企業に対する潜在的な脅威に対処するための予防に加えて事業の継続的な運用を可能にすることを目標とする。
(注4)スマートIC:日本の高速道路の本線上またはサービスエリア (SA)、パーキングエリア (PA)、バスストップ (BS) に設置されている、ETC専用の簡易構造のインターチェンジ (IC) である。ETC=電子料金収受システム(Electronic Toll Collection System): 高度道路交通システムのひとつ。有料道路を利用する際に料金所で停止することなく料金支払いが可能なノンストップ自動料金収受システムで、電子決済(キャッシュレス決済)の一種である。
(注5)日本経済新聞、2022年8月13日(33面)に掲載された図表「①法人住民税収の増加率の高かった自治体(市町村)。注記、2010年度と2020年度で比較。関東・山梨1都8県の自治体(市町村)の順位。「市町村別決算状況調」から作成。
[参考資料]
(1) 日本経済新聞、2022年8月13日(33面)。
[付記]2022年11月9日。


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