「日本再生]「地域創生」女性の「工学」進学 山形首位 2023年7月10日 先輩研究者 中高で講義 熊本大「女子枠」で半導体人材
- honchikojisitenji
- 2023年7月11日
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続木 碧(つづき あお) 2023年7月(研究報告№073)
「巻頭の一言」
AIやIoTなどの技術の急速な進展に伴って、社会や産業が著しく変化し、様々な課題が生じています。世の中のこの変化に対応していくために、女性の理工系の人材の必要性が急速に拡大してきました。政府も、この需要に応えるため、女性向けの社会横断的な高等教育を強力に推進しています。今日は、この点に視点をおき研究報告を記します。
「地域創生」女性の「工学」進学 山形首位 先輩研究者 中高で講義 熊本大「女子枠」で半導体人材
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
「地域創生」女性の「工学」進学 山形首位 先輩研究者 中高で講義 熊本大「女子枠」で半導体人材
ここでは日本経済新聞の2023年6月24日2面の記事を紹介します。
[はじめに]
新産業創出やイノベーション(注1、技術革新)には、多様な視点や発想が欠かせないのです。一つのカギが女性の理工系人材の育成と活用です。日本で大学の工学系学部に進む女性は少ないのですが、山形県は2割を超します。技術者や研究者の厚みを増せば、地域産業の振興にもつながるため、各地で女性の進学を後押しする動きが強まっています。
2023年6月24日の日本経済新聞2面(有年由貴子、竹内雅人、近藤康介)を参照引用して記述。
[女性の理系人材の育成]
日本は理工系人材が男性に偏っています。経済協力開発機構(OECD)の2019年時点の調査によりますと、高等教育におけるSTEM(注2、ステム、科学・技術・工学・数学)分野の卒業生のうち女性比率が日本は17%、比較可能な加盟国で最下位でした。OECD平均は32%で、ポーランドや英国は40%以上に達します。工学系は特に女性比率が低いのです。
文部科学省の2021年「学校基本調査」を基に、内閣府が外部機関に委託して分析したところ、4年制大学の工学部に進んだ高校生らのうち女性比率が最も高かったのは山形県で20.2%と唯一2割を超えました。東京都が19.3%、岩手県が17.9%、熊本県が17.6%で続きました。全体では、15.2%でした。
[山形県]
山形県の牽引役は、山形大学です。女性の教員や大学院生を組織し、県内の中学高校で出前講義や進路相談を実施しています。理科好きの女子生徒にはお手本となる「ロールモデル(注3)」に接する機会となります。「将来の選択肢に研究者の道もあると知った」。生徒からはそんな感想も寄せられました。
講師役を務める理工学研究科博士過程3年の安達茜さんは「初めて女性研究者に会ったという子がほとんど」と話しています。交流のきっかけに、学内を見学するオープンキャンパス(注4)への参加や、研究室訪問を希望する女子生徒も増えてきました。
子どもの理科への関心を育む活動も続けています。2008年に学内に科学教育の拠点を設け、県内の小中学生向けに単発イベントのほか、「ヤマガタステムアカデミー」として通年の講座を開きます。電池づくりなどの実践、人工知能(AI)やプログラミング体験を用意。参加の半数は女性です。
幼いころから科学館などでの「理系的な経験」が豊かな女性は、理工系に関心が高いとされていますが、地方はそうした場が限られるのです。「理系は女性に不向き」といった思い込みや偏見も進路選択を狭めてきました。
山形県は有機EL(注5)など先端産業の振興を掲げています。大森桂副学長は「地元産業とも連携して女性の活躍の場を広げ、次世代の人材育成へ好循環をつくりたい」と話しています。
[香川県]
香川県も中高生への働きかけを強めています。県内の大学や企業で働く女性技術者・研究者との交流イベントを、2017年度から続けています。2022年度は、メタバース(仮想空間、注6)上で開き、70人の女子生徒が参加しました。2023年度は香川大学を中心とした産学官で女性の理工系進学を促す全県プロジェクトに乗り出します。県内出身の女性科学者展などを実施します。
[この項の終りに]
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の工場建設が続く熊本県では、半導体人材として女性の活躍が期待されています。熊本大学は半導体産業の集積を「100年に一度の好機」(小川久雄学長)とみて、学部相当の「情報融合学監」を2024年春に創設しました。学校推薦型選抜15人のうち8人を「女子枠」として多様な学生を集めています。
工学部入試での女子枠は、2023年度設けた名古屋大学など導入が相次いでいます。ベネッセ教育総合研究所の木村治生主席研究員は「工学は生活に密着しており女性の視点は不可欠。工学系女性が社会で活躍していくサイクルを作る一つのきっかけとして女子枠は有効だろう」と指摘しています。
2023年6月24日の日本経済新聞の2面(有年由貴子、竹内雅人、近藤康介)を参照引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年6月24日の日本経済新聞2面の記事には、三つの図表が記載されていました。「①大学の工学系の学部に進む女性の割合は山形や東京で高い(出身高校の所在地別、2021年度)」図表1、注7。「②都道府県別の工学系学部への進学者に占める女性比率」図表2,注8。「➂理系各学部の進学者のうち女性の割合」図表3、注9。
[図表1]
図表1(注7)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、2021年度における「理系各学部の進学者のうち女性の割合」を緑色の濃淡で塗り分けて示してありました。工学系学部に進む人の中で女性の割合が最も多かった地域は、その割合が18%以上だった地域で、それは山形県と東京都の2都県だけでした。次に、その割合が多かった地域は、その割合が16%以上18%未満の地域で、これは岩手県、熊本県、香川県、兵庫県、高知県、福岡県、沖縄県、秋田県、山口県、佐賀県、大分県の11県でした。結局、女性の割合が多かった地域は1都12県でした。
