「日本再生]「地域創生」 働く高齢者 沖縄・九州急伸 2023年8月14日 全国で25%、10年で4ポイント増 人手不足深刻 官民後押し
- honchikojisitenji
- 2023年8月20日
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続木 碧(つづき あお) 2023年8月(研究報告№077)
「巻頭の一言」
高齢化が進むなか、「生涯現役」に向けて働くシニア世代が増えています。65歳以上で仕事をしている人の割合は増加傾向が続いており、なかでも九州・沖縄地域の伸びが目立ちます。高齢化や人手不足が深刻な地域で、自治体や企業も高齢者が働きやすい環境を整えようと懸命です。
「地域創生」働く高齢者 沖縄・九州急伸 全国で25%、10年で4ポイント増 人手不足深刻 官民後押し
[調査研究報告本文(新聞記事紹介文)]
「地域創生」働く高齢者 沖縄・九州急伸 全国で25%、10年で4ポイント増 人手不足深刻 官民後押し
ここでは日本経済新聞の2023年7月29日2面の記事を紹介します。
[はじめに]
日本経済新聞は、総務省が5年に一度実施する「就業構造基本調査」から、働いている65歳以上の人の割合を算出しました。65歳以上の就労者は、高齢者の増加や農業従事者の減少もあって、1968年の33.6%をピークに低下が続いていましたが、2012年に反転しました。2023年7月発表の2022年調査では、全国平均が25.3%と前回の2017年より0.9ポイント上がり、2012年比では4.9ポイントの上昇となりました。
2012年と比べた2022年の伸びを都道府県別にみると、沖縄県がトップで、鹿児島県が2位でした。5位に福岡県、7~9位に宮崎、長崎、熊本の3県が続き、トッブ10の半数超を九州・沖縄が占めました。これは人手不足が深刻な地域とほぼ重なります。
九州・沖縄の8県と山口県は2015年、経済界などとともに「九州・山口生涯現役社会推進協議会」を立ち上げました。高齢者の就業に積極的な企業の事例集作成や表彰制度などを通じて、シニアの活躍を後押ししています。鹿児島県の働く高齢者の割合は、2012年の全国37位から5位に浮上しました。沖縄県も最下位を脱却しました。日本経済新聞、2023年7月29日の2面(桜井佑介、奈良部光則、笠原昌人)を参照引用して記述。
[沖縄県]
表彰を受けた建設会社の仲本工業(沖縄県沖縄市)は、2019年、定年後に継続雇用する上限を65歳から70歳に引き上げました。その上で70歳以降も一定の条件のもとで働き続けられるようにしました。70歳の大城盛一さんは50年前に入社し、工事現場を含めて、幅広い業務を経験してきました。現在は工事費の見積などを担当しています。「橋や建物を造る仕事が好きだし、誇りを持っています。健康である限り仕事を続けたいです」と笑顔で話していました。後輩と接するなかで「若手の斬新な発想に学ぶ点も少なくないのです。働き続けることで自身の成長を感じられることが生きがいにもなるのです」と言っています。仲本豊社長は「少子高齢化が加速するなか、社員が身につけた技術を長く発揮できる環境を整えないと、企業は生き残れない」と強調しています。
[鹿児島県]
鹿児島銀行も2018年から、継続雇用の上限年齢を65歳から70歳に引き上げました。基本的には、定年前と同じ内容の仕事をしながら、中堅クラスの行員へのアドバイス役にもなるのです。人事担当者は「働き続けたいという意欲のある人が多く、60歳で辞める人は、ほとんどいないのです。人手不足対策というよりも、頼れる戦力になっているのです」と説明しています。
[この項の終りに]
全国で拡がるシニア就業ですが、短時間のパート・アルバイトという人も少なくないのです。高齢者に仕事を提供するシルバー人材センターなどに登録する人も多いのですが、清掃や草刈りなど短期の軽作業が中心で、収入は決して多くはありません。
政令指定都市で最も高齢化が進んでいる北九州市で、介護事業を手掛ける北九州福祉サービスは、ホームヘルパー業務(注1)に従事する社員の定年制を廃止しました。月の勤務時間を柔軟にすることなどにより、高齢者にとっても、体調などに合わせて働きやすくなります。ホームヘルパー社員の賃金は、年齢に関係なく、保有する資格と勤続年数で決めるのです。現在、介護関連の人材不足などもあって、650人の従業員の2割超を70歳以上が占めています。
高齢者社会に関して研究するニッセイ基礎研究所の前田展弘上席研究員は「『年を取っているから』といった偏見から人材を生かしきれていない面もある」と話しています。そのうえで、「年齢ではなく能力に応じて仕事や収入が得られる仕組みが、極めて重要になる」と、厳しく指摘していました。
日本経済新聞、2023年7月29日の2面(桜井佑介、奈良部光則、笠原昌人)を参照引用して記述。
[まとめ]
この研究報告の執筆で参照引用した2023年7月22日の日本経済新聞2面の記事には、三つの図表が記載されていました。「①働く高齢者の割合は全都道府県で増加。(注)2022年の働く高齢者の割合を2012年と比較。」出所は総務省「就業構造基本調査」。「②2022年の働く高齢者の割合は福井県がトップ。」「➂働く高齢者の割合は上昇に転じている。」