この図を一見してみますと、東京都を唯一の例外として本州の中核部に、「女性の割合が多い地域」は、全くないのです。これには私は驚きました。
2023年6月24日の日本経済新聞の2面(有年由貴子、竹内雅人、近藤康介)を参照引用して記述。
[図表2]
図表2(注8)は、「都道府県別の工学系学部への進学者に占める女性比率」と題した表でした。ここでは「女性比率の多い順に、都道府県が示してありました。これを以下に記します。
図表2 都道府県別の工学系学部への進学者に占める女性比率
順位 都道府県 女性比率
1 山形県 20.2%
2 東京都 19.3
3 岩手県 17.9
4 熊本県 17.6
5 香川県 17.4
6 兵庫県 17.3
7 高知県 17.1
8 福岡県 17.0
9 沖縄県 16.9
10 秋田県 16.3
なお、この表を見通してみて感じたのは、これまでの様々な改革で、上位にきたことがない秋田県が、初めて上位に入ったことでした。
[図表3]
図表3(注9)は「理系各学部の進学者のうち女性の割合」と題した表でした。
この表の下欄には、2007年度から2022年度までの年度が記してありました。また
この表の左側縦欄には、10~70%の目盛が記してあり、この縦横の交点に、理系の4部門、保健(医歯薬)・農学・理学・工学4分野の「女性の割合」をプロットして、これを結ぶ折れ線グラフ記していました。
この図表は、4段階に分かれて、緩い上り坂の折れ線グラフをなしていました。この4分野それぞれで、独自の領域を持っていて、その領域の中を緩い右肩上がりに女性比率を拡大しながら2007年度から2022年度へと進んでいます。
4分野で女性の比率が一番多いのは「保健」分野で、2007年度の60%から2022年度の70%へむけて進んでいました。次ぎ女性の比率が多いのは「農学」で40%から50%へと進んでいました。続くのは「理学」で30%弱から30%へと進んでいます。最も女性比率が小さいのは「工学」で10%から20%弱の段階を進んでいました。
この4分野の4本の折れ線グラフは、決して交差するとはなく、独自の領域を右肩上がりで女性比率を一貫して増加させ進化させていました。この一連の図表は、これを明瞭に示しています。
2023年6月24日の日本経済新聞の2面(有年由貴子、竹内雅人、近藤康介)を参照引用して記述。
(注1)イノベーション(innovation)とは、物事の「新機軸」「新結合」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」を創造する行為のこと。一般には新しい技術の発明を指すという意味に誤認されることが多いが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自律的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。つまり、それまでのモノ・仕組みなどに対して全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出して社会的に大きな変化を起こすことを指す。また、イノベーションは国の経済成長にも極めて重要な役割を果たす。
(注2)STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathmatics(数学)のそれぞれの頭文字を取ったものである。これらの分野の教育に重点をおいて科学技術に精通する人材の育成を目的に、高等教育を実施しようとしている。AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている。そこで文系・理系といった枠にとらわれず、各教科の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題発見や社会的な価値の創造に結び付けていく能力の育成が、求められている。文部科学省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でこれを認識し、各分野での学習を、実社会での問題発見・解決に生かしていくため、横断的な教育を推進している。
(注3)ロールモデルとは、考え方や行動の模倣の対象となる人物のことである。ロールには「役割・役目」、モデルには「見本」という意味がある。1640年代にアメリカの社会学者のロバート・K・マートン氏によって定義された。
(注4)オープンキンパスとは、学校法人がその学校へ入学を希望している者に対して、施設内を公開し、学校への関心を深めて貰おうとする、入学促進イベントの一種である。
(注5)有機EL(Electro Luminescence)とは、電圧をかけると有機物が発光する現象を指す。この現象を利用した有機発光ダイオード(Organic light emitting diode:OLED)と呼ばれるデバイス全般も有機ELと言われる。
(注6)仮想空間 メタバースとは、オンライン上に3DCG(3次元コンピュータ グラフィックス)で構築された空間で、自分の分身のキャラクターとして動き回り、他のユーザーとコミュニケーションを取れるサービスのことである。メタバースには、ゲームやビジネスなど、現実社会とリンクして様々な活動が可能なものがある。
(注7)日本経済新聞2023年6月24日2面に掲載された図表1「大学の工学系の学部に進む女性の割合は山形や東京で高い(出身高校の所在地別、2021年度)」。(出所)内閣府の委託により三菱UFGリサーチ&コンサルタントが調査。
(注8)日本経済新聞2023年6月24日2面に掲載された図表2「都道府県別の工学系学部への進学者に占める女性比率」。
(注9)日本経済新聞2023年6月24日2面に掲載された図表3「理系各学部の進学者のうち女性の割合」。(出所)文部科学省「学校基本調査」から作成。
[参考資料]
(1)日本経済新聞、2023年6月24日(2面)。
[付記]2023年7月10日:


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