[図表1]
図表1(注2)では、新聞紙上に日本列島の地図が示されており、「働く高齢者の割合の都道府県別の増加の状況」を、茶色の濃淡で塗り分けて示してありました。この結果、「働く高齢者の割合を2012年と比較し、その増加が最も大きかった地域は「8ポイント以上の地域」で、これを色が黒に近い最も濃い茶色に色付けされていました。これが実現できていたのは、1位沖縄県、2位鹿児島県の2県のみでした。次に増加が進んでいた地域は、「6~8ポイント」の地域で、これは黒に近い濃い茶色に斜線を入れて記してありました。これは福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、福井県、岩手県,秋田県、山形県、福島県でした。
この図を一見してみますと、沖縄・九州が圧倒的に進んでいます。また、東北地方の岩手、秋田、山形、福島の4県が進んでいます。すなわち、進んでいるところが、一定の地域に集中しているのです。本州では、福井県が、ただ一県、頑張っているの輝いて見えました。日本経済新聞、2023年7月29日の2面(桜井佑介、奈良部光則、笠原昌人)を参照引用して記述。
[図表2]
図表2(注3)は、「2022年の働く高齢者の割合は福井県がトップ。」と題した図表でした。これを以下に記します。
図表2 2022年の働く高齢者の割合は福井県がトップ
働く高齢者の割合 2012年比の増加幅
1 福井県 30.9% 6.9ポイント
2 山梨県 30.6 4.2
3 長野県 30.1 2.4
4 佐賀県 28.5 6.1
5 鹿児島県 29.3 8.4
全国平均 25.3 4.0
福井県を、私は、本州の中でただ一つ、燦然と輝く星だと書きました。ところが、2022年の単年での実績では、トップだったのです。また、山梨県も、長野県も、突然、トップグループに踊り出たのです。図表1の分析で、高齢者社会の到来を牽引する10社をあげましたが、これらの各社は、皆、トップに躍り出る潜在力があるのです。
[図表3]
図表3(注4)は、「働く高齢者の割合は上昇に転じている」と題した図表でした。
この図表の左側縦欄には、働く高齢者の割合が20~35%の範囲で記してあり、下欄には、1956年から2023年までの「年」が記してありました。この縦横の交点に、各年の働く高齢者の割合の推移を折れ線グラフで表記していました。
この折れ線グラフは、一見して左肩下がりの「下り坂」の姿でした。1956年の「働く高齢者の割合」30%からスタートし、1968年の35%のピークにまで上り詰め、ここから2020年の20%へと長い下り坂を転落していました。そして、2020年から2022年にかけて反転上昇したのです。これから先も、上昇が続くと思わせるグラフです。
[茶色に染まった日本地図]
図表1の日本地図は、茶色一色に染まっていました。この地図の「増加量の最少ランク」は「2ポイント未満の増加」ですが、これに該当する地域は千葉県1県だけなのです。すなわち、日本はこの改革に関しては、(都道府県・地区町村)全員が参加しており、全員増加しているのです。
この研究報告では、国の動きについては触れませんでしたが、政府は、この「高齢者の働く国づくり」に大きな力を入れていると思います。これまで歯止めが掛からなかった「人口減少に伴う地域衰退」を防ぐ最大の対策として考えているはずだからです。このことは、各地の自治体(都道府県、市区町村)も地域の企業も、同じことを考えているでしょう。ですから、これに呼応して、みんなが必死の努力を注入しているはずなのです。国民の皆さん、今、総力を上げて、この改革の実現にむけて頑張りましょう。
私は、ここでも日本は、世界各国の進化の加速に、さらに差を開かれていると痛感しています。皆さん、世界の進化の速度に、厳しい眼を向けてください。世界をくまなく歩いて、加速する世界の進化の動きを、身をもって体感してください。ここでは、国民のこれを痛感する心が、なんとしても必要なのです。
(注1) ホームヘルパーの業務:介護を必要とする人の自宅を訪問し、生活上のサポートや精神面でのサポートを行う。 主な仕事内容としては、食事やトイレを援助する身体介護、食事の準備や掃除などの生活援助、受診に付き添う通院援助などがある。
(注2) 日本経済新聞2023年7月29日2面に掲載された図表1「働く高齢者の割合は全都道府県で増加。(注)2022年の働く高齢者の割合を2012年と比較。」出所は総務省「就業構造基本調査」。
(注3) 日本経済新聞2023年7月29日2面に掲載された図表2「②2022年の働く高齢者の割合は福井県がトップ。」
(注4) 日本経済新聞2023年7月29日2面に掲載された図表3「働く高齢者の割合は上昇に転じている。」
[参考資料]
(1)日本経済新聞、2023年7月29日(2面)。
[付記]2023年8月14日:


